アクシア覚醒!~聖獣王の願いと闇の階段~
家での食卓には、いつものように温かい料理が並び、楽しい団欒の時間が流れていた。
しかし、その賑やかな空気は、突如として訪れた異変によって一変しようとしていた。
「主よ……。ぶしつけではあるのは百も承知だが、お願いしたいことがあります…。」
脳内に直接響く、深く、しかしどこか悲しみを帯びた声に、ハーベルは箸を止めた。
それは、ウルンの声だった。
「おお…。召喚してなくても話せるんだ…。」
ハーベルは少しばかり驚きを隠せない。
「ウルン、どうしたんだ?」
ハーベルが問いかけると、ウルンは重い口を開いた。
「はい…。実は……。」
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ウルンの語る話は、壮絶な過去と切実な願いを含んでいた。
かつて、彼はフィラルティア公国にある霊峰、シルバーハウルで、愛するムーンウルフの妻と穏やかに暮らしていたという。
しかし、ある日、不穏な空気を纏った悪魔が現れ、平和な日々は打ち砕かれた。激しい戦いの末、ウルンは悪魔に敗れ、魂を支配され、この六大精霊塔へと幽閉されてしまったのだ。
この六大精霊塔の頂上には、神によって封じられた六大精霊が宿る精霊石が納められた石碑が存在する。
悪魔は精霊石に直接手を出すことはできないため、人間が精霊石を奪わないよう、彼らが集めた魔物たちに塔を守らせているという。
この石碑が納められた場所こそ、六大精霊聖域と呼ばれているとのことだった。
ウルンの話によれば、魔物の中には確かに人間を好んで襲う残忍な者もいるが、ウルンのように、本来はただ静かに暮らしたいと願う心優しい魔物も少なくないのだという。
彼の切なる願いは、この塔の闇の階段の40階層に囚われている妻、ムーンウルフを救い出してほしいということ。そして、もし可能ならば、心優しい魔物たちを解放してほしいと懇願した。
しかし、ハーベルたち人間には、魔物の善悪を見分ける術がないのが現状だった。
•••••••••
ウルンの願いを聞き、ハーベルは皆に相談を持ちかけた。
「ハーベル、ウルンの奥さんを助け出すのは賛成だが、他の魔物まで逃がすのはオレは反対だ!」
カザキは、魔物に対する警戒心からか、厳しい口調で反論する。
「そうね…。何が正しいのか分からなくなってきたわね…。」
ネルもまた、複雑な表情で考え込んでいる。
「ああ、そうだな…。」
フレアは静かに同意し、ネルの肩に優しく手を置いた。
その場に重い沈黙が広がる。
「でも、俺は助けてやりたい!」
ハーベルの強い決意が、その静寂を破った。
彼の言葉に、一同は再び静まり返る。
その沈黙を切り裂いたのは、クラリッサの冷静な声だった。
「その事は、とりあえず置いておきましょう…。」
アクシアも力強く同意する。
「そうですわね!まずはウルンさんの奥方様を助け出すのが先決ですわ!」
「その通りだな……。」
ハーベルはわずかに迷いを残しながらも、最終的に二人の意見に頷いた。
「じゃあ、闇の階段へ挑戦するよ!」
ハーベルの呼びかけに、仲間たちは力強く応じた。
「了解!」
「分かった!」
「行くわよ!」
「よろしくお願いいたしますわ!」
そして、ネルが今回の作戦とパーティー構成を説明し始める。
•••••••••
ネルの戦略
ネルの立てた作戦は、闇の特性を考慮した理に適ったものだった。
ハーベル:闇の力に強く、ウルンを召喚したまま前衛を進む。
フラン:パーティーの魔力量コントロールと回復を担当し、みんなを支える。
カザキとフレア:前衛の補助としてハーベルを援護する。
クラリッサ:後衛に下がり、アクシアの後衛からの攻撃をサポートする。
アクシア:後衛から強力な攻撃を放つ。
ネル:後衛からの防御魔法を展開し、パーティー全体の指示役を担う。
ノアール:ハーベルに付き添い「契約」の手伝いをすることで、未知の状況に対応する。
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「いつもながら、完璧な編成ですわね!」
アクシアはネルの戦略に感嘆の声を上げる。
「そんな…。」
アクシアに褒められ、頬を赤らめて照れるネルの姿を見て、ハーベルの心は少し平穏を取り戻していた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
闇の階段を進むと、異様な存在がハーベルたちの視界に入ってきた。
「闇のスライムなんているんだな…。」
ハーベルは、その粘質な塊にわずかな嫌悪感を滲ませて呟く。
「ええ、闇のスライムは核の位置が分かりにくいので、まるごと浄化してしまった方が早いです!」
クラリッサが的確な指示を出す。
「なるほど、じゃあ、アクシアにお願いしてみようか!」
ハーベルの提案に、アクシアは可愛らしく小首をかしげた。
「私ですか?」
「ああ、今光属性ランクも応用魔法5まで習得しているんだろ?」
ハーベルが確認すると、アクシアは胸を張って答えた。
「はい、もちろんですわ!」
ハーベルは手振りで説明しながら、ある魔法の組み合わせを提案した。
「それなら、合成魔法の聖水から、神聖魔法の第5応用魔法のセレスティアル・アローズが使えるはずだから、詠唱しながら弓を放ってみなよ!」
「なるほどですわ!」
アクシアは【ディープブルー】を構えると、凛とした声で詠唱を始めた。
「神聖:第5応用魔法!セレスティアル・アローズ!」
詠唱と共に放たれた矢は、虹色に煌めく光の筋となり、無数の矢となってすべての闇のスライムを一掃した。
その光景に、一同は固唾をのんだ。
「うを!」
「す…すごい…。」
アクシア自身も、自分の放った魔法の威力に驚いているようだった。
「私にこんなことが……。」
「しばらくは、このまま上がって行けそうだね!」
ハーベルは、敵をあっさり倒せたことに喜びを感じ、嬉しそうに先を進んでいった。
彼らは、まだ闇の階段を登り始めたばかりだった。
次回 ウルンの遠吠え~絶体絶命のハーベルを救え!~
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頑張って続きを書いちゃいます!




