幻影の塔に挑む者たち
いつもの鼻を突く悪臭と、牢屋を叩く耳障りな金属音だけが鳴り響く。ここは、レオンが最も嫌悪する場所だった。
「メルギド博士。アイツらをいつ殺れるんですか?」
レオンの心は完全に……。
「そうです…。レオン、それでいいのです!」
メルギド博士は満足そうに、レオンを見下ろしていた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
町の朝は早かった。
「おはようございまーす!」
牛乳配達の小僧が声をかけながら、宿屋の主人に牛乳の入った籠を手渡していた。
ハーベルはその声に起こされ、少し不機嫌そうな表情を見せながらも、大あくびをしつつ起き上がる。
「ふぁーーー!おはようございます!」
「お客さん、早いね!」
「ああ、ちょっと起きちゃって…。」
宿屋の主人が声をかけてきた。
「ご主人。この辺りで買い取りをしてくれる店はあるかな?」
ハーベルが尋ねる。
「ああ、もちろんあるさ!」
主人が説明しようとすると、
「ああ、ちょっと待って!」
昨日、作っておいた町の地図を取り出した。
「なんだい…この細かい地図は……。」
主人は目を丸くしながら地図を食い入るように見ていた。
「どの辺ですか?」
「ああ、この辺りだな!」
ハーベルがその辺りに丸を書いた。
「ありがとう!」
「ああ、どういたしまして……。」
主人は少し呆気に取られている感じだった。
そのころ、他のメンバーも食堂へ降りてきた。
「朝食が済んだら、要らないアイテムの買い取りに行ってくるよ!」
ハーベルがそう言うと、
「私の分もお願いできるかしら?」
アクシアが机の上にいくつかのアイテムを並べた。
「ああ、いいよ!」
結局、ハーベルがみんなの分も売ってくることになった。
「ハーベル。オレもついていっていいか?」
「カザキさん。もちろんです。一緒にお願いします!」
ハーベルたちは、さっき教えてもらった店へ地図を見ながら歩いていた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「ここだな!すいませーーん!」
ハーベルが店の扉を開けた。
「おお、お客さん、早いね!」
「買い取りをお願いできますか?」
「もちろん…。ってモノはどこだい?」
店主は不思議そうに言った。
「ああ、ここだよ!」
ハーベルはアイテムを袋から台の上へ取り出した。
「はあ!?ど…どこから出てきたんだい…?」
店主は驚いて後ろにひっくり返った。
「婆さん、大丈夫か!」
カザキが店主を起こしてあげた。
「最近は、変なアイテムが多くてついていけないよ……。」
店主は愚痴をこぼす。
「ハハハ……変なアイテムって……。」
ハーベルが苦笑する。
「そう言えば、あんたたち。あの噂は聞いたかい?」
店主は慣れた手付きで鑑定をしながら話し始めた。
「噂ですか?」
ハーベルが興味深そうに聞いた。
「何でも、風の神殿のそのまた向こうに、大きな塔みたいな建物が現れたらしいよ!」
「ほお、塔ですか?」
ハーベルはさらに突っ込んで質問する。
「ああ、それが不思議でさ……。誰もその塔へ行けないらしいんだ…。」
「行けない?ってどういうことだよ…婆さん!」
カザキも気になってきた様子だった。
「歩きはもちろん。空を飛べる魔導師が上からでもたどり着けないらしいんだよ……。」
店主は鑑定を終えたようだった。
「上からでも?」
「不思議だな!?」
二人は顔を見合わせた。
「あいよ、買い取り代金だ!」
「婆さん、計算間違ってるだろう!多いぞ!」
カザキが驚いて半分返そうとする。
「いいや。その指輪のおかげさ!持っていきな!」
「指輪?」
カザキがハーベルのつけていた【ドラゴンヘッド】を見つめた。
「ああ、忘れてました…。カザキさん。これをつけていると、買い取りが2倍になるんですよ!」
「マジか…。」
「マジです!」
「うう…欲しい…。」
カザキは普通に羨ましそうだった。
「お婆さん、ありがとう!」
ハーベルたちはお礼を言いながら店を後にした。
「あれですね!」
「本当だ、昨日は気がつかなかったな…。」
「はい…。」
二人は遠くに見える霞がかった大きな塔を見て、興味をそそられていた。
「ちょっと、みんなで行ってみるか?」
カザキがそう言うと、
「そう来なくちゃ!」
ハーベルの顔が一気に明るくなり、冒険心に火をつけたようだった。
次回 シーズン5 【魔刻印者編】(逆襲)
【MACOK】~交錯する暗殺者たち~
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頑張って続きを書いちゃいます!