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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン6 【六大精霊塔編】(エレメンタルスパイア)

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50階層の異変~獄毒サソリとの死闘~

空は鉛色に薄暗く、今にも大粒の雨が降り出しそうな分厚い暗雲が立ち込めていた。その陰鬱な天気は、まるでこれから起こる不吉な出来事を暗示しているかのようだった。


カザキたちは、足早に「闇の階段」41階層の攻略に取りかかった。この階層から50階層までは、一気に駆け抜ける計画だ。


「ハーベルが休めるように、50階層までは一気に攻略するぞ!」

カザキは、パーティー全体に力強く檄を飛ばした。

その声には、仲間への気遣いと、揺るぎない決意が込められている。


「分かりました」

クラリッサは、手に持つ【邪神の杖】の石突を床にトンと軽く打ち鳴らし、静かに応じた。その表情には、ネクロマンサーとしての冷徹な決意と、底知れない魔力が宿っていた。


「お任せください!」

アクシアもまた、愛用の弓【神器:ディープブルー】を構え、闘志をみなぎらせる。彼女の瞳は獲物を射抜くかのように鋭く、神経を研ぎ澄ましていた。


「カザキさん、防御は任せてね!」

ネルは、フランをしっかりと抱きしめながら、にこやかに言った。彼女の守護魔法は、パーティーの命綱であり、その笑顔の裏には盤石な防御への自信が伺える。


「回復はフラン頼みだから、よろしく!」

カザキは、フランの頭を優しく撫で、その小さな体に期待を込めた。フランの癒しの力は、過酷な戦いにおいて不可欠な存在であり、その頼もしさはパーティーの安心材料となっていた。


基本戦術は、いつもの通りクラリッサのネクロマンシーによって大量のアンデッドを召喚し、前線を押し上げていくことだった。


亡者の群れが壁となり、敵の攻撃を吸収する。同時に、カザキは【神器:疾風剣】を振るい、特に危険な大物を迅速に殲滅する役割を担った。


彼の剣は、常にパーティーの脅威となりうる存在を正確に捉え、瞬時に無力化する。クラリッサとカザキの連携が、敵を効率的に排除していく。


クラリッサとカザキが対処しきれなかった残党は、すべてアクシアが弓の精確な攻撃で確実に撃破していった。彼女の放つ矢は、どんな小さな脅威も見逃さず、確実に標的を貫く。


ネルは、全体の戦略立案と強力な防御魔法の展開を担当し、パーティーメンバーを安全に保つことに尽力した。彼女の魔法は、まるで鋼鉄の城壁のように堅固で、仲間たちをあらゆる攻撃から守り抜く。


そして、フランはパーティー全体の魔力量を細やかにコントロールし、傷ついた仲間を即座に回復させるという、重要な役割を任されていた。彼女の癒しの光は、戦いの中で仲間たちの命を繋ぎとめる希望の光だった。


順調に進み、ついに50階層へと到達した。途端、これまでとは異なる、どこか不吉で重苦しい気配がパーティー全体を包み込んだ。空気を震わせるような、形容しがたい圧迫感が彼らを襲う。


「あれは、サソリ?」

クラリッサが前方を指さし、静かに呟いた。その声には、わずかながら警戒の色が滲んでいた。


視線の先には、闇に溶け込むかのような巨大な影が蠢いていた。


クラリッサが使役していたアビサルベアが、口からよだれを撒き散らしながら


ブォーーー!


と咆哮を上げた。その獰猛な姿は、未知の敵に対する本能的な敵意を示している。


「シャドウフレイム・スコーピオンを蹂躙しなさい!」

クラリッサは【邪神の杖】を構え、その先端で巨大なサソリを指し示した。


彼女の号令とともに、5体のアビサルベアが、一丸となってシャドウフレイム・スコーピオン目掛けて猛然と走り出した。


巨大な漆黒のサソリは、その威圧的なハサミをギロチンさながらに研ぎながら、アビサルベアたちを待ち構えていた。尻尾の先端には、不気味に緑色に怪しく光る人魂のような炎が揺らめいている。その異様な輝きは、ただならぬ危険を予感させた。


2体のアビサルベアが立ち上がり、暗黒の爪でシャドウフレイム・スコーピオンに襲いかかろうとした、まさにその時。


スコーピオンの巨大なハサミが左右の死角から電光石火の速さで振り下ろされた。一瞬の出来事だった。ベアの首は、まるで紙のように一瞬で狩り取られ、血飛沫を上げることなく地面に転がった。


