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転生医術師の魔法好きがこうじて神にまで上り詰めた件  作者: 吾妻 八雲
シーズン4 【聖域巡礼編】(第二幕)
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風の神殿の呪い:悪魔の影を追え!

ハーベルが急いで家へ戻ると、大きく息を切らしながら扉を開けた。


「ネル、大変だよ!」

息も絶え絶えに叫びながら、家のドアを勢いよく開ける。その衝撃で扉が軋み、大きな音が室内に響いた。


「どうしたの?ハーベル…。」

驚いたネルが、エプロン姿のまま駆け寄ってくる。彼女の表情には戸惑いと不安が滲んでいた。


「はあ、はあ、大変なんだよ!」

呼吸を整える間もなく、ハーベルは言葉を紡ごうとする。


「はい、水。」

ネルが慌てて水を汲み、ハーベルへと差し出した。


「はあ、あ、ありがとう…。」

ハーベルはそれを一気に飲み干すと、ようやく一息ついた。


「ハーベル、どうしたの?」

ネルの瞳が心配げに揺れる。


「ああ、カザキ先輩が、カザキ先輩が……。」

「ええ、カザキさん?」

ネルは首をかしげながら聞き返す。


「カザキ先輩が、何かに取り憑かれ人を襲っていたんだよ!」

ハーベルが大声で叫ぶ。その声に驚かされ、家の奥から次々と仲間たちが姿を現した。


「ハーベル、うるさいな!」

寝ぼけ眼のフレアが、頭をかきながら起きてくる。


「どうされたのですか?」

アクシアが眉を寄せ、冷静に状況を確認しようとする。


「高等部の先輩が、何かに取り憑かれて……。」

ハーベルは悔しそうに拳を握り締めると、勢いよく床を殴りつけた。


「ハーベル、深呼吸してゆっくり教えて!」

クラリッサが落ち着いた声で言いながら、ハーベルの肩に手を添えた。


「ふーー、ああ、ごめんよ…。」

ハーベルは大きく息を吐き、少し落ち着きを取り戻した。


「いいのですよ。」

「そうですよ!」

仲間たちが優しく声をかける。


「ハーベル、とりあえず、そのカザキさんと出会った場所へもう一度行ってみましょう!」

クラリッサが冷静な判断を下した。


「うん、ありがとう、クラリッサ…。」

ハーベルは彼女の言葉に頷くと、覚悟を決めるように背筋を伸ばした。


すぐに「零式」を発動し、仲間たちをさっきの場所へと移動させた。


⭐☆☆☆☆☆☆⭐


夜の帳が降りた森の中は、不気味な静寂に包まれていた。


「もう、誰も居ないわね…。」

ネルが辺りを見回しながら呟く。風に揺れる草木が、かすかな音を立てていた。


「お待ちになって、あちらから声が聞こえますわ!」

アクシアが鋭く指をさす。


その方向へ駆け寄ると、再びカザキが別の人たちを襲っているのが見えた。


「カザキ先輩!」

ハーベルが躊躇なく動き、斬られそうになっている人の間に飛び込む。その一撃を短剣で受け止めた。


「ああ、助かった…、ありがとう、ありがとう…。」

怯えた様子の男性が、腰を抜かして地面に座り込む。


「大丈夫ですか?」

クラリッサが優しく手を差し伸べ、その人を助け起こして逃がす。


「くそ、またお前か!?今度こそ、殺す!」

カザキの目には狂気が宿り、容赦ない剣撃がハーベルに襲いかかる。


「今の俺は、そう簡単にはやられませんよ!」

ハーベルは強がりを言いながら、その激しい剣をなんとか受け流す。


「クラリッサ、何か分かる?」

ネルが涙を堪えながら尋ねる。


「あの、モヤが!物凄い闇の力を感じます……。」

クラリッサの声には、かすかな震えが混じっていた。


「ハーベル、神聖魔法ならなんとかなるかも!」

フレアが叫ぶ。


「分かった。神聖:応用魔法6!ディバイン・パージ!」

ハーベルが詠唱すると、カザキの背後に光輝くオーラを纏った女神が現れる。その神聖な光が優しく包み込み、カザキの身体を浄化し始めた。


闇に満ちたモヤが苦しみながらもがく。そして次第にその姿が消えていった。


「カザキ先輩!」

ぐったりして倒れかかるカザキを、ハーベルがしっかりと抱き止める。


「フラン、回復をお願い!」

「任せておいて!」

フランが静かに歩み寄り、祈るように目を閉じた。その瞬間、美しい光の粒がカザキの身体を包み込む。


やがてカザキの顔色がみるみる回復し、力を取り戻していった。


「…あれ。オレは何をしていたんだ?」

カザキは困惑したように周囲を見回す。


「カザキさん!」

ネルが飛びついた。


「ええ、ネル?はあ?ハーベル!?」

混乱するカザキに、ハーベルは安心したような笑顔を見せる。


「カザキ先輩が、やっと正気に戻った!」

ハーベルがガッツポーズをして歓喜の声を上げる。


「正気!?ハーベル、どういうことだ?」

カザキが鋭く詰め寄った。


「分かりましたから、放してください!」

ハーベルはカザキの腕をしっかり掴み、彼を落ち着かせる。


「すまん……。」

カザキは悔しげに視線を落としながら、ゆっくりと手を放した。


ハーベルは、これまでの出来事を丁寧に語り始める。


「オレは…何てことを……。ハーベル、すまん…。」

カザキは拳を握り、震えながら地面を殴りつけた。


カザキの話によると、彼のパーティーは風の神殿での戦闘中、突如として現れた悪魔に襲われたという。そして、前衛にいたカザキだけが呪われ、そのまま意識を乗っ取られてしまったらしい。


「じゃあ、さっきの四人はパーティーメンバーですか?」

「ああ…どうしよう……。」

「一応、俺が町まで送りましたが…。」

「そうか、ありがとう…。」

カザキはしばらく沈黙し、深い絶望を抱えているようだった。


「ハーベル、ここはあまり良くない気配がします。移動して話しましょう!」

クラリッサが鋭い眼差しで提案する。


「分かった。ありがとう、クラリッサ!」

ハーベルは「零式」を発動し、仲間たちを町へと移動させた。


⭐☆☆☆☆☆☆⭐


その瞬間、不気味な声が響く。


「おや…気がつかれましたか……。まあいいでしょう!次は、ありませんよ……。フフフ…。」


闇の奥から、不吉な気配が漂っていた。

次回 闇に囚われた戦士と仲間の絆

続きの気になった方は、

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リアクションと⭐5もつけていただけると幸いです。

頑張って続きを書いちゃいます!

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