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ケースⅠ 金田竜也 2章

………「私は亜久田と申します。昨今自殺をする人がたくさんいるでしょう。そんな人達に幸せな一時(ひととき)を過ごしてもらい安らかに死んでもらう。そんな商売をしています。」扉を閉めるや否や美青年は急に漫画の様な事を言い出した。

「そ、そんな事より、あ、部屋に上がって帽子を脱いでもっとゆっくり、は、話を聞かせて下さい。お、お茶でも入れますから」金田は胡散臭い話に興味は無かったが亜久田と名乗る美青年の顔を見てもっと声を聞きたいと思ったのだ。「それではお言葉に甘えて…失礼致します。」

そう言って靴を脱いで部屋に上がった亜久田をみて驚いた。身長170㎝位だと思っていたのだがそれ以上低かったのだ。ふと彼が履いていた靴をみると初夏にもかかわらずロングブーツだったのだ。「私はどこに座ればよいのですか?」脱いだ靴を眺めていた金田の耳に亜久田の美しい声が入ってくる。「あ、あ、ちゃぶ台のテキトーな所に、す、座って下さい。」そして慌てて冷蔵庫の中から麦茶のペットボトルを取り出し透明のグラスにお茶を注いでちゃぶ台に持っていた。「と、ところで先ほどの話の続きを聞かせて下さい。」金田は緊張しながら亜久田に話しかけた。話の内容などどうでもよいが亜久田の声が早く聞きたいのだ。亜久田はハットを脱いで自分の隣に静かに置いた。想像通り美しい顔立ちだった。「私は精神的、身体的、経済的に悩み苦しみ自殺を考えている方々に一時(ひととき)の幸せを提供して安らかに死んでもらうそんなサービスを提供しています。」さっきとほとんど変わらない説明に金田は一瞬眉をひそめた。

確かに俺は経済的に苦しんでいるでも自殺をしようとかそんな発想は1ミリも無かった。そんな自分にこの話をする意味が分からないし、そもそも言っている内容も意味が分からなかった。そんな金田の心を見透かした様に亜久田は言葉を繋いだ。「私はクライアントの方が望む事最長1週間提供致します。そして1週間後表向きは心臓発作として亡くなって頂きます。」

「表向き?」金田は思わず問い返す。

「そうですあくまで表向きです。実は私悪魔なんです。悪魔だから新鮮な魂が必要なのです。」

金田は内心呆れ返っていた。こんな馬鹿馬鹿しい話があるもんかと思っていた。どうやら俺はまだ正常な判断が出来るらしい。そんな金田の心をまたも見透かし亜久田は言葉を紡いだ。

「金田さんはまだ信頼していない様ですが私はなんでもお見通しなんですよ。」瞬間金田はギョッとした。なぜなら亜久田に名前を名乗っていないにも関わらず名前を知っていたからだ。

「ようやく私の力に気付いた様ですね。何でも1つ願いを叶えましょう。あなたの魂と引き換えにね。」亜久田のこの言葉に金田は思わず反論した。「お、お、俺は自殺したいと思った事なんて一回もないだから安らかに死のうとか、よ、余計なお世話なんだよ。」金田はしっかり自分の考えを亜久田に言えた。「女の子に借金してまで貢いで振られて、鬱病になった人間がよくそんな強がりが言えるね。もしかして金田さんの主治医って金さえ払えば診断書書いてくれるんですか?」そして亜久田は微笑みながら言葉を続けた「ほ・ん・と・う・は、同僚の方に彼女さんの事自慢してたんでしょう?そしてようやくお泊まりデートだって自慢してたんでしょう?

で、彼女さんに逃げられたから会社に行きたくなかっただから金さえ払えば診断書でっち上げてくれる精神科医の所行ったんでしょう?全部

お・み・と・お・し。」

敬語からウザったい女の子の様な喋り方に急に変わりながら金田の本性を当てられ俯くしかなかった。

「さあ、選んでよ。生きるか死ぬか。幸せか不幸かどっちを選ぶ?」亜久田は微笑みながら金田に問いかけた。金田は震えながら答えた。

「死んでもいいです…幸せを選びます。」

「あ、そ。で、金田さんの望みって何?」

「亜久田さんと付き合いたいです。1週間だけでも良いので、死んでも良いので。」

亜久田の顔に一切の変化は無かった

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