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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン6 【六大精霊塔編】(エレメンタルスパイア)

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獄毒の一撃~医術の光、再び闇を照らす~

「ああ…。カザキさん、危なーーい!」

ネルがいち早く危険を察知し、張り裂けんばかりの大声で叫んだ。


カザキは、後ろ向きでフィニッシュを決めていたため、シャドウフレイム・スコーピオンの接近を完全に死角から受けていた。


その瞬間、シャドウフレイム・スコーピオンが最後の力を振り絞り、カザキの脳天めがけて真上から猛毒の尻尾を振り下ろしたのだ。


ドス……。


乾いた音が響き、サソリの緑色の人魂が不気味に灯った尻尾の先が、地面に深く突き刺さる。そして、その巨大な魔物は、そのまま力なく崩れ落ちた。


カザキは間一髪で避けきったかに見えた。


「ふー。危なかった…。」

クラリッサが安堵の息をついた、その刹那―


「うぉーーーー!」

カザキが突如、左腕を抑えておぞましい雄叫びをあげた。


「何!?」

ただならぬ事態に、ネルがすぐさま駆け寄る。


そこには、カザキの左腕に微かにかすったシャドウフレイム・スコーピオンの尻尾の先から、おぞましい毒が注入されていく様子がはっきりと見て取れた。


「うぉーーーー、クソ!」

カザキは激痛に顔を歪め、苦悶の声を上げる。彼の左腕は、見る見るうちに毒に侵され、ヘドロのように醜く爛れ始め、悍ましいことに骨まで露わになっていた。


「早く、家に戻ってハーベルに見せて!」

フランが今までに聞いたことのないような、切羽詰まった大きな声で指示した。その声には、彼女の焦りと危機感がにじみ出ていた。


「は…はい…!」

ネルはカザキを抱え、迷わずテルミットで即座に転移した。目的地は、治療の知識を持つハーベルの元だ。


「ハーベル!大変なの!」

ネルが死に物狂いの声で叫び続ける。その声に気づいたハーベルは、寝室から飛び起きてきた。


「どうしたんだ!ネル!」

ハーベルはカザキとネルを見て、その惨状に愕然とした。


カザキの左腕は、もはや腕と呼ぶにはあまりにも異形だった。毒に侵されてヘドロのように醜く爛れ、皮膚は溶け、白い骨が痛々しく露出していた。


「うぉーーーー、うぉーーーー!」

カザキは、あまりの激痛にただ叫び続けるしかなかった。その声は、聞いている者の心をえぐるようだった。


「とりあえず、カザキさんをベッドへ寝かせて!」

ハーベルは冷静さを保ち、テキパキと指示を出す。


「ネルは、消毒用のアルコールときれいな布を大量に用意してくれ!」

「はい!」

ネルは返事もそこそこに、ハーベルの指示に従うべく走り出した。


そこへ、クラリッサたちも戻ってきた。彼らの顔にも、不安と心配の色が濃く浮かんでいる。


「カザキさんは!?」

アクシアが心配そうに問いかける。


「今は、見ない方がいい!」

ハーベルは、ネルとクラリッサ以外を全員、部屋から出した。


この治療は、他の者の目にはあまりにも刺激的すぎると判断したのだ。


「クラリッサ、麻酔薬を作ってくれ!」

「分かったわ!」

クラリッサが麻酔薬を用意している間に、ハーベルは手際よく治療に必要な薬を準備していった。


「ハーベル、アルコールと布をここへ置いておくね!」

ネルが急いで準備を終え、ハーベルの手元にアルコールと布を置いた。


「麻酔薬を!」

「ハーベル、用意できたわ!」

クラリッサが素早くハーベルに麻酔薬を手渡してくれた。


「あとは、俺に任せて二人も外に出てもらえるかな?」

ハーベルは真剣な顔つきで、二人に部屋から出るようお願いした。彼の瞳には、かつて医者であった頃の鋭い光が宿っていた。


「うん…。」

「分かったわ…。」

ネルとクラリッサも、ハーベルの真剣な顔つきに押され、黙って部屋を出ていった。


「カザキさん、俺が必ず助けますから!」

ハーベルは、麻酔薬を布に染み込ませると、カザキの口を覆った。


「さあ、ここからは真剣勝負だ!」

ハーベルの顔は完全に昔の医者だった頃の、研ぎ澄まされた表情に戻っていた。彼の手に、カザキの命運が託されたのだ。


次回 医術師、ハーベル~再生の神業~

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