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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン6 【六大精霊塔編】(エレメンタルスパイア)

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無詠唱の指導~新たな力の胎動~

「とりあえず、テルミットを設定して一度家に戻って、みんなに詳しく説明するよ!」

ハーベルはそう言うと、周囲に一瞬だけ青白い光が走り、彼と仲間たちの姿は跡形もなく消え去った。

それは、彼の得意とする瞬間移動のスキル「零式」だった。


⭐☆☆☆☆☆☆⭐


自宅に戻ったハーベルは、改めて皆に向き直り、提案した。


「じゃあ、無詠唱のコツを教えるのに、代表でネルにお願いしてみようかな!」

彼はそう言って、少し緊張した面持ちのネルを指名した。


「何すればいいの?」

ネルは、大きな瞳を不安げに瞬かせた。

「大丈夫…。いいから、見ててね!」

ハーベルはそう言って、目の前で両手をゆっくりと掲げた。


すると、彼の指先から淡い光が溢れ出し、みるみるうちにその空間の中に、丸みを帯びた可愛らしいクマの土人形が形作られていった。その精巧な出来栄えに、土の温かみすら感じられるようだった。


「おお、何したの?」

一同は、目の前で魔法が具現化する光景に、驚きの声を上げた。


「次は、ネルの番ね!」

ハーベルはそう言って、ネルの小さな、可愛らしい手をそっと持ち上げ、胸の前で構えさせた。


「ここから、頭のなかでクマの絵を、できるだけ鮮明に想像してみて……。」

「クマの絵か…。」

ネルは、真剣な表情で目を閉じた。


「その絵を想像しながら、心の中で土魔法の基本的な構築を、まるで呪文を唱えるように強く念じてみて!」

ハーベルがそう促すと、次の瞬間、ネルの手の中に、先ほどの愛らしいクマとは全く異なる、鋭い爪と牙を持つ恐ろしい顔をしたレッドベアの土人形が現れた。

その迫力に、周囲は息をのんだ。


「ああ…。これって、もしかして無詠唱?」

ネルは、自分の手の中に現れたリアルな熊の人形を、信じられないといった表情でまじまじと見つめた。


「熊がリアルすぎる……。」

無詠唱であることよりも、その人形のあまりのリアルさに、みんなが言葉を失っていた。特に、先ほどのハーベルの作った可愛らしいクマと比べると、そのギャップは大きかった。


「そう、こうやって、頭の中でイメージを強く持ち、魔法の構築を念じることで、無詠唱でも魔法は使えるんだ。そして、これを意識して続けていると、少しずつだけど魔力量が増えて行くんだよ!」

ハーベルは、皆に向かって丁寧に説明した。


カザキは、腕を組み、顎に手を当てて首をかしげた。

「うーん……。にわかには信じられないな…。」

しかし、フレアは目を輝かせ、身を乗り出した。

「そうね…。もし本当なら、すごく画期的なことだわ!」

彼女は、無詠唱という魔法の応用法に強い興味を抱いたようだった。


アクシアは、上品な仕草でハーベルに近づき、お願いするように言った。

「私にも教えてくださるかしら?」

ハーベルは快く頷き、順番に、それぞれの得意な属性に合わせて、無詠唱のコツをレクチャーしていった。土、風、炎、水、それぞれの属性のイメージの仕方、魔法の基本的な構造を頭の中で組み立てるかを、一人ひとりに丁寧に教えていった。


全員へのレクチャーを終え、ハーベルは少し疲れた様子で腰を下ろした。

「これでみんなかな!」


その時、ハーベルは何かを思い出したように立ち上がり、カザキに声をかけた。

「そう言えば、カザキさん、テルミットを渡しておきますね!」

彼は、腰のポーチから小さなぼんやりと光る珠を取り出し、カザキに手渡した。


カザキは、不思議そうにそれを受け取った。

「どうするんだ、これは?」

フレアが、面白そうに口を開いた。

「手を挙げればいいだけよ!」


それを聞いたネルは、慌てて制止した。

「ああ…。今挙げないでね!テルミットに反応して、エレメンタルスパイアに転移しちゃうよ!」

「ハハハ………。」

カザキは、少し間抜けな顔で頭を掻いた。


その直後だった。

「あれ…。ボス部屋だ…。」

カザキの言葉は途中で途切れ、彼の姿は忽然と消え、代わりに、エレメンタルスパイアの10階層の、禍々しい雰囲気を漂わせるボス部屋に現れていた。


「うぉーーー!どうなってるんだ?」

突然の転移に、カザキは状況が理解できず、軽いパニックに陥りそうになった。周囲には、異形の魔物が蠢いている。


混乱しながらも、カザキは先ほどのフレアの言葉を思い出した。

「ええっと…。えっと。確か…。手を挙げるって…。」

藁にもすがる思いで、もう一度手を挙げて見ると、彼の体は再び光に包まれ、先ほどのハーベルたちのいる自宅へと簡単に戻ることができた。


「ああ…。カザキさん…。急に転移したから、本当にビックリしましたよ……。」

ハーベルは、息を切らせて駆け寄ってきた。


「ハハハ…。すまん、すまん…。」

カザキは、苦笑しながら頭を下げた。


ネルは、心配そうな表情でカザキに注意した。

「気をつけてね!」

「はい…。」

カザキは、素直に頷いた。


フレアは、カザキの肩をバシッと叩き、「でも、これで使い方も分かったでしょ!」と、いたずらっぽく笑った。


ネルは、急に真剣な顔つきになり、皆に向かって言った。

「じゃあ、明日からのエレメンタルスパイア攻略作戦を伝えるね!」

そして、具体的な計画を説明し始めた。


「それでよろしく!」

「うん!」

「分かった!」

「了解!」

「分かりましたわ!」


その日は、皆でゆっくりと休息を取り、明日に控えるエレメンタルスパイアへの再挑戦に備えることになった。


しかし、ハーベルの心は、どうしてもレオンのことが頭から離れず、昔の楽しかった日々を思い出しては、静かに涙を流すのだった。


次回 30階層到達!ハーベル、新たな魔法への挑戦!

続きの気になった方は、

ぜひともブックマークをお願いいたします。

リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。

頑張って続きを書いちゃいます!

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