敵か味方か!?~フィラルティアの白い影 ~
その時だった。
部屋のドアが、信じられないほどの勢いで外側から吹っ飛んできた。
「お前ら、人の商品に何をしてるんだい!」
轟く雷鳴のような怒声とともに、ヨイザクラが部屋に乱入してきた。その巨体は壁を揺るがし、威圧感は尋常ではない。
レオンを一瞥すると、ヨイザクラは自信に満ちた笑みを浮かべながら近づき、
「私の魅力にイチコロだよ!」
と甘美な声で囁き、「魅了魔法陣」を起動させた。
周囲の空気が微かにピンク色に染まったように見えた。
しかし、レオンは挑発的なヨイザクラに対し、どこか楽しむような微笑みを浮かべた。
そして、次の瞬間、信じられない光景が展開される。レオンは素早い動きでヨイザクラのふっくらとした頬を両手で挟み込み、まるで豚の鼻をつまむかのように力を加えた。
「この、ブタ野郎!」
低い咆哮とともに、レオンは渾身の力を込めた強烈な張り手をヨイザクラの頬に叩き込んだ。
巨漢ヨイザクラの体は、まるで巨大なボールのように勢いよく吹き飛び、背後の壁に激突。衝撃で壁には大きな亀裂が走り、粉塵が舞い上がった。
あまりの出来事に、サクナとアルカは言葉を失い、何が起こったのか理解できないといった表情で目を丸くしていた。
壁にもたれかかり、辛うじて意識を保っているヨイザクラは、混乱した様子で呟いた。
「はへ……。へ…。あれ……。わたしの…魅了が…効かないの?はへ……。あり?」
そして、先ほどの威勢はどこへやら、狼狽えながら意味不明な言い訳を始めた。
「ブタじゃなくて、少しぽっちゃりしているだけなんだよ!」
「うるさい…ブタだ…。」
レオンは冷たい眼差しでヨイザクラを見下ろし、吐き捨てるように言い放った。
「ミリア…。頼む!」
レオンの静かな声に、ミリアはすぐに反応した。
「はい!」
ミリアは両手を胸の前でそっと組み合わせ、祈るような仕草を見せると、静かに、しかし確実に「白昼夢魔法陣」を発動させた。淡い光がヨイザクラを包み込む。
「ブヒ……。はへ……。おやすみ…。」
ヨイザクラはまるで眠りに落ちるように、その巨体を床に横たえた。
戦いが終わると、レオンは安堵したように小さく息をつき、優しくミリアを抱き寄せると、額にそっとキスをして起こした。ミリアは少し照れたように顔を赤らめた。
その光景を、サクナとアルカは頬をほんのり染めながら見守っていた。
「リセ、来てくれ!」
レオンが声をかけると、外で待機していたリセが素早く駆けつけた。
「了解!」
リセは到着するや否や、倒れているヨイザクラを「布陣魔法陣」で包み込み、みるみるうちに小さな繭のような形状へと収縮させてしまった。
レオンはその繭を拾い上げ、サクナに手渡した。
「これで、もう安全だ!」
「ええ、自由?」
サクナは繭を不思議そうに見つめた。
アルカは喜びを爆発させ、サクナに抱きついた。
「サクナ、私たち自由だよ!」
そこへ、外で残りの者たちを全て制圧してきたトリガーが合流した。
「オッス!」
「おお!」
レオンはトリガーと力強く握手を交わした。
アルカは少しばかりの気まずさと感謝の念を込めて言った。
「さっきはすまなかった…。アルカだ…。助けてくれてありがとう!」
•••••••••
アルカ ♀ 【MACOK】
種族:ヒューマン
魔法属性:水属性
固有スキル:「精製」
魔法陣:「蛇鞭魔法陣」「音魔法陣」
光:見習い魔法1
闇:見習い魔法3
炎見習い魔法:2
水:応用魔法4
風:見習い魔法1
土:見習い魔法1
••••••••••
サクナも隣で深々と頭を下げた。
「私はサクナです。本当にありがとうございました!」
•••••••••
サクナ ♀ 【MACOK】
種族:ヒューマン
魔法属性:光属性
