深淵の守護者:紅き巨獣との死闘
みんなの家へ戻り、それぞれが次の旅の準備を始めていた。
「次は、炎の神殿でしょうか。」
アクシアが質問した。
「そうですね!」
「アクシアがいれば、百人力だね!」
ハーベルがニコニコしながら言う。
「アクシアは、ハーベルの絨毯に乗せてもらいなさい。」
「ありがとうございます。ハーベルは、興味深いアイテムをたくさんお持ちですね。」
「へへへ…アクシアの部屋も用意したからね!」
「まあ、最高ですわ!」
「そういえば、頼んでおいた人形ってできてるかな。」
「ええ、できてるわ!」
「私もできたよ!」
「いろいろあって、渡すの忘れてたわ。はいどうぞ!」
クラリッサが可愛い猫のぬいぐるみを渡してくれた。
「おお、可愛いな!」
ハーベルは気に入ったようだった。
「ええっと、師匠の人形はブタさんですか?」
「おい…ネコに決まってるでしょ…。」
「あっ、ネコだね…猫だ…猫だ…。」
ハーベルは完全にごまかした。
「ハーベル!」
リーフィアがふざけて拳を振り上げると、
「師匠、ごめんなさい…!」
ハーベルが頭を庇うような仕草をする。
「楽しいパーティーですね!」
アクシアは嬉しそうに微笑んでその光景を眺めていた。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
ハーベルの一行は、次の目的地、マルーレ火山地帯の炎の神殿へと足を運んでいた。この辺りは、溶岩でできた岩だらけの荒廃した土地で、近寄る人間はほとんどいなかった。
「それにしても暑いわね…。」
「もう火山地帯に入っているからね…。」
「師匠!なにか涼しくなる魔道具とかありませんか?」
「…あら、そんな都合のいいもの、あったわ!」
「あるんかい…。」
クラリッサが軽快にツッコむ!
「『クーラ』といって、背中に着けておくと水と風の複合魔法で自動で体温を調節してくれるのよ。」
「うーん、気持ちいい!師匠が何言ってるかはまったく理解できないけど…。」
クラリッサが嬉しそうに言った。
「私も分かりません…でも涼しいですわ!」
アクシアも気持ち良さそうに言った。
「あれが、炎の神殿ね!」
そこには、燃え上がるような真紅の石で組み上げられた、立派な神殿がそびえていた。
「うわ、今までの神殿と違って、立派で綺麗に保たれているのですね!」
「大きいですね!」
ハーベルが神殿を見上げながら言った。
「さあ、準備ができたら早速潜りましょう!」
リーフィアがみんなに気合いを入れる。
「アクシアがいれば、炎の神殿は楽勝だね!」
「お任せください!」
アクシアが両手をぎゅっと握りしめる。
⭐☆☆☆☆☆☆⭐
「もう、15階層のボスですね!」
「このマークは、鳥ですかね?」
ハーベルが小首をかしげながらみんなに尋ねた。
「おそらく…。」
リーフィアがボス部屋の扉を開ける。
「凄い数のインフェルノピジョンですね…。」
クラリッサが嫌そうな顔で見上げていた。
「アクシア、弓を試してみたら?」
ハーベルが提案してきた。
「はい!」
アクシアは、【神器:深海弓・ディープブルー】を構えると、弓を中心に水しぶきが飛び散り、凄まじい水流の矢が現れた。
魔力を込めて矢を打ち放つと、無数の水流の矢が分裂し、インフェルノピジョン目掛けて飛んでいく。
「的中」スキルのおかげで、矢があらゆる方向へと向きを変え、的確にインフェルノピジョンを一羽ずつ打ち落としていった。
「なんだ、今の矢は!?」
ハーベルがその凄まじい光景に驚きを隠せなかった。
「いやいや、スゴすぎですわ!」
実は、射ったアクシア本人が一番驚いていた。
「このまま25階層まで行くわよ!」
「分かりました!」
まだまだ、みんなのやる気は十分だった。
「これって、クジラ?」
ハーベルがまた首をかしげた。
「はあ、こんな火山でクジラ?」
「ちょっと、分かりませんね…。」
皆も不思議そうに見つめる。
「まあ、いいから行くわよ!」
リーフィアが扉を開ける。
そこには、燃え上がる溶岩の海が広がっていた。
その上を、大きく紅のダイヤを背中に纏ったクジラが悠々と泳いでいる。
「こんなボス部屋、見たことない…。」
「いやいや、どうやって戦うの?」
クラリッサは広大なステージと灼熱の光景に困惑している。
レッドダイヤモンドホエールがこちらへ視線を向けた瞬間、背中から溶岩を潮のように吹き飛ばした。
「火山かよ…。」
思わずハーベルがツッコんだ。
レッドダイヤモンドホエールが急にスピードをあげ、突進してくる。
ドシャーーーン!
