ダンジョンと勇気の代償
「レオンもう3年生だね。」
ハーベルが町の入口近くで立ち止まり、少し寂しそうな目でレオンに話しかけた。
「早いもんだよな。」
レオンも同じく、物思いにふけるように目を伏せた。その目には、時が過ぎる早さと、共に過ごした日々の記憶が交錯しているようだった。
二人は誰が見ても親友そのものだった。性格は異なるが、不思議と気が合い、学園ではいつも一緒に過ごしていた。今日も例外なく、二人は約束の時間に町の入口で会っていた。
「今日は、何して遊ぼうか?」
少し沈んでいた空気を変えたかったのか、レオンが急に明るい表情で尋ねた。
「その前に、合言葉を確認しようぜ!」
ハーベルが少しニヤリと笑いながら提案した。
「もちろん覚えてるよ!」
「せーの、アスラ!」
二人は息をぴったり合わせて叫んだ。「阿修羅」というのは、ハーベルのお気に入りの言葉であり、二人の友情の象徴のようなものだった。
「そうだな、近くのダンジョンでも行こうか?」
ハーベルが悪巧みをする子供のような顔をして提案すると、レオンは思わず目を見開いて手を振った。
「ダメだよ!ダンジョンには勝手に入るなって、アリーナ先生に散々言われただろう?」
レオンは困ったように訴えるが、どこかその声は説得力に欠けていた。
「レオン、まさか先生が怖いのか?」
ハーベルは得意げに笑いながら挑発するように言った。
「いや、そんなことはないけど…でも、ダメだよ。たぶん…」
レオンの口調が次第に弱々しくなる。
「じゃあ、決まりだな!」
ハーベルはその瞬間を見逃さず、レオンの腕を掴むと一気に引っ張って走り出した。
「しょうがないな…ハーベル…」
レオンは小さく溜め息をつきながらも、彼の後を追った。
二人は笑いながら坂道を駆け下り、あっという間にダンジョンの近くにまでやってきた。
「おい!そこで何をしている!」
突然、大きな男性の声が響いた。
「やばい、衛兵だ!」
ハーベルは声を潜めながらすばやくレオンの頭を押さえ、近くの茂みに隠れた。
「誰かいるのか?返事をしろ!」
衛兵は持っていた槍で辺りをつつきながら、鋭い声で叫んでいた。
「シッ!」
ハーベルが焦りながらレオンの口を塞いだ。二人は息を殺して身を低くした。
衛兵の足音が遠ざかった瞬間、ハーベルはレオンに軽く合図を送り、茂みから飛び出した。
「今だ、行くぞ!」
ハーベルの一言で、二人は全力でダンジョンの入口に向かって駆け出した。
たどり着いたダンジョンの入口は巨大な洞窟になっており、その形状はまるでドラゴンが口を大きく開けているかのようだった。中からは冷たい風が吹き出しており、不気味な雰囲気が漂っている。
「すごいな…本当に入るのか?」
レオンが少し不安そうな顔をしながら尋ねたが、ハーベルは振り返ることもせず、勝ち誇った笑みを浮かべたまま洞窟の中へと一歩踏み出した。
「たいした魔物もいないって話だろ?問題ないさ!」
自信に満ちた声でハーベルが答えたが、その先の暗闇から聞こえてくる妙な音に、レオンは小さな不安を感じていた。
確かに、そのはずだった…。
次回 暗闇に潜む儀式の真相
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頑張って続きを書いちゃいます!