雷帝の陥落~悪夢の終焉~
レオンはそのまま、仲間たち全員を連れて、犯罪ギルド【ルナアークの翼】の本部へと、一瞬で空間を跳躍した。
レオンが連れてきた場所は、無機質なコンクリート打ちっぱなしの広々とした倉庫だった。そこには、所狭しと盗品と思われる木箱が積み上げられ、雑然とした雰囲気を醸し出していた。
そんな殺風景な倉庫の一角に、場違いなほど豪華な革張りのソファが置かれ、その周囲だけがスポットライトのように明るく照らされていた。
「おお、お前ら何だ!」
ソファにゆったりと腰掛けたまま、その男はこちらを一瞥し、まるで落ちているゴミでも見つけたかのように、全く驚く様子もなく、むしろ退屈そうに言い放った。
その男、ガルシアは、堂々とした体躯を大きなソファに預け、両手を大きく広げて悠然とこちらを見据えている。
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ガルシア ♂ 【魔法陣使い】
【国宝専門盗賊団 ルナアークの翼 団長】
種族:ヒューマン
魔法属性:風属性、光属性
固有スキル:「合成」「恫喝」
魔法陣:「豪腕魔法陣」「解錠魔法陣」「爆破魔法陣」「窃盗魔法陣」「逃走魔法陣」「壁抜魔法陣」「布陣魔法陣」「音魔法陣」
光:究極魔法10
闇:応用魔法5
炎:応用魔法5
水:応用魔法5
風:究極魔法10 雷鳴:究極魔法10
土:応用魔法5
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テーブルに投げ出された太い足は、ゆっくりと組み直された。その態度には、この上ない自信と余裕が滲み出ていた。
「ガルシア!」
リセは、その姿を認めるや否や、憎悪と恐怖が入り混じった声で叫んだ。
「お前が、ガルシアか…。ここで死ね!」
レオンは、リセの叫びに呼応するように、冷たい眼差しでガルシアを睨みつけ、吐き捨てるように言った。
「リセ!……こっちへ来い!」
ガルシアは、いつものように、凄みのある低い声でリセを呼びつけた。その声には、抗えない威圧感が宿っていた。
「うっ……。」
リセは、ガルシアの声を聞いた瞬間、体がビクッと震え、まるで条件反射のように、彼の元へ一歩踏み出そうとした。
過去の支配から完全に抜け出せていないことがうかがえた。
「リセ…。もういいんだよ!」
レオンは、リセの肩に優しく手を置き、その動きを制止した。
その声には、温かい労りと強い決意が込められていた。
そして、ガルシアに向かって、レオンは怒りを込めた声で言い放った。
「お前は、ここで再起不能にする!」
「ハハハッ…。大きく出たな!どうだ、その心意気に免じて、一度だけ許してやる!俺の組織に入れ!」
ガルシアは、レオンの言葉を鼻で笑い飛ばし、信じられないことに、彼を自分の組織に勧誘してきた。
その傲慢な態度に、レオンの怒りはさらに増した。
「はん…。言ってろ!」
レオンもまた、ガルシアの言葉を嘲笑するように鼻で笑うと、
次の瞬間、
ズキューン、ズキューン、ズキューン……
トリガーが、間髪入れずにショットガンをガルシア目掛けて三連射した。
倉庫内は、炸裂音と同時に舞い上がった硝煙と埃で視界が悪くなった。
「殺ったか?」
トリガーが、煙の向こうを見つめながら呟いたその瞬間、
煙の中から、信じられないほど巨大な手がヌッと伸びてきて、トリガーの首元を鷲掴みにした。
「うううう……。」
トリガーは、喉を締め付けられ、苦悶の表情で足をバタつかせた。
その危機的状況に、とっさにレオンが反応した。
トリガーの腕を掴むと同時に「空間魔法陣」を発動させ、寸前のところでトリガーを安全な場所へと瞬間移動させた。
「ほお………。これを避けるかね!面白い。ますます俺の飼い犬にしたくなった。どんどん行くぞ!」
窮地を脱したにも関わらず、ガルシアは余裕の笑みを浮かべ、さらに勢いを増してそう叫ぶと、
「ゼウス・インフュージョン!」
ガルシアは、天に向かって力強く拳を突き上げた。
すると、彼の周囲に強烈な雷撃が迸り、その強靭な肉体を眩い雷が覆い尽くした。バチバチと音を立てる雷光は、尋常ではない力を示していた。
ゴクリ…。
その異様な光景に、トリガーは生唾を飲み込み、仲間に警告を発した。
「あんなの食らったら、即死だ!」
雷を纏ったガルシアは、猛烈な勢いでレオン目掛けて突進し、怒涛の如く攻撃を繰り出した。
レオンは、迫りくる雷の拳を、紙一重で「空間魔法陣」を駆使して辛うじて回避していた。
「オラオラ、どうした!殺すんじゃないのか!?」
ガルシアは挑発的な言葉を浴びせてくるが、レオンは冷静にその動きを見極めようとしていた。
「私に任せて!」
その時、アルカが素早く行動に出た。
「蛇鞭魔法陣!」
漆黒の鞭がうねりながら伸び、雷を纏うガルシアの巨体を拘束しようとした。
「これでおしまいよ!」
アルカの拘束と同時に、サクナがガルシアを真っ直ぐに見つめ、「魅了魔法陣」を発動させた。
サクナの瞳に、淡いピンク色の光が宿る。
ガルシアは一瞬動きが鈍り、わずかにふらついたが、強靭な肉体と精神力でサクナの魅了を振り払い、力ずくでアルカの鞭を引きちぎると、サクナ目掛けて巨大な手を伸ばした。
雷を纏ったその手は、触れたものを焼き焦がすような危険なオーラを放っていた。
「ああ………。殺られる…。」
サクナは、迫りくる巨大な手に恐怖を感じ、目を瞑って歯を食い縛った。
「いや、十分だ!」
レオンがそう呟いた、その瞬間、ミリアを抱きかかえたレオンは、信じられない速さでガルシアの背後へと回り込み、「白昼夢魔法陣」を発動させていた。
ビリビリ…ビリ……。
ガルシアの巨大な手が、サクナの細い首を掴む寸前で、まるで時間が止まったかのように静止した。雷の光がチリチリと音を立てている。
レオンは、そのまま動かなくなったガルシアを力強く蹴り飛ばし、床へと転がした。
「すまん、レオン!油断した……。」
トリガーは、冷や汗を拭いながら謝罪した。
「私も…。もう…ダメだと思いました…。」
サクナは、安堵からか、アルカの腕に力なく倒れ込んだ。
レオンは、優しくミリアを起こすと、リセは床に転がるガルシアを冷たい目で見下ろし、
「この、クソ野郎!」
憎しみを込めて足で一蹴りすると、素早く「布陣魔法陣」を展開し、ガルシアを小さな繭の中に閉じ込め、それを強く握りしめた。
次回 戦争狂の悪夢 ~涙の解放、静かなる脅威~
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頑張って続きを書いちゃいます!