「危ない!」
ハーベルが瞬間移動で三人をなんとか抱きかかえて回避させた。
「これ、まともに食らったら一貫の終わりね…。」
リーフィアが冷や汗を拭きながら呟く。
「これでも、お食らいになって!」
アクシアが【深海弓・ディープブルー】を構え、狙いを定める。
無数の水流の矢がレッドダイヤモンドホエール目掛けて放たれる。
しかし、表面のダイヤモンドに阻まれ、まったくの無傷だった。
「まさか、水属性攻撃が効かない?」
「マジか…。」
ハーベルは口を抑えて考え込んだ。
「ダイヤか…確か900度くらいあれば発火しますよね?」
「そうなの?まあ、炭素だから燃えるとは思うけど…。」
リーフィアも首をかしげる。
「さすがに溶岩に落とせば…。」
「そんなことできるの?あの巨体よ…。」
クラリッサにはまったく考えつかなかった。
また、レッドダイヤモンドホエールが突進攻撃をしかけてきた。
ドガガ、ガシャーーーン!
「もう、鬱陶しいなあ!」
ハーベルが全員を移動させながら叫ぶ。
「アイツ、崩した溶岩を食ってるぞ…。」
「アクシア、『満月』スキルで占ってみたら?」
クラリッサが咄嗟に提案する。
「なるほど!」
【新月の指輪】がキラリと光ると、頭のなかに予言のように流れ込んでくる。
•••••••••
外は大火事、中は大水!
•••••••••
アクシアは呟く。
「外は大火事、中は大水………。」
「どういう意味ですか?」
「クイズみたいだね…。」
ハーベルが楽しそうに考え込む。
「オッケー!ちょっと、行ってきます!」
急にハーベルはそう言って、レッドダイヤモンドホエールの目の前へ移動し、静止した。
レッドダイヤモンドホエールは、ハーベルを大きく口を開けてかぶりつこうとする。
「水:第7上級魔法!ウォーター・ドラゴン!」
ハーベルが詠唱すると、シックスセンスの切っ先から激しい水流と共に、凄まじい水の龍がレッドダイヤモンドホエールの口の中目掛けて突進していった。
口の中へとどんどん水が溢れていき、レッドダイヤモンドホエールはガブガブと飲み続けるしかなかった。
「土:第8上級魔法!ボルダーフォール・テンペスト!」
ハーベルが叫ぶと、水で腹がパンパンになって動きがとれないレッドダイヤモンドホエールの背中へ、巨石が滝のように降り注いだ。
その重さに耐え切れなくなったレッドダイヤモンドホエールは、下の溶岩へと真っ逆さまに落ちていった。
すると表面のダイヤモンドが高熱に曝され続け、長時間の熱で発火し始めた。
本体ごと炎に包まれ、そのまま燃え尽きてしまった。
「やった!やっと倒せた…。」
「ハーベル、凄いわね!」
リーフィアが賞賛の声をあげた。
「宝箱、開けてください!」
「了解!」
クラリッサが嬉しそうに笑いながら、早速、宝箱を開けてみる。
【紅の瞳】
【レッドダイヤモンド】
【紅の瞳】
真っ赤な眼のような形をした魔昌石。炎属性アップと「怒号」スキルにより、一時的に攻撃力が上昇する。
【レッドダイヤモンド】
希少な魔昌石のひとつで非常に高価。
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ハーベル ♂ 【医術師】【ネクロマンサー見習い】
種族:ヒューマン
武器:【シックスセンス】【シャークバイト】
魔法属性:全属性
固有スキル:「統合」
「破壊」「精製」「合成」「構築」「解析」「分解」
獲得スキル:「設定」「把握」「毒耐性」「召喚」「魔法陣」「ライブラリー」「分離」「蘇生」「切断」「転写」「怒号」
光:上級魔法9 神聖:応用魔法6 薬剤:応用魔法4
闇:上級魔法8 虚空:応用魔法4
炎:上級魔法8 黒炎:応用魔法5
水:上級魔法9
風:上級魔法9 雷鳴:上級魔法7
土:上級魔法9
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「この辺りから、敵が強くなるから気をつけて!」
ハーベルがみんなに注意を促すように声をかける。
「はい!」
「分かりましたわ!」
「あらあら、しっかりしてきたわね!」
その光景を見ながら、リーフィアも満足そうに微笑んでいた。
次回 炎の神殿と孤独な戦士
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頑張って続きを書いちゃいます!