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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン6 【六大精霊塔編】(エレメンタルスパイア)

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ルナシェイドの導き~闇の精霊と契約の資格~

「はあ、はあ、あれ、追ってこないぞ!」

カザキは肩で息をしながら、周囲を警戒するように呟いた。


背後を何度も振り返るが、深い霧の中にレオンの姿は見えない。緊迫した状況から、ようやく解放された安堵感が彼の全身を包んでいた。


ハーベルは、先ほどのレオンとの劇的な再会と、信じがたい攻撃に、まだ魂が抜けたように呆然としていた。

彼の瞳は焦点が合わず、ただ虚空を見つめている。


心配そうな面持ちで、クラリッサがハーベルの顔を覗き込んだ。

「ハーベル、どういうことなの?」

彼女の声は優しく、しかしその奥には隠せない不安が滲んでいた。


ネルもまた、ハーベルのことが心配でたまらない様子で、彼の腕にそっとしがみついた。

「ハーベル、大丈夫?」

小さな声には、親愛の情が込められていた。


二人の言葉に、ハーベルはゆっくりと意識を取り戻したようだ。

かすかに頷き、

「うん、みんなにすべて話すよ……。」

と、重い口を開いた。


そして、レオンとの出会いから、あの衝撃的な再会に至るまでの経緯を、時折言葉を詰まらせながら語り始めた。


彼の語る過去は、彼らにとって全く予期せぬ、苦痛に満ちたものだった。


⭐☆☆☆☆☆☆⭐


一方、取り残されたレオンは、アルカの問い詰めるような視線を受け止めていた。


「レオン…。説明して!」

彼女の言葉には、先ほどの彼の豹変に対する強い疑問と、仲間としての理解を求める気持ちが込められていた。


他のメンバーも、彼の言葉を待つように静かに頷いていた。


レオンは、遠い記憶を辿るように、寂しげな表情で呟いた。

「ああ、ハーベルとは幼い頃からの友達だ…。いや、かけがえのない親友だったんだ。」

彼の声には、失われた友情への深い悲しみが滲んでいた。


「魔法学院の中等部だったある日、俺はメルギドの卑劣な罠に引っ掛かって、【MACOK】にされてしまったんだ…。」

レオンは、自らの身に起こった悲劇を語り始めた。


彼の表情は苦痛に歪み、全身に刻まれた魔法陣を無意識にかばうような仕草を見せた。

「直接、ハーベルが悪い訳じゃない…。でも、この3年間、俺がどんな地獄を見てきたか…。それを思うと、ハーベルがあんなにも楽しそうに、何の苦しみもなく生きていることが、どうしても許せなくて…。つい、あんな酷いことを言ってしまった…。」

彼の言葉には、激しい憎しみと、その後のわずかな後悔の念が入り混じっていた。


アルカは、レオンの告白を静かに聞き終えると、どこか達観したように言った。

「まあ、分かったわ!多かれ少なかれ、私たちだって似たような経験をしてきたんじゃない?もう、昔のままには戻れないんだってことよ……。」

彼女の言葉は、自分自身を含めた仲間たちの過去を暗示しているようだった。


他のメンバーも、アルカの言葉に共感するように頷き、中には目頭を押さえる者もいた。


「レオン…。」

ミリアが、何か言葉をかけようと一歩踏み出した、その時だった。


何もない空間が、まるで水面が揺らぐように歪み、そこから信じられない光景が現れた。


美しい紫色の星屑がキラキラと煌めき、その中心から、まるで最高級のベルベットのような、深く吸い込まれるような光沢を放つ羽を持つ、小さな妖精が現れたのだ。その神秘的な姿は、場違いなほどに幻想的だった。


