再会、そして新たな絆~ウルンとカミナの物語~
魔法陣を展開しようとするムーンウルフに対し、ハーベルの力強い声が響き渡る。
「そうはさせない!」
ハーベルはムーンウルフへ急速に接近し、詠唱を開始する。
「光:第5応用魔法!ルミナス・ヴェール!」
ハーベルの言葉と共に、優しい光がムーンウルフをそよ風に吹かれるカーテンのように包み込んだ。
その光は、まるで魂を浄化するかのように、ムーンウルフを覆っていたどす黒いオーラを洗い流していく。光に包まれたムーンウルフの表情は、次第に安らぎを取り戻し、その身に宿る闇の力も弱体化していった。
意識が朦朧とするムーンウルフに、ウルンは必死に呼びかける。
「お前…。我だ!しっかりしろ!」
しかし、ムーンウルフの口からはうめき声しか漏れない。
ウルンは言葉を続ける。
「主と一緒に助けに来た!」
その声に反応したのか、ムーンウルフは苦痛に満ちた叫びを上げた。
「うぉ…うわーー!」
ハーベルは問いかけた。
「どうだ?ウルン…。」
ウルンは力なく首を振る。
「我でも難しいようです…。」
最後の望みとしてウルンに説得を試みてもらったが、それでもムーンウルフは闇の支配から完全に解放されないようだった。
その時、ハーベルが何か閃いたように、ウルンの首元を指差して尋ねた。
「ウルン、その魔昌石は?」
ウルンは自分の首飾りの魔昌石に触れながら答える。
「これは、我らが捕まる直前に拾ったもの!」
ハーベルは確信に満ちた表情で叫んだ。
「それだ!それを目の前に!」
ウルンは迷わず首から魔昌石を外し、ムーンウルフの目の前に放り投げた。すると、ムーンウルフは突如として激しい苦痛にもがき始めた。
「許せ!神聖:第7上級魔法!ラディアント・エクソシズム!」
ハーベルの詠唱と共に、もがき苦しむムーンウルフの上に、全てを浄化する聖なる雨が降り注いだ。
その雨は、ムーンウルフの内に深く根付いていた哀愁と憎悪の念を、一つ残らず洗い流していく。浄化の雨を受け、ムーンウルフはぐったりと気絶した。
ハーベルは間髪入れずにムーンウルフに手をかざし、最後の魔法を放つ。
「光:第10究極魔法!フェニックス・レストレーション!」
慈愛に満ちた光がムーンウルフを包み込み、その肉体を癒していく。
ムーンウルフがゆっくりと目を開けると、ハーベルは優しく語りかけた。
「手荒なことをしてすまない…。お前の旦那もいるぞ!」
ウルンは目に涙を浮かべながら、目覚めたムーンウルフに駆け寄る。
「お前…。目が覚めたか…。」
ムーンウルフはぼんやりとした様子で呟いた。
「ああ……。私は何を…?」
ウルンは喜びを噛み締めながら説明する。
「お前は、あの悪魔に操られていたんだ。だが、主に助けていただいたのだ!」
ムーンウルフは自分の置かれた状況を理解し、深々と頭を下げた。
「そうでしたか…。失礼しました…。」
ハーベルはにこやかに答える。
「いいや、大丈夫だよ!」
ムーンウルフは今後のことを尋ねた。
「私はどうすればいいのですか?」
ウルンは力強く言った。
「主の言うことをよく聞くんだ!」
ムーンウルフは素直に答えた。
「分かりました…。」
ハーベルはムーンウルフに、新たな提案を持ちかけた。
「俺と契約して、召喚獣になって欲しい。そうすれば、お前をここから解放してやれる!」
ムーンウルフは躊躇なく答えた。
「主様、よろしくお願いいたします。」
ハーベルの「よし、契約成立だ!」という叫び声と共に、ムーンウルフの真上には紫に輝く文字の魔法陣が浮かび上がった。
そして、その瞬間、新たな呪文がハーベルの頭に流れ込んできた。
ハーベルは流れるように呪文を詠唱する。
「闇の精霊に感謝します。深淵の影、月光の従者、ムーンウルフよ、この地に降臨せよ!闇召喚:第7上級魔法!ルナティック・ハウル!」
ハーベルはすかさず、現れた魔法陣を医術書に書き写し、同時に呪文も記録していった。
「これで、お互いも話ができるんじゃないか?」
ハーベルがそう問いかけると、ウルンとムーンウルフは涙を流しながら再会を喜び合った。
ウルンは「主よ、感謝します!」と、ムーンウルフは「本当に、ありがとうございます!」と、それぞれ感謝の言葉を述べた。
ハーベルは少し寂しそうな表情で尋ねた。
「ウルン、どうする?このままお前たちを解放して元の山へ返すこともできるが?」
ウルンとムーンウルフは顔を見合わせて話し合った後、ムーンウルフがハーベルに懇願するように言った。
「二人で話し合いましたが、このまま主様の力になりたいと思います!」
ハーベルは確認するように問いかけた。
「本当にいいのか?」
二匹は力強く「はい!」と答え、ウルンは「主よ、よろしくお頼み申す!」と続けた。
心なしか、二匹は微笑んでいるように見えた。
ハーベルは連続詠唱で二匹を呼び出した。
「光の精霊に感謝します。浄化の守護者、ホーリーウルフよ、この地に降臨せよ!光召喚:第7上級魔法!セレスティアル・ハウル!」
「闇の精霊に感謝します。深淵の影、月光の従者、ムーンウルフよ、この地に降臨せよ!闇召喚:第7上級魔法!ルナティック・ハウル!」
二つの、光と闇の魔法陣が同時に展開され、そこからゆっくりと二匹の狼が姿を現した。
突然の二体同時召喚に、フレアが驚いて叫んだ。
「ああ、ビックリした!」
ノアールとクラリッサも口をあんぐり開け、目を丸くして驚愕する。
「ええ、二体同時に?」
「どうなって…いるの?」
アクシアはネルと抱き合いながら、困惑した様子で呟いた。
「うーん…。どうなっているんでしょう?」
そんな中、ネルはハーベルの偉業に感嘆の声を漏らした。
「ハーベル…。凄すぎ!」
ハーベルは、召喚されたウルンとムーンウルフを自分の横に座らせ、その頭を優しく撫でていた。
カザキがみんなに尋ねた。
「奥さんの名前は?」
ネルが提案するように言った。
「うーん…。女の子だからウルルンは?」
しかしフレアは「分かりにくいだろ!」と即座に却下した。
アクシアが新たな名前を提案する。
「じゃあ、カミナなんてどうでしょうか?」
その提案に、ムーンウルフは嬉しそうに言った。
「私は、それが気に入りました!」
ハーベルはウルンとカミナの美しい毛並みを撫で、頬を寄せて優しく語りかけた。
「これからよろしくな!ウルンとカミナ!」
一行は、一度家へ戻り、カミナから詳しい話を聞くことになった。
次回 悪魔サリエルの支配~魂の真実を求めて~
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頑張って続きを書いちゃいます!




