ケースⅣ 田代良輔 3章
………底辺な動画投稿者のやる事はよく分からないな。そんな風に思いながら亜久田は約束の日を待っていた。あの後同意書にサインを貰い例の薬を飲ませてその場に10万円を置いてきた。毎回田代の為に宅配ピザを注文するのもめんどくさいのでお釣りは田代にやると言って10万円を置いてきた。もっとも田代は1週間が死ぬのだが…それから亜久田は趣味の読書をしながら19時から田代の生配信を見るのが日課になった。
正直興味のかけらも無いがクライアントが命を賭けているのだからその配信を見るのは人としての道理だと亜久田が思ったからだ。
配信を見始めると同接数というのが出ていた。どうやらこの配信を見ている人数がリアルタイムで見れるようだ。その同接数は1人となっていた。
おいまさか俺1人しか見てないのか。亜久田は内心バカバカしくなった。
…それから毎晩田代の配信は続いたが視聴者数は悲惨なものだった。平均視聴者は亜久田ただ1人。たまに2人になる事もあるが5分くらいで退出する有様だった。理由は単純でこの田代という男喋りが全然面白くないのだ。しかもゲームは下手くそで、その上ピザをクチャクチャ音を立てて食べながら平均で配信しているのだ。流石の亜久田も気分が悪くなった。それでもあと少しでタイムアップだ。スマホの画面の中ではよく分からないRPGのゲーム画面で操作したらキャラクターは挙動不審な動きを繰り返している。RPGゲームのBGMが流れ続ける中田代の声が聞こえてきた。「ここまでご視聴ありがとうございました。俺にはもうすぐ迎えが来ます。あーこのゲームクリアしたかったなぁ。
このゲームのクリアは視聴者の君に任せたよ!」おい田代その視聴者っていうのは俺1人だけなんだよ。
俺はこんなゲームやらないよ。
なあ田代お前これで良かったのか?
………0時40分組織の仲間から無事田代を回収して研究所に運び込んだという電話を貰った。今回田代の家を予め仲間に伝えていたので亜久田は田代の家まで出向く事はなかった。
組織の人間が裏の人脈を駆使してお金に余裕のない人間をリストアップして俺はそんな人間も言葉巧みに契約する。俺はこの仕事をやる前は話を聞いてもらえず仕事にならないと思っていたがどうやら世の中死にたい人間が思ったより多いようで契約が思った以上にすんなりまとまる。このおかげで組織が儲かり、長生きしたい国内外の金持ちどもは健康な臓器を手に入れて寿命を延ばす。そして死にたい連中は最後に1週間自分の望みを叶えて安らかに死ねる。みんな幸せなはずなのに亜久田の心はなぜか満たされてなかった。ここ最近吸い始めたタバコに火を付けて亜久田は呟いた「俺は悪魔だ。」タバコの煙と自分を悪魔だと信じ込む事で心を満たそうとしたがタバコの煙は心ではなく肺へと入っていき亜久田は思い切りむせた。