レオンは、そのありえない光景に目を丸くし、驚きのあまり尻餅をついてしまった。

「ええ…。妖精!?」

彼の声は、完全に混乱していた。


妖精は、宙を舞いながら、きらびやかな光の粉を撒き散らした。

「レオン…。まだよ…。まだ資格が足りないの!」

その声は、鈴が転がるように美しかった。


レオンは、その言葉の意味を理解しようとしながら、悔しそうな表情でハーベルたちが消えていった方向を見た。

「そうか……。ハーベルなら行けるのか!」

彼は、やり場のない怒りを込めて剣を振り上げ、妖精に切っ先を向けた。


「ちょっと!」

さすがに、アルカがレオンの危険な行動を制止するために、素早く彼の腕を掴んだ。


「危ないわね…!」

妖精は、レオンの耳元で、まるで秘密を打ち明けるように小さな声で囁いた。

「私はあなただけの味方よ!」


「僕だけ……?」

レオンは、その言葉の意味を深く考え込んだ。


妖精は、優雅に一礼し、自己紹介をした。

「私はルナシェイド!闇の精霊で、あなたを導く者よ!」

「なぜ…。僕に……?」

レオンは、まだ半信半疑だった。


ルナシェイドは、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。

「あなたには、特別な資格があるからよ!今は、まだ少し足りないだけ。」


そして、レオンの胸を指差しながら言った。

「まずは、その胸にある『召喚魔法陣』を使いこなせるようになりなさい!」


レオンは、言われた通りに自分の胸に手を当てた。

「ああ…。そう言えば、こんな魔法陣、いつからあったんだろうな……。使った覚えはないけど……。」


トリガーは、レオンの肩に力強く手を置いた。

「レオン、俺たちも協力するぞ!」

彼の言葉には、仲間としての強い絆が感じられた。


レオンは、先ほどの感情的な行動を恥じるように、頭を下げた。

「すまん…。取り乱して…。」

サクナは、心配そうな表情でレオンを見つめた。

「あんなレオン見るの初めてだったから、本当にびっくりしちゃった…。」


レオンは、アルカ、リセ、ミリアの三人に視線を向け、静かに言った。

「アルカ、リセ、ミリア…。お前たちにも、酷いことを言って悪かったな…。」

三人は、彼の謝罪を受け入れるように、優しく頷いた。


決意を新たにしたように、レオンはルナシェイドに向き直った。

「ルナシェイド!僕に召喚の仕方を教えてくれ!」

ルナシェイドは、快く頷いた。


「任せて!レオンの面倒は私が見るから、あなたたちは、各属性の神器を少なくとも一種類以上集めてきて!」

彼女は、テキパキと指示を出した。


「神器?」

レオンは、聞き慣れない言葉に疑問を投げかけた。


ルナシェイドは、可愛らしい小さな手を大きく広げて説明した。

「ええ…。それが、このエレメンタルスパイアへ挑戦することのできる、最低限の条件なのよ!」

「そう言うことか……。」

レオンは、ようやく状況を理解したように小さく呟いた。


トリガーは、どこか悪戯っぽい笑みを浮かべながら確認した。

「それって、盗んできてもいいのか?」

ルナシェイドは、全く悪びれた様子もなく答えた。

「ええ、もちろん!盗んでも、奪っても、所持さえしていればいいからね!」


リセは、自信満々に手を叩いた。

「それなら、私たちの得意とするところね!」

「任せて!」

トリガーが力強く頷いた。

「了解!」

サクナも笑顔で応じた。


「そうと決まれば、俺はレオンの分も含めて、光と闇の神器をとってくるよ!」

トリガーは、すでに動き出す準備をしていた。


「私は風ね!」

リセもそれに続いた。


アルカは、サクナと手を繋ぎ、息の合った様子で言った。

「じゃあ、私たちは炎と水を!」


ミリアは、何か心当たりがあるように手を上げた。

「私は、土の神器に心当たりがあるわ!」


次の瞬間には、彼らはそれぞれの目標に向かって、まるで嵐のように素早く各方面へと散っていった。

その迅速な行動力は、ルナシェイドを少し驚かせたほどだった。


「行動が早くて、助かるわ!」

ルナシェイドは、感心したように呟いた。

「それで…。僕は何をすれば?」

レオンは、自分にできることを尋ねた。


ルナシェイドは、レオンを見つめ、最終的な目標を告げた。

「そうね…。最終的には、この私を召喚できるようになって欲しいの!」


「君を…?」

レオンは、意外な言葉に目を瞬かせた。


「普通なら、闇の魔法属性ランクを究極魔法10まで上げる必要があるけれど、レオンなら、その特別な『召喚魔法陣』のおかげで、魔力消費なしでもそれを使用できるの。だから、やり方さえ覚えれば、そんなに難しいことではないはずよ!」

ルナシェイドは、レオンに簡単な魔法陣の使い方から丁寧に教え始めた。


•••••••••

ルナシェイドの話によると、通常の「召喚」は、大量の魔力を消費する危険な魔法だが、【MACOK】の召喚は、その特性ゆえに魔力を必要としない。

代わりに、召喚しようとする魔物を打ち倒せるだけの圧倒的な実力があれば、「契約」を結び、強制的に従わせることができるという、異質な召喚術のようだった。

•••••••••


ルナシェイドは、レオンの驚異的な習得速度に目を丸くした。

「やっぱり…。習得が早いわね!」

正直なところ、ここまで早く理解するとは思っていなかったようだ。


レオンは、少し照れたように言った。

「誉めても、何もでないぞ!」


「あとは、六種の神器を持って、エレメンタルスパイアへ向かうだけよ!」

ルナシェイドは、最終的な目標を改めて告げた。

「分かった…。」

レオンは、決意を込めて頷いた。


「私が手伝えるのは、ここまでよ!じゃあ、頑張って!」

そう言い残して、ルナシェイドは、まるで霧に吸い込まれるように、エレメンタルスパイアの方へと姿を消していった。


ルナシェイドの消えた方向をしばらく見つめていたレオンは、静かに、しかし強い決意を込めた声で呟いた。

「ハーベル…。待ってろよ!」

彼の瞳には、新たな目標に向かって燃えるような光が宿っていた。

次回 エレメンタルスパイア攻略開始~光の階段と無詠唱の秘密~

続きの気になった方は、

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リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。

頑張って続きを書いちゃいます!

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