聖獣王、ホーリーウルフ~光輝なる盟約~
ハーベルが朝早くに目を覚まし、窓を開けて外の新鮮な空気をいっぱいに吸い込んだ。あたりはまだ朝霧に包まれているが、心地よい風が吹き抜け、清々しい朝だった。
「はあ……。いい空気だ!なんか、良いことがありそうな気がする!」
ハーベルは大きく両手を広げながら、満面の笑みで呟いた。彼の心は、この清らかな空気に満たされていくようだった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「次が、40階層のボスだ!」
ハーベルが、皆に声をかけた。彼らの前には、次の試練が待ち構えている。
「ホーリーウルフ…。強敵よ!」
クラリッサが、その名を聞いて警戒するように言った。彼女の表情には、相手の強大さへの警戒と、わずかな緊張が浮かんでいる。
「ハーベル、こいつはどうだ?」
カザキが、ハーベルに意図を確認するように尋ねた。
「はい、お願いします!なるべく、傷つけずに!」
ハーベルは、ホーリーウルフを傷つけたくないという強い願いを込めてお願いした。彼の慈悲深い心が表れている。
彼らの目の前には、黄金に輝く、一頭の非常に美しい毛並みを持つ狼が静かに佇んでいた。その姿は、荘厳で、まるで王者の風格さえ感じさせるほどだった。
ホーリーウルフの周囲には、光の膜のような結界が張られており、近づく者を拒むように輝いている。
「まずは、私が!」
クラリッサが、手にした【邪神の杖】を掲げた。彼女の瞳には、自信が宿っている。
「闇の精霊に感謝します。闇の恐怖、ホーリーウルフに攻撃を!闇:第7上級魔法!シャドウ・ウルフ!」
クラリッサの前方に、影でできた狼たちが5頭現れると、ホーリーウルフに一斉に飛びかかった。
しかし、ホーリーウルフは片手で軽く払うだけで、影の狼たちはまるで存在しなかったかのように、簡単に消滅してしまった。
「瞬殺……。」
カザキが、その圧倒的な力に驚愕し、思わず呟いた。
「次は、私が!」
アクシアは、手にした【神器;ディープブルー】から、無数の水流の矢を放った。その矢は、まるで生きているかのように、ホーリーウルフめがけて飛んでいく。
ワォーーーーーーン!
ホーリーウルフは、遠吠えを上げた。その遠吠えと共に、周囲の結界が虹色に眩く光り出し、アクシアの放った水流の矢をことごとく消し去っていった。何本かはホーリーウルフを直撃したが、その傷は、まるで幻のようにスーッと消えてしまった。
「マジか…。反則だろ!」
カザキが、その尋常ならざる回復力と防御力に驚きの声を上げた。
「あれは、自動回復魔法と魔法防御の結界です!」
クラリッサが、その結界の正体を叫んだ。その情報は、彼らにとって大きなヒントとなる。
「強いな…。でも、結界から出たら効果はないんだろ?」
ハーベルが、その可能性に気づき、尋ねた。
「おそらく…。」
クラリッサが、自信なさげに答えた。確証はないが、それが唯一の攻略法かもしれない。
「いい手があります!」
ネルが、皆に提案した。彼女の顔には、確信的な笑みが浮かんでいる。
「なるほど、その手で行くか!」
カザキとフレアは、ネルの提案を聞くと、素早く左右に分かれ、剣撃だけで結界内に飛び込み、ホーリーウルフに斬りかかった。
ネルの提案とは、魔法を使わない「物理的な攻撃」ならば、結界を貫通するのではないかというものだった。
ホーリーウルフは、物理攻撃に対しては弱かったが、それでも自動回復魔法によって傷はみるみる回復していく。しかし、カザキとフレアは構わず斬りかかり続けた。彼らの猛攻が、ホーリーウルフの回復速度を上回ろうとしていた。
「今だ!」
二人がハーベルに声をかけた。その声は、連携のタイミングを知らせる合図だった。
「虚空:第7上級魔法!ヴォイド・バニッシャー!」
ハーベルの左手に光の塊が、右手に闇の塊が現れると、彼は身体の前方で二つの塊を叩き合わせた。光と闇が混ざり合い、渦のようにどんどんと広がっていく。その渦は、ホーリーウルフの結界を飲み込むように広がり、結界を「無」へと還してしまった。
