傷つきし剣士と、癒やしの手~カザキ再起の誓い~
「うぉーーーー!」
ベッドの上で眠っていたはずのカザキが、突如として雄叫びをあげ、勢いよく飛び起きた。その目に宿るのは、混乱と、そして信じられないものを見たかのような驚きだ。
「オレの左腕がーー!ある…………!?」
カザキは夢でも見ていたかのように、自分の左腕を何度も擦り、掌でその感触を確かめた。まるで、それが現実であるかどうかを確かめるように、何度も、何度も。
その時、部屋のドアがゆっくりと開き、腕まくりをしたハーベルが、安心したような表情で近づいてきた。
「カザキさん、気が付きましたか!」
彼の声は穏やかで、カザキの心に安堵をもたらす。カザキはハーベルを見つめ、その目に涙が滲むのを感じた。
「ハーベル、おまえが…!?」
込み上げる感情を抑えきれず、カザキは声を震わせる。
「カザキさん、もう、大丈夫ですよ!傷は完全に回復しましたから、剣も振れますよ!」
ハーベルが優しくカザキの左腕に触れると、その言葉が彼の心を深く温めた。
「ありがとう…。ありがとう…。」
カザキは、子供のように泣きながらハーベルにしがみついた。その感謝の念は、言葉だけでは表現しきれないほど深く、彼にとってハーベルは命の恩人だった。
その時、ドアの外で様子を伺っていた仲間たちが、一斉に部屋に駆け込んできた。彼らの顔には、心配と安堵が入り混じった複雑な表情が浮かんでいる。
カザキは素早く涙を拭うと、仲間たちに向き直り、少し照れたように言った。
「みんな、心配かけてすまない…。」
「カザキさんが、無事でよかった…。」
「本当に…。」
フランとネルが、心底安心したように呟く。
「あまり無茶するなよ!」
フレアが、心配と安堵からくる軽い叱咤の言葉とともに、カザキの額に優しくデコピンをした。
「ああ、すまん!」
カザキはそう言ってベッドから立ち上がると、まるでその腕の健全さを確かめるかのように、両腕を大きく振り回した。
「ああ、完璧だ!かえって前より体が軽い気がする!」
カザキはそう言いながら、剣を振る仕草を見せた。その動きは滑らかで、彼が完全に回復したことを示していた。
みんながカザキの驚異的な回復を目の当たりにし、それぞれの言葉で祝福の声を上げた。その場は、温かい喜びの空気に包まれた。
「ハーベル、いったい何をしたんだ?」
カザキが、その再生の秘術についてハーベルに尋ねた。
「まあ、知らない方がいいこともあります…。」
ハーベルは、にこやかに、しかしどこか含みのある笑みを浮かべて答える。その言葉の裏には、彼自身の持つ異質な力が隠されていることを示唆していた。
「ああ、そう言うことにしておくよ…。」
カザキも深くは詮索せず、ハーベルの答えを受け入れた。二人は、固い信頼と絆を示すかのように、強く腕を握りあった。言葉を超えた理解が、二人の間に流れる。
「これから、どうしましょうか?」
アクシアが、今後の行動について不安げにハーベルに尋ねる。
「オレは、もう大丈夫だから、このまま闇の階段の攻略を進めよう!」
カザキは、腕を回しながら力強く提案した。彼の声には、完全なる回復と、再び戦場へと赴く覚悟が満ち溢れている。
「大丈夫ですか?」
ハーベルが念のために確認するように言った。彼の表情には、仲間を気遣う優しさが滲んでいる。
「ああ、問題ない!それより、サソリは死んだのか?」
カザキは、まるで何事もなかったかのように話題を変えた。彼の意識は、すでに次の戦いへと向いている。
「ええ、サソリは倒しました…。」
クラリッサが静かに答える。
「なら、このまま進めそうだな!」
カザキはやる気満々のようだった。彼の瞳には、再び冒険への意欲が燃え上がっている。
「カザキさんもこう言ってることだし、全員で闇の階段の60階層を目指しますか!」
ハーベルがみんなに提案した。彼の言葉には、チームとしての団結と、目標達成への決意が込められている。
「分かったわ!」
「よし!」
ネルとクラリッサが力強く応える。
「カザキさんの、敵討ちですわね!」
アクシアが、少しおどけたようにそう言った。
「いや、オレ死んでないけど…。」
カザキが思わず突っ込むと、アクシアは茶目っ気たっぷりに言葉を返す。
「いや…。言葉の綾ですわ…。」
そのやり取りに、
ハーベルが「ハハハ…」
フレアが「フフフ…」
と笑い声を漏らした。
アクシアの機転のおかげで、みんなの気分も何か吹っ切れたように明るくなっているように見えた。重苦しかった空気は完全に払拭され、彼らの間に再び活気が戻ってきた。
次回 「解放の書」とゾンビの群れ~ハーベルの新戦術~
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頑張って続きを書いちゃいます!




