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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン6 【六大精霊塔編】(エレメンタルスパイア)

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エレメンタルスパイア攻略開始~光の階段と無詠唱の秘密~

「はあ、はあ、あれ、追ってこないぞ!」

カザキは荒い息をつきながら、周囲の霧が晴れていくのを確認した。


先ほどの激しい攻防が嘘のように、今は静寂が辺りを包んでいる。しかし、彼の表情にはまだ警戒の色が残っていた。


ハーベルは、レオンの変わり果てた姿と、向けられた憎しみの言葉が深く突き刺さったように、依然として呆然自失としていた。


彼の心は、悲しみと混乱でぐちゃぐちゃになっているようだった。


クラリッサは、そんなハーベルを心配そうに見つめながら問いかけた。

「ハーベル、どういうことなの?」

彼女の声は、友を案じる優しさに満ちていた。


ネルも、ハーベルの袖を小さな手でぎゅっと握りしめ、不安げな表情で顔を覗き込んだ。

「ハーベル、大丈夫?」

その瞳には、純粋な心配の色が宿っていた。


「うん、みんなにすべて話すよ……。」

ハーベルは、ようやく重い口を開いた。


彼の声は掠れ、疲労の色が濃い。そして、レオンとの過去や【MACOK】と呼ばれるもののことなど、今まで誰にも話せなかった経緯を、ゆっくりと語り始めた。


⭐☆☆☆☆☆☆⭐


ハーベルの話を聞き終え、ネルは悲しそうな顔で呟いた。

「そうだったのね……。じゃあ、レオンさんには久しぶりに会えたのに…。」

彼女の小さな肩が、僅かに震えている。


「うん…。」

ハーベルは、やりきれない思いを抱え、深く頷いた。彼の表情は暗く、後悔と悲しみが入り混じっているようだった。


カザキは、腕を組みながら複雑な表情を浮かべた。

「それにしても、いきなり斬りかかってくるとは……。一体、何があったんだ?」


アクシアも、事態の急変に困惑の色を隠せない。

「そうですわね…。信じられません…。」


重い空気を察してか、フレアが明るい声で話題を変えようとした。

「でも、塔には来られたな!」

彼女は、前方を指差し、皆の視線をそちらへ向けた。


「ええ、あれがエレメンタルスパイアに間違いありません!」

クラリッサも、目の前にそびえ立つ巨大な塔を見上げ、確信に満ちた表情になった。

その威容は、先ほどの出来事を忘れさせるほどの存在感を放っていた。


ハーベルたちが、荘厳な雰囲気の漂う塔の入口をくぐると、内部は外観からは想像もできないほど不思議な造りだった。


中には、息をのむほど美しい装飾が施された広大なホールのような空間が広がっており、その周囲には、それぞれ異なる意匠を持つ六つの入口が設けられていた。


各入口は、まるで意思を持っているかのように、それぞれ異なる属性の光を放っていた。

そして、妙なことに、一つの扉を開けると、他の属性の扉はまるで幻のようにスーッと消え去り、通れなくなってしまうという奇妙な仕様だった。


ホールの中央で立ち尽くしていたハーベルは、カザキに向き直り、深々と頭を下げた。

「カザキさん、さっきはありがとうございました…。」

彼の声には、感謝の念が込められていた。


カザキは、優しくハーベルの肩に手を置いた。

「ああ、ハーベルがあんなに動揺するとは思ってもいなかったから、正直ヒヤヒヤしたぞ!」

彼の言葉には、仲間を案じる温かい気持ちが感じられた。


アクシアは、周囲の不思議な光景を見渡しながら、首を傾げた。

「それにしても、誰も塔へ行けないはずなのに、妙にすんなりと入れましたわね?」

彼女の言葉には、拭いきれない疑問が滲んでいた。


「確かに…。」

フレアも、顎に手を当てて考え込んだ。


ネルは、可愛らしい仕草で一本指を立てながら言った。

「何か特別な条件があって、私たちがたまたまそれをクリアしていたのかも知れないよ?」

「なるほど…。まあ、考えてもしょうがないかもね…。」

クラリッサも、まだ腑に落ちない様子だったが、先に進むことを促した。


•••••••••

実際のエレメンタルスパイアへの挑戦条件は、各属性に対応する神器を最低でも一種類ずつ所持していることと、精霊を呼び出すために魔法属性ランクが究極魔法10であり、「召喚」スキルを使用できる資格を持つ者がいることだった。

ハーベルたちは、光の神殿へは訪れていないため、本来ならば光の神器を所持していないはずだった。

しかし、ハーベルの持つ【シックスセンス】が、なぜか光の神器に相当するものとして認識されたらしい…。

•••••••••


ハーベルが、壁に描かれた美しい光の魔法陣が浮かび上がる扉に手を触れると、不思議な光が広がり、他の五つの属性の扉は、まるで溶けるように静かに消え去ってしまった。


扉の奥には、眩い光に包まれた螺旋状の階段が、どこまでも続いているように見えた。そして、微かにだが、各階層から魔物の気配が感じられた。


ハーベルは、少し生気を取り戻したように前を見据え、

「まずは、光の階段から行ってみよう!」

と提案した。


「分かった!」

カザキが力強く頷いた。

「ええ、行ってみましょう!」

クラリッサも同意し、一行は光の階段を一段ずつ慎重に昇り始めた。


階段を昇っていくと、フレアは周囲の様子を興味深そうに観察していた。

「なるほど、こうなっているのか…。」

彼女が立っている階層は、円筒形の広い空間が広がっており、外から見える塔の大きさとは明らかに異なる広さを持っていた。


フランは、ネルの腕にちょこんと飛び乗りながら、ゆっくりと言った。

「どうも、この塔の中は、別の空間に繋がっているようね!」

「そうなのか…。」

ハーベルは、不思議そうにきらきらと輝く壁や天井を見回した。


「光のスライムですね!」

クラリッサは、現れた光を纏うスライムを、杖を一振りするだけでいとも簡単に退けていく。


「この辺りは、まだそれほど強くないみたいだから、どんどん上がって行きましょう!」

クラリッサは、先頭に立って階段を昇り始めた。


しばらく進むと、クラリッサは何かを察知したように杖を構えた。

「どうも、10階層ごとにボスがいるみたいね!」


そして、詠唱を始めた。

「闇の精霊に感謝します。闇の恐怖、ゴールデンスライムに攻撃を!闇:第5応用魔法!ダークネス・ジャベリン!」


次の瞬間、彼女の杖先から放たれた漆黒の槍は、黄金色に輝く巨大なスライムの核を、寸分の狂いもなく正確に打ち抜いた。

スライムは、光を失い、その場で崩れ落ちた。


フレアは、その鮮やかな魔法の威力に、目を丸くして呟いた。

「クラリッサ…。怖!」

ハーベルは、苦笑しながら言った。

「クラリッサも、こう見えて、やる時はかなり怖いんだよ!」

その言葉を聞いたクラリッサは、【邪神の杖】でハーベルの頭を軽くコツンと叩いた。


「痛て……。」

ハーベルは、軽く頭を擦った。


カザキは、感心したように言った。

「でも、フル詠唱の魔法って、やっぱりすごいな!」


ハーベルは、なぜか得意げな顔で頷いた。

「そうなんだ…。すごいんだよ!」

それを見たクラリッサは、再び杖を振りかぶった。


「や…め…て…。それ、意外と痛いんだからな!」

ハーベルは、慌てて頭を庇った。


クラリッサは、少し不機嫌そうに言った。

「魔法で身体防御してるから、痛くないくせに!」


ネルは、不思議そうな表情で首を傾げた。

「身体防御?」


「ああ…。クラリッサ以外は、まだ知らないんだっけ?」

ハーベルが言うと、他のメンバーも興味津々といった表情で「うん…。どういうこと?」と尋ねた。


ハーベルは、少し照れながら説明した。

「俺は、常に魔法の薄いバリアを、無詠唱で身体に張り続けているんだよ!」


アクシアは、驚いた表情で問いかけた。

「ええ…。無詠唱で?」

フレアも不思議そうに聞いた。

「何のために?」


ハーベルは、あっけらかんと言った。

「総魔力量を増やすためだよ!」

その突拍子もない理由に、「はあ?」「ハハハ……。」と、カザキたちは笑い出した。


「いや、何言ってるの?」

しかし、カザキはすぐに真剣な表情に戻り、ハーベルをまじまじと見つめた。

「でも、昔から思っていたけど、ハーベルの魔力量って異常に多いよな!?確かに、以前よりさらに増えている気も……。」


ネルは、目を輝かせながら身を乗り出した。

「まさか…。本当なの?」

ハーベルは、ネルに優しく微笑みかけた。

「うん、本当だよ!」


「マジか…。」

フレアは、信じられないといった表情で呟いた。

「マジです!」

ハーベルは、真剣な顔で断言した。


その光景を、他のメンバーは少し唖然とした様子で見守っていた。

次回 無詠唱の指導~新たな力の胎動~

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頑張って続きを書いちゃいます!

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