ゴクリ…。
「すげえ……。」
カザキが、その圧倒的な威力に息を飲んだ。彼の顔には、驚愕と、そしてハーベルへの畏敬の念が浮かんでいた。
ハーベルは、さらに詠唱を続ける。
「虚空:第9上級魔法!エクリプス・アルカナム!」
無防備になったホーリーウルフの上に、まるで太陽のような巨大な光が輝き、ホーリーウルフを包み込んだ。その光を、闇が食らうようにどんどんと消し去っていき、ホーリーウルフの生命力を極限まで削っていった。
「怖すぎ…。」
フレアが、その光景を見て震えた。ハーベルの放つ魔法の威力は、仲間たちをも圧倒するほどだった。
ホーリーウルフは、その場で力尽きたように倒れ込み、虫の息だった。その美しい毛並みは汚れ、覇気が失われている。
「すまない…。やり過ぎた!」
ハーベルは、その様子を見て素早くホーリーウルフに近づき、手をかざした。
「光:第10究極魔法!フェニックス・レストレーション!」
ハーベルの掌から、まばゆい光が放たれ、ホーリーウルフの傷をみるみるうちに回復させていく。その光は、生命力を吹き込むかのように輝いていた。
「うう、我は……。どうなったのだ……。」
ホーリーウルフは、意識が朦朧としたまま、ハーベルに呟いた。
「ホーリーウルフ…。すまない、やり過ぎてしまった。別に戦いたい訳じゃないんだ!」
ハーベルは、ホーリーウルフの頭を優しく撫でながら、心からの言葉をかけた。
「お主は…?」
ホーリーウルフは、ハーベルの優しさに戸惑いながら尋ねた。
「俺は、ハーベル!人間だ…。」
ハーベルは、自分の名を告げた。
「人間で…。このような強さと魔力を持つ者がおるとは驚きだな……。」
ホーリーウルフは、その言葉に少し嬉しそうな表情を見せた。
ハーベルの力に、畏敬の念を抱いたようだった。
「俺の仲間になってもらえないか?」
ハーベルは、お願いするようにホーリーウルフに尋ねた。
「なぜ……。命令しない!」
ホーリーウルフは、ハーベルの態度に不思議そうに問いかけた。通常、力を示す者は命令するものだからだ。
「俺は、無理やり道具のように使うのは嫌いだ…。できれば、お前の意思で仲間になってほしい……。」
ハーベルは、偽りのない気持ちを伝え、手を差し出した。彼の言葉には、ホーリーウルフへの深い敬意が込められている。
「フ……。フハハハハ………!」
ホーリーウルフは、ハーベルの言葉に心底嬉しそうに笑った。その笑い声は、彼の心がハーベルの言葉に触発されたことを示していた。
「お主……。気に入った!我の主人になってはくれまいか!」
ホーリーウルフは、ハーベルの差し出した手を取り、自ら仲間になることを申し出た。
「ああ、ホーリーウルフ…。よろしく!」
ハーベルは、ホーリーウルフの言葉に喜び、その頭を優しく撫でた。すると、彼の頭の中に、一つの呪文が流れ込んできた。
ハーベルの脳裏に響く呪文
「光の精霊に感謝します。浄化の守護者、ホーリーウルフよ、この地に降臨せよ!光召喚:第7上級魔法!セレスティアル・ハウル!」
「ハーベル、その呪文を覚えておいて!」
ノアールが、その呪文を忘れないようにと叫んだ。
「分かった!」
ハーベルは、力強く答えた。彼の記憶力は、医術師として培われたものだ。
さらに、ホーリーウルフの上に、光の文字でできた魔法陣がゆっくりと写し出された。
「ハーベル、その魔法陣を描き写して!」
ノアールが、再び指示を出した。
••••••••••
結構、厄介だが、伊達に医学部を卒業した訳じゃないんだ。記憶力には自信がある!ここは、「切断」スキルで魔法陣を切り取り、「転写」スキルで何かに写しておこう!そう言えば、医術書があったな……。
••••••••••
ハーベルは、素早く「切断」スキルを発動し、空中に浮かぶ魔法陣を切り取ると、自身の医術書のページにその魔法陣を貼り付けた。さらに、先ほどの詠唱も正確に書き留めておいた。