そのあまりの瞬速に、カザキたちは言葉を失う。


残りの3体のアビサルベアも、仲間が倒されたにもかかわらず臆することなく、巨大なサソリの体に飛びかかり、果敢に奮闘する。


彼らの猛攻は、サソリの漆黒の甲殻に微かな傷をつけるに留まったが、その闘志は確かに輝いていた。


正面にいた1体のアビサルベアが、力強く咆哮を上げた。

その目の前には、紫色の禍々しい魔方陣が瞬時に現れ、そこからどす黒い炎が噴出し、サソリの顔面目掛けて勢いよく吹き付けられた。その炎は、闇を焼き尽くすかのような勢いでサソリの顔を包み込む。


一瞬、サソリは怯んだかのように見えたが、その隙を逃さなかった。アビサルベアの脳天目掛けて、真上からサソリの尻尾が容赦なく突き刺さる。


ドス…!

アビサルベアは、まるでどぶのヘドロのように不気味な緑色に変色し、見る見るうちにドロドロに溶けてしまった。その悍ましい光景は、カザキたちの脳裏に焼き付いた。


シャドウフレイム・スコーピオンは「タタタタ……」と素早い足音を立てながら方向転換し、残りのアビサルベアを振り落とした。


次の瞬間、その2体も先ほどのアビサルベアと同じようにヘドロと化し、地面に広がっていった。クラリッサの使役するアビサルベアは、瞬く間に全滅してしまったのだ。


「アイツ、ヤバイな…!」

カザキはゴクリと息を飲み、その脅威を肌で感じた。


アビサルベアを一瞬で溶かすその能力は、想像以上に危険であり、正面からの突破は困難だと直感した。


「土:第8上級魔法!ヴォルダー・シールド!」

ネルがすかさず行動し、パーティー全員に頑強な防御魔法のシールドを展開した。巨大な岩壁のような障壁が、メンバーを覆い守る。その堅牢さは、シャドウフレイム・スコーピオンの攻撃を一時的にでも防ぎきるだろう。


「ハイライフ!リフレッシュ!」

フランも即座に、パーティー全員の魔力を回復させた。

これにより、ネルの魔法によって消費された魔力も補充され、メンバーは再び全力で戦える状態になった。フランの癒しの光は、パーティーの窮地を救う一筋の希望となった。


「ネル、ありがとう!」

カザキは礼を言いながら、自身の【神器:疾風剣】を構え、シャドウフレイム・スコーピオンを鋭い眼光で睨み付けた。その視線には、明確な敵意と勝利への執念が宿っていた。彼は、この強敵を確実に仕留める覚悟を決めた。


「神風!」

カザキがスキルを発動させると、彼の周囲に強烈な竜巻が巻き起こった。その莫大な風のエネルギーは、瞬く間に剣の切っ先へと凝集されていく。剣の刃が、風の力で目に見えないほど鋭利に研ぎ澄まされていくのがわかる。


シャドウフレイム・スコーピオンは、巨大なハサミを「チョキチョキ」と音を立てながら振り回し、カザキを切り刻もうと襲いかかってきた。その動きは俊敏で、獲物を確実に捉えようとする殺意に満ちている。


しかし、カザキは自身の【瞬脚】スキルを使い、目にも留まらぬスピードでその全ての攻撃を回避していく。まるで風のように舞い、サソリの攻撃は一切当たらなかった。彼の動きは、最早人間の域を超越している。


「カザキさん、すごいですわね!」

アクシアは、カザキの動きに感嘆の声を漏らしつつ、同時にサソリの僅かな隙を伺い、次の攻撃に備える。彼女もまた、この戦局を打開するための次の一手を模索していた。


シュン…シュンシュンシュン……!


カザキの【神器:疾風剣】が唸りを上げ、シャドウフレイム・スコーピオンの全ての足を切り刻んでしまった。彼の剣技は、目にも止まらぬ速さで、サソリの急所を的確に捉えた。


まるで糸が切れたかのように、サソリの巨大な体は支えを失い、「ドスーーーン……」という凄まじい地響きを立てて地面に叩きつけられた。


カザキは、剣を「シャキーーン!」と音を立てて鞘に納めた。


その姿は、まさに強敵を打ち倒した英雄そのものだった。しかし、その瞬間。


「ああ…。カザキさん、あぶなーーい!」

ネルがいち早く危険を察知し、悲鳴のような大声で叫んだ。

次回 獄毒の一撃~医術の光、再び闇を照らす~

続きの気になった方は、

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リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。

頑張って続きを書いちゃいます!

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