封印の謎:壺の中の囚われし魂
「封印ってどうやって解くのかしらね、クラリッサ?」
リーフィアがクラリッサの知識を求めて尋ねた。
「そうですね…よくあるのは、封印した本人を倒すとかですかね?」
「でも、その悪魔もいないし…。」
ハーベルは腕を組みながら少し考え込んだ後、ふと思いついたように顔を上げた。
「ああ、師匠、この間の人形ってありますか?」
「たしか、この辺に…っと、はいどうぞ!」
リーフィアが袋の中を漁り、ぬいぐるみを取り出した。
「ありがとうございます。猫とブタさんか!」
「ハーベル…!」
「嘘です。ふっくらした猫ですね…。」
クラリッサは苦笑しながら問いかける。
「それはいいから、そこからどうするの?」
「クラリッサ、【邪神の杖】の『転心』スキルってあっただろ!」
「ああ、一時的に魂を移動させるっていうやつね!」
「そう、それで、この人形に魂を移動させて、『蘇生』スキルでネクロマンシーを使うとどうなると思う?」
「なるほど、ゴーレムね!」
クラリッサが手をパシッと叩いた。
「そう、ゴーレムができないか試したかったんだよ!」
ハーベルの好奇心が止まらない様子だ。
「フラン、ノアール、今の話は分かったかい?」
「うん、その人形に僕たちの魂を移動させるんだろ?」
二人は不安そうに答える。
「そう。でも初めてやるから、必ず成功するとは言えない…。」
「それも分かってる…。どっちにしてもこのまま壺でいてもどうしようもないからさ…。」
二人は覚悟を決めたようにハーベルに願いを託した。
「分かった!」
ハーベルは、そう言うと手際よく準備を始めた。
クラリッサが【邪神の杖】を構える。
「クラリッサ、お願い!」
ハーベルが合図を出した。
「転心!」
クラリッサがスキルを発動すると、黒い壺からノアールの魂がスーッと立ち上ぼり、黒いスラッとした猫の人形に移動する。
「今よ!」
「了解!蘇生!」
ハーベルがスキルを発動すると、黒い猫の人形が息を吹き返したようにゆっくりと立ち上がった。まるで生きているかのように、のびをしている。
「成功だ!」
「よし、フランも行くわよ!」
クラリッサとハーベルが再びスキルを発動させ、白くてふっくらした猫の人形へと魂を移動させた。
「ああ、生き返る!」
「ハーベルありがとう!」
ノアールがハーベルの肩に飛び乗り、顔をすり寄せて喜びを表現している。
「ああ、よかったな!」
ハーベルはノアールの首を優しく撫でた。
フランは、リーフィアの腕のなかで安心したように丸くなって寝てしまった。
すると―― 。
この階層の条件をクリアしたようで、台座が崩れ落ち、代わりに宝箱が現れた。
「クラリッサ、開けてみて!」
宝箱の中には、二つのベルが入っていた。
【ゴールドベル】
一回鳴らすと気配を消し、二回鳴らすと完全に姿を消す。ノアールに着けてあげた。
【シルバーベル】
一回鳴らすと心に呼びかけ、二回鳴らすと心を乗っ取ることができる。フランに着けてあげた。
「フラン、ノアール、一緒に来るかい?」
「ああ、僕はハーベルが気に入ったから手伝ってやるよ!」
ノアールがハーベルの肩ですんっとして佇んでいる。
「私は、リーフィアの膝が好き!」
「一緒に行こ!」
リーフィアがフランを抱き上げると、喉元を優しく撫でてあげた。
一件落着すると、
「零式!」
ハーベルが空間に大きな亀裂を作り、みんなを家へと招待した。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「ハーベル、今のは?」
フレアが不思議そうに顔を覗き込む。
「これも神器だよ。フレアは、どこに泊まっているの?」
ハーベルが好奇心で尋ねる。
「そりゃ、野宿でしょ!」
「おお、ワイルドだね~!」
「でも、一緒に家に泊まるでしょ?」
クラリッサがフレアの腕にしがみついた。
「ええ、いいの?」
「もちろん!」
ハーベルは満面の笑みを浮かべている。
「俺は、フレアの部屋の準備をするので、師匠たちは食事の準備とテルミットもお願いできますか?」
「分かったわ、任せておいて!」
「その間に、みんなはお風呂にでも入ってらっしゃい!」
リーフィアが料理の下準備を始めながら促す。
「やったー!」
「ええ、お風呂に入れるのか?」
フレアはビックリして目を丸くしている。
「うおー、こんなデカイ風呂初めてだ!」
フレアが喜んで一番乗りで飛び込む。
「こら、ちゃんと体を洗いなさい!」
アクシアがフレアを湯船から連れ出して説教を始めた。
「ごめん…嬉しくて…。」
「気持ちは分かりますが…。」
アクシアはしょんぼりするフレアの頭を優しくポンポンと叩いた。
「ハハハ…。」
「フフフ…。」
「フレアさんは、これから実家に戻るの?」
クラリッサが尋ねる。
「私も修行が目的だから、できればみんなと一緒に行きたいな…。」
「ハーベルなら、笑って承諾していただけますわ!」
「私もそう思う!」
「そっか、ありがとう!」
三人は女子会気分で楽しくお風呂を満喫してた。
「部屋の増築ってそんなにすぐできるものなの?」
「ハーベルならすぐだよ!」
「マジか…スゴっ!」
フレアは感心して首を小刻みに振る。
風呂からあがると、美味しそうな食事が用意されていた。
「はい、テルミットも渡しておくわ!」
リーフィアが微笑みながらフレアに手渡した。
「何ですか?」
「ああ、これはね…。」
ハーベルが楽しそうに一通りの説明を済ませる。
「この飯、うまっ!」
フレアが美味しそうに頬張りながら叫んだ。
その後、今後の予定を話し合い、フレアも同行することになり、次の目的地は土の神殿へと決まった。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
すべての様子を「隠蔽」スキルを使いながら監視していたレオンが家の外にいた。
「くそ、ハーベルばかり…仲間が増えていく…。」
舌打ちをして地面を蹴り飛ばす。
「なんで僕は…ああ、イライラする…。」
レオンはひとりごとを呟きながら、スーッと消えていった。
次回 森の囁き:湖畔の神秘と新たな仲間
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