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ケースⅡ 中根真理恵 3章

………それから1週間亜久田は中根の耳元で言葉を紡ぎ続けた。

1日目あのやり取りの後中根は同意書にサインをし、一錠の薬を服用した。その後は中根が寝静まるまで言葉を紡ぎ続けた。

2日目中根は嫌々職場へと向かっていった。亜久田は中根の希望で自宅近くのファミレスで時間を潰していた。中根からは1万円札を渡されていてお釣りは亜久田に渡すと言う。亜久田はドリンクバーの紅茶を飲みながら中根の帰宅時間までオー・ヘンリーの小説を読みながら時間を潰そうとした。しかし中根は11時くらいにファミレスにやって来たのだ。

「ねぇーあっくん聞いてよーあのハゲ課長がまた私をイジメてきてたさ、もう腹立ったから熱いお茶を頭の上から浴びせて会社飛び出してきた」今朝から中根は亜久田の事をあっくんと呼んでくる。「もうあんな会社に戻ってやるものですか。まあ私はあっくんの美しい声に包まれながら死ぬんだけどねー」中根はなんだか嬉しそうにそう話していた。亜久田は罪悪感を忘れ一種の充実感すら感じていた。そこから期限の日まではあっという間だった。どこかの発情期のオスザルと比べるとなんと扱い易いクライアントか。まあ、言葉を紡ぎ続けるのも楽ではないのだが…

そして期限の時間になったこれで中根が眠って彼らに引き渡せばと思った時計の針が12時になると中根が呟く「…私達ずっと一緒だよね…」おかしい薬が効くはずだ。亜久田は狼狽えた。確かにあの時薬は飲ませた。薬が効かない特殊体質いやそれはありえない。過去の臨床試験で全ての人間が測ったように1週間後に気を失ったとある。そして亜久田は1人の博士に電話をした。

「亜久田、何の用だ。」電話の相手が不機嫌そうに亜久田に尋ねた。「栗山博士が開発したあの薬が効かないクライアントがいるんです。私見を伺いたいのです。」亜久田は栗山博士に丁寧に尋ねた。「亜久田お前が飲ませたという事はそういう事なんだろう?それならお前らの組織の連中で強引に連れ出せば良い。手術室でも眠らなかったら私が行けばよい。」そういうと電話は切られた。「中根さん、いや、マリちゃん。

家の前に車が停まっているんだ。一緒に来てくれるかい?」中根はゆっくり頷くと手を繋いで車へと向かっていったのだった。

………車が研究所に着き亜久田と中根は離れる事となった。亜久田が後に聞いた話では亜久田と離れてすぐ仲間が中根に即効性の麻酔薬を飲ませるとあっさり眠ったという。栗山博士に言わせると愛の力で麻酔薬の薬を無力化したらしい。「そんな馬鹿な…」亜久田はそう呟くと今日もまた人生に絶望している人の元へ行くのであった。

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