時間の檻 ~救出者たちの静かなる侵攻 ~
「一応、自己紹介も兼ねてもう一度、自分の能力を説明しておくよ!」
レオンが穏やかな口調で切り出した。
「僕はレオン。『空間魔法陣』を使えば、正確な情報さえあれば、どんな場所へも瞬時に移動できる。それと、『金属魔法陣』で状況に応じた武器を錬成したり、『岩石魔法陣』で強固な防御壁を作り出すことも可能だ。得意なのは、ナイフを使った近接戦闘と、体術全般だよ!」
そう言って、隣に立つトリガーを指し示した。
「俺はトリガー…。『砲弾魔法陣』と『防御魔法陣』の組み合わせで、バリアを展開しながら、ありとあらゆる銃火器による攻撃ができる。遠距離だろうと近距離だろうと、問題ないぜ!」
トリガーはニッと笑って、今度はリセに視線を送った。
「私はリセよ。見ての通りの獣人よ。『布陣魔法陣』で、どんなものでも時間軸から切り離して小さく収納できるの。だから、嵩張るものでも安心して持ち運べるわ!」
リセは優しく微笑み、最後にミリアへと促した。
「私はミリア、妖精です。『白昼夢魔法陣』で、対象を永遠に心地よい眠りに誘うことができます。他にも、いくつかの精神に干渉する魔法陣も扱えます。」
ミリアは静かに、しかし確信を持って言った。
レオンは、これから行う計画の概要を説明した。
「計画は、まずミリアの白昼夢でマスターたちを眠らせ、その隙にリセの布陣で彼らを完全に閉じ込める。時間の流れを止めるから、閉じ込められたとしても死ぬことはない。」
そして、少しばかり憂いを帯びた表情で続けた。
「今から、サクナとアルカという双子の【MACOK】を救出に向かう。だが、残念ながら、今のところ二人は僕たちのことを何も知らない。」
「その辺りは私たちに任せて!」
リセはレオンの手をそっと握り、安心させるように言った。
「二人の能力もまだ完全に把握できていない。油断せずに、十分に気を付けてくれ!」
レオンの言葉に、三人は力強く「了解!」と応えた。
四人が互いの手を重ね合わせると、その場から一瞬で姿が消え去った。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
目的の場所に到着すると、レオンは周囲を見渡し、冷静に判断を下した。
「みんなでいきなり押し掛けても、混乱を招くだろう。だから、僕とミリアでまず二人を説得しに行く。トリガーとリセは、念のため外を警戒していてくれ!」
「了解!」
トリガーが答えた。
「任せて!」
リセも頷き、二人は音もなく闇の中へと溶け込んでいった。
「じゃあ、行こう!」
レオンはミリアの小さな手を握り、サクナたちのいる部屋へと向かった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
二人は、目的の部屋の中に転移した。
「お前たち、誰だ!」
双子の片割れ、アルカが鋭い眼光で二人を睨みつけ、素早くサクナを背に庇うように立ち上がった。
「シッ…。静かに!」
ミリアは人差し指を自身の唇に当て、優しく注意を促した。
「僕たちは君たちの味方だ…。君たちと同じ、【MACOK】なんだ!」
レオンは両手を広げ、敵意がないことを示そうとした。
「味方!?そんな言葉、簡単に信じられるわけないだろ!」
アルカは依然として警戒を解こうとしない。その目は、獲物を捉える獣のように鋭い。
「待って、アルカ!」
もう一人の双子、サクナが訝しげな表情でレオンを見つめた瞬間、その瞳の奥に淡いピンク色の魔法陣がふわりと浮かび上がった。
「あれ……。効かない?男の人なのに……。」
サクナは自身の能力が通用しないことに、明らかに動揺の色を見せ始めた。
「怪しい。もしかして、私たちを殺しに来たのか?」
アルカはそう言い放つと同時に、手のひらに黒い光が集まり始めた。
「蛇鞭魔法陣!」
漆黒の鞭がうねりながら、レオンへと襲いかかった。
レオンは、その鞭の軌道を完全に捉え、紙一重でかわしながら、落ち着いた声で説明を試みた。
「ちょっと、落ち着いて話を聞いてくれ!」
そして、鞭が再び迫るや否や、いとも容易くそれを掴み取った。
「だから、話を!」
「なんで、サクナの魅了が効かないのよ?」
アルカは信じられないといった表情で、悔しそうに叫んだ。
その問いに答えたのはミリアだった。
「私の『無効化』スキルの効果よ。精神系の魔法は、私には一切通用しないの」
「マジか…。」
アルカは驚愕の表情を隠せない。
そして、覚悟を決めたように、アルカは静かに言った。
「分かったわ…。私の負けね…。殺しなさい!でも、お願いだから、サクナだけは助けて!」
そう言って、彼女は力なく頭を下げた。
「だから、さっきから言ってるだろ…。僕たちは君たちの味方だって…。」
レオンはアルカに近づき、優しくその肩に手を置いて起こした。
「本当なのね…?」
アルカは涙目でレオンを見上げた。
「ああ…。」
レオンは力強く頷いた。
その時、廊下から騒がしい足音と怒号が聞こえてきた。どうやら、先ほどのアルカの攻撃の音に気づいたヨイザクラの取り巻きたちが、部屋に近づいてきたようだ。
「くそ、バレたか!」
レオンは小さく舌打ちをした。
取り巻きたちが、勢いよく部屋のドアを叩き始めた。
「任せて!」
アルカが再び鞭を構えようとしたが、レオンはそれを手で制止した。
次の瞬間、
グキッ…、ドンドン……、グシャ………。
鈍い骨の折れる音、何かを叩きつけるような音、そして、肉が潰れるような生々しい音が連続して響いた。
レオンは、目にも止まらぬ速さで取り巻きたちを無力化してしまったのだ。
「本当に助けに来てくれたんですね!」
サクナの瞳にも、ようやく安堵と希望の光が灯った。
「お前、強いな…。」
アルカも、レオンの圧倒的な強さに思わず見惚れてしまった。
ミリアは、まだ混乱している様子の二人を優しくベッドに座らせると、これまでの経緯と、自分たちの目的を丁寧に説明し始めた。
その時だった。
部屋のドアが、信じられないほどの勢いで外側から吹っ飛んできた。
次回 敵か味方か!?~フィラルティアの白い影 ~
続きの気になった方は、
ぜひともブックマークをお願いいたします。
リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。
頑張って続きを書いちゃいます!