固有スキル:「浄化」
魔法陣:「魅了魔法陣」「音魔法陣」
光:応用魔法5
闇:見習い魔法1
炎見習い魔法:2
水:見習い魔法3
風:見習い魔法2
土:見習い魔法1
••••••••••
二人は解放された喜びを分かち合うように、固く抱き合ったまま動けなかった。
「まずは、ひとり!」
レオンは小さく呟いた。その視線の先には、まだ見ぬ敵の影が見えているようだった。
ミリアの瞳には、静かに、しかし確実に復讐の炎が燃え上がっていた。
「次は、一番厄介なエリスを倒す!」
レオンは皆に向かって声をかけた。
「じゃあ、捕まって!フィラルティアへ飛ぶぞ!」
「はい!」
五人は力強く頷いた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
フィラルティア公国は、鬱蒼とした森に囲まれた、神秘的な美しさを誇るエルフと妖精の国だった。その中心には、きらめく大きな湖があり、その湖畔に、この国の最重要機関が荘厳な姿でそびえ立っていた。
レオンたちは、その最高機関へと続く長く広々とした階段の前に、音もなく姿を現した。
その階段の最上段には、一人の美しいエルフが立っていた。長く流れるような金色の髪、透き通るような白い肌、そして手には眩い光を放つ杖。彼女こそが、ミリアの過去を知る「魔法陣使い」、エリスだった。
•••••••••
エリス ♀ 【魔法陣使い】
【フィラルティア公国 最高機関議長】
種族:エルダーエルフ
武器:【アウレリアンテンペストフレア】
魔法属性:光属性、炎属性、風属性
固有スキル:「解析」「統率」
魔法陣:「白昼夢魔法陣」「幻夢魔法陣」「意識魔法陣」「感情魔法陣」「分身魔法陣」「複製魔法陣」「召喚魔法陣」「音魔法陣」
光:究極魔法10 神聖:究極魔法10
闇:応用魔法5
炎:究極魔法10 光線:究極魔法10
水:応用魔法5
風:究極魔法10 雷鳴:究極魔法10
土:応用魔法5
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「エリス様、ご命令通り【MACOK】たちを連れて来ました!」
エリスの傍らに、見覚えのある妖精、ミリアが恭しく報告した。
エリスは優雅に微笑み、ミリアに労いの言葉をかけた。
「ミリア、御苦労!」
そして、ミリアは当然のようにエリスの隣へと移動した。
その光景を目の当たりにしたレオン一行は、驚愕のあまり言葉を失っていた。
「ミリア……。」
レオンは信じられない思いで、その名を呟いた。
エリスは、その黄金の杖をゆっくりと天へと掲げた。
「ルミナス・バインドトラップ!」
流麗な詠唱が終わると同時に、いくつもの金色に輝く魔法陣が、空中に次々と出現した。
それはまるで、光の檻が降りてくるかのようだった。
「あれに捕まったらおしまいだ!」
トリガーは、即座にその危険性を察知し、仲間に警戒を促した。
エリスは、まるで指揮者のように器用に杖を操りながら、無数の魔法陣を操り、レオンたちを捕えようとしていた。
レオンとトリガーは、迫りくる金色の光の網を間一髪でかわし、サクナとアルカの手を取り、魔法陣から逃れていた。
エリスは冷静に状況を分析した。
「なるほど、空間魔法陣ですか!」
エリスはミリアに向かって静かに言った。
「ミリア、少し離れて見ていなさい!」
ミリアはわずかに躊躇したものの、「分かりました」と答え、エリスの少し後ろへと下がった。
その目は、複雑な感情を宿してエリスだけを見つめていた。
次回 眠り姫の真実 ~魔法陣使いとの訣別 ~
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頑張って続きを書いちゃいます!