••••••••••
ハーベル ♂ 【医術師】【ネクロマンサー】【召喚士】
種族:ヒューマン
武器:【シックスセンス】【神器:金剛の短剣】【神器:金剛の盾】
召喚獣:【ホーリーウルフ】
魔法属性:全属性
固有スキル:「統合」「破壊」「精製」「合成」「構築」「解析」「分解」
獲得スキル:「設定」「把握」「毒耐性」「召喚」「魔法陣」「ライブラリー」「分離」「蘇生」「切断」「転写」「怒号」「万華鏡」「反射」「自動回復」「魔法防御」
光:究極魔法10 神聖:上級魔法7 薬剤:上級魔法7
闇:究極魔法10 虚空:上級魔法9 召喚:上級魔法7
炎:上級魔法8 黒炎:応用魔法5
水:上級魔法9
風:究極魔法10 雷鳴:上級魔法8
土:上級魔法9
••••••••••
すると、ホーリーウルフの上にあった魔法陣がゆっくりと下降し始め、ホーリーウルフをどこかへ消し去ってしまった。それは、召喚獣としてハーベルの元へと帰還したことを意味する。
「ハーベル、一度「召喚」してみたら?」
ノアールが優しく言った。
「オッケー!」
ハーベルは、快活に返事をした。
「ハーベルのオッケーが出ましたわ!」
アクシアが、楽しそうにハーベルの言葉を真似た。
ハーベルは頭の中で魔法陣を思い浮かべながら、覚えたばかりの呪文を唱えた。
「光の精霊に感謝します。浄化の守護者、ホーリーウルフよ、この地に降臨せよ!光召喚:第7上級魔法!セレスティアル・ハウル!」
空中に美しく光る文字でできた魔法陣が現れると、ゆっくりと下降し始め、その中から再びホーリーウルフが姿を現した。
ウァオーーーン!
「主よ!我に名を与えたまえ!」
ホーリーウルフは、ハーベルにその身を捧げるかのように、名を求めた。
「ああ……。名前か!」
ハーベルは、その言葉に楽しそうにホーリーウルフと話し始めた。彼は、自分の召喚獣に名前をつけることを心から楽しんでいた。
「おい…。ノアールの言ってた話と違うくないか?」
カザキが、その光景を見て困惑したように呟いた。
「そうよ…。魔法陣を用意するのに時間がかかるんじゃ?」
アクシアも、その予期せぬ展開に戸惑いを隠せない。
「それに、あんな上級の魔物を一人で召喚できるものなのか?」
フレアも疑問を口にする。
「そうですよね?」
「分からない……。」
ノアールもまた、ハーベルの行動に驚きを隠せない様子だった。
彼の知識と経験からは、ハーベルの現状は説明がつかなかったのだ…。
「しかも、召喚中は常に魔力が消費され続けるから、そんなに長くは持たないはずなんだけど……。」
クラリッサも、ハーベルの魔力消費の少なさに驚いていた。
「楽しそうに話してるぞ?」
彼らの目の前では、ハーベルがホーリーウルフと楽しそうに会話を続けている。
「うーん…。不思議…。」
クラリッサは、その光景に首を傾げた。
「みんな、ホーリーウルフの名前は何がいいかな?」
ハーベルが、皆に楽しそうに尋ねた。
「ウルルンは?」
ネルが提案した。
「でも、雄だよ?」
ハーベルが首を傾げた。ウルルンという響きは、可愛らしい印象を与える。
「じゃあ、ウルンはどうでしょうか?」
今度はアクシアが提案した。
「おお、我はその名が気に入りました!」
ホーリーウルフが、その名に喜び、嬉しそうに言った。
「ウルン!よろしくな!」
ハーベルは、新しい仲間「ウルン」に笑顔で語りかけた。
「主よ!よろしくお頼み申す!」
ウルンは、ハーベルの横に座り込み、その頭にすりすりと甘えるように頭をこすりつけた。
ハーベルは、満足そうにウルンの頭を撫でていた。彼の心は、新たな仲間を得た喜びで満たされているようだった。
次回 アクシア覚醒!~聖獣王の願いと闇の階段~
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頑張って続きを書いちゃいます!




