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ケースⅥ 清田直道 3章(極・ドルオタ)

………こうして正式に同意書にサインをして薬を手渡した。栗山博士が新たに研究してこの薬は飲むと6時間後に気を失うという薬だ。今まで使っていた1週間後に気を失うそんな遅効性の薬を改造してやがては自由自在に気を失う時間をコントロールしようとしているらしい。

亜久田が清田に接触するつもりは無かった。

元々リストには上がってはいたが借金の額的に清田がその気になって働けば返済出来る額だったので今後は借金取りを使って清田を働かせる方針で行こうと考えていたのだが東堂の卒業公演に向けて動いていた中で「新宿メモリーズ」が卒業公演もせず解散するという話を耳にしたのだ。そして清田がそのアイドルの追っかけである事、そしてこのアイドルが居なくなれば生きる気力を失う可能性が高いと資料を見て判断した亜久田は「新宿メモリーズ」の卒業公演を餌に清田を釣って臓器を抜いて売り捌こうと判断したのだ。

(俺もすっかり組織に染まったな)そんな風に自虐しながらも部下に命じて着々と準備を進めていった。

「新宿メモリーズ」のメンバーは卒業公演に関してのギャラで大いに揉めた。亜久田に言わせると事務所からも何もしてもらえない石ころ以下のアイドルに卒業公演をやらせてあげたという感情なのだが彼女達は違うらしい。仕方が無いので彼女たちの希望する額をギャラとして支払った。彼女達のギャラに加え会場の使用料や設営費も全て亜久田達の組織持ちだ。この事情は彼女達は知っているのか、それとも知った上でコレだけの金額を要求しているのかどちらにしてもコイツらよりも東堂の方がよっぽど良かったなと亜久田は思っていた。

結局公式アカウントで告知した事もあり卒業公演当日はそれなりにお客さんが入った。

そして卒業公演が終わり清田の元は向かうと清田は既に気を失っていた。

恐らくあの薬を自宅で服用してから会場まで来たと思うがそれにしては早い様な…

もしかしてライブで興奮したからなのかな?それともこの薬は結局時間をコントロール出来ない失敗品だったのか。まあどちらにしても後は清田を研究所に運び込んで臓器を抜いて、後は交通事故と偽装するだけだな…

………先日行ったサクラまみれの東堂のパフォーマンスの方がよっぽど良かったと亜久田は思っていた。

確かに容姿は東堂の方が整形を繰り返した事もあって不自然だし歌もダンスもコイツらの方が上だ。

ただコイツらの纏っている雰囲気はファンを馬鹿にしているようにみえてくるのだ。曲間のマイクパフォーマンスしかり、歌っている時の表情しかりだ。

コイツらに金を払い更には人生すらも払おうとするヤツがいると思うとゾッとした。

「あの、亜久田さん…?もうそろそろコート着るのやめませんか?」亜久田の後輩が話しかけてきた。

「俺は肌を絶対に露出したくないんだ。だから一年中コートを着るんだ。」そう亜久田は後輩の申し出を斬った。しかし後輩は怯むことは無かった。

「そうは言ってもこのままじゃ悪目立ちしますよ。

契約にも影響与えるかも…ちゃんと夏でも着れる長袖の服ありますから今度一緒に探しに行きましょう。」

他の組織のメンバーからは恐れられていた亜久田に対して物怖じせずに話しかけてくるコイツは何者なんだ?

亜久田はそんな事を思いながらもクソみたいな公演を目線を移した。そして一言。

「今度の日曜日は今の所用事が無いからその日にしよう。」

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