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ケースⅦ 河口恵一 1章 (2人だけののワンマンライブ)

ーーー令和5年の自殺者21,818人。自ら命を絶つ者が後を絶たない中1人の悪魔が取り引きを持ち掛けて自殺を食い止める。そんな物語。

………河口恵一は今日も駅前で1人寂しく歌を歌っていた。そんな歌声に対して誰もが通り過ぎていた。

(はぁ…今日も誰も投げ銭してくれないか…)

河口は心の中でそう思いながらも歌う事はやめなかった。結局この日誰1人として河口に投げ銭をする者はいなかった。

河口は幼い頃から歌う事や楽器を演奏する事が好きだった。中学校時代は男子でただ1人吹奏楽部に所属するほどの折り紙つきだ。

そんな河口には大きな夢があった。それは武道館でワンマンライブをする事だった。本当は中学時代からバンド活動をしたかったが中学校には軽音部が無かった事もあってまずは吹奏楽部で音楽の基礎を身につける事にしたのだ。

そして高校受験は軽音部のある高校に進学する事を決めておりわざわざ学力の劣る私立の高校に進学する事を決めたのだ。両親はそんな河口のワガママに対して最初は普通の高校に進学する事を強く勧めたが最終的に河口の熱意に押された格好となった。

そしてその高校の軽音部で相棒となると男と出会う事になる。その男の名前は今泉。河口と同学年だった。

河口と音楽の趣味が合致していたのはもちろん、演奏の腕もピカイチで歌も上手かった。

そんな今泉に対して先輩や同級生問わずたくさんの人間が一緒に組もうと誘ったが今泉は河口と組む事を選んだ。

河口は音楽に対するこだわりが大変強く河口のこだわりに応えられる人間は今泉以外にいなく結果的に2人でバンドを組む事になった。

2人の音楽に対する情熱は本物で1年生でありながらその年の文化祭でのライブでは1番の喝采を受けた。

そして1年生の2月今泉の地元の伝手で用意したサポートメンバーと共にライブハウスで初めて学校以外の場所でライブを行った。そこでもかなりの人気を集めたが学校にバレて最終的にバンド活動を休止するか退学かの2択を迫られた。

河口は当初バンド活動を休止して楽器の練習をしながら高校卒業後にデビューしようと思っていた。

しかし今泉は違った。今泉はアルバイトと定時制の高校を掛け持ちしながらバンド活動を続けろうとしていた。

今泉からは「ケイが高校卒業するまで待ってる。」と言われたが相棒がそこまで覚悟を決めているならと河口は高校を中退して今泉と共にバンド活動を続ける事を決意した。

両親や学校の教師から猛烈に反対されて家を勘当されたがそれでも2人で武道館でやるとそう決めていた。

ただ現実はそう甘くなかった。結局3年間泣かず飛ばすであっという間に成人の歳となった。

そして今泉から解散を持ちかけられたのは去年の秋だった。

戸惑いもあったし腹立たしさもあった。だけど今泉が泣きながら「もうメロディが浮かばないだ…」その一言とその顔を見た時もう限界なんだと河口は悟った。

それから河口は昼間は倉庫のアルバイトをしながら1人でバンド活動を続けた。

もう一度今泉が立ち直れた時に帰ってくる場所を守る為に…

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