ケースⅣ 田代良輔 1章
ーーー令和5年の自殺者21,818人。自ら命を絶つ者が後を絶たない中1人の悪魔が取り引きを持ち掛けて自殺を食い止める。そんな物語。
………「…はいという訳で今日の配信を終わります。長い時間お付き合い頂きありがとうございました!」そういって田代は動画配信を終わらせた。動画投稿サイトでゲームに関する動画や生配信をするようになってから1年が経つが田代は燻り続けていた。
底辺と呼ばれる動画投稿者と比べると自分が出す動画の質はそれなりに高いと田代は自負している。また再生数も数百回再生をコンスタントに記録しているし好意的なコメントもチラホラ見かけている。
ただ動画投稿で金を稼いだ経験は無く日雇いバイトと親からの仕送りで食い繋いでいる日々だ。
「あーあ明日はサラ金の返済日か…今から次の日雇いのバイト探すか。」田代はそう呟くとスマホで検索しようとした次の瞬間。ピーンポーン。呼び鈴がなった。田代は瞬時に隣人が怒鳴り込んで来たと思った。
以前ゲーム配信の際にコメントが来てテンションが上がってしまいしばらく大きな声で話していたら隣人からうるさいと苦情を入れられたのである。
今日はコメントが無く静かにゲーム配信してたのにまた苦情を入れられるなんて、もう配信は辞めて動画投稿だけにしようとