暗闇に潜む儀式の真相
「ハーベル、怖いよ!やっぱり、引き返そうよ!」
レオンは、怯えた表情でハーベルの腕を強く引っ張った。その声には震えが混じり、洞窟内の湿った空気にかき消されそうだった。
「なに言ってるんだ!せっかくここまで来たのに!」
ハーベルは鼻息を荒くしながら、奥へ進むことに全く迷いがない様子だった。
「行くぞ。ライト!」
ハーベルが魔法の詠唱を終えると、彼の目の前に黄色く輝く光球が現れた。その光は洞窟の暗闇を照らし出し、湿った岩肌の陰影を際立たせた。
レオンの腕を引っ張りながら奥へ進むハーベルの姿は、まるで暗闇に挑む無鉄砲な冒険者そのものだった。
洞窟の中はじめじめしていて、空気は重く、足元から時折奇妙な音が響いていた。
パキッ!
「ひーーーー!」
突然、レオンが足元で何かを踏みつけた音に驚き、悲鳴を上げた。
「レオン、静かに!」
ハーベルは鋭い目で彼を制止し、洞窟の奥を警戒するように光球を高く掲げた。
「ごめん…」
レオンが申し訳なさそうに謝りながら、ふと上を向いた。すると、その目が何かを捕らえた。
「ハーベル、上を見て!」
レオンの焦った声に促され、ハーベルも不機嫌そうに目を上げた。その視線の先には、ゆらりと動く灯りがいくつも見えた。
「なんだ?人影か?」
ハーベルは灯りの方へ向かって崖をよじ登り、視界を広げようとした。その姿を見て、レオンも慌てて後を追った。
二人が崖から顔を出して覗き込むと、異様な光景が広がっていた。
「なんだろう?詠唱しているのか?」
ハーベルが小さく囁くように言った。
「うーん、分からない…でも、あのでかい魔法陣は何だ?」
レオンは驚愕のあまり、目を離すことができないでいた。
目の前には、巨大な魔法陣が地面に描かれており、その周囲を怪しいフードを被った十数人の大人たちが取り囲んでいた。彼らは一心に同じ呪文を詠唱し、その声が洞窟内に低く響いている。
「ハーベル、もう帰ろうよ!こんなところ、絶対に危ないよ!」
レオンはハーベルの腕を強く引っ張りながら必死に訴えた。
「いや、もう少し待って!」
ハーベルの目は魔法陣に釘付けになり、儀式の異様さに引き込まれていた。
「僕、嫌だよ!先帰るからね!」
レオンがハーベルを見限るように崖を降り始めたその瞬間、何かが彼を襲った。
「だから、もう少し待ってよ…ううっ…」
ハーベルは頭に暖かい何かを感じたと思うと、次の瞬間には目の前が真っ暗になっていた。
次回 勇気と恐怖の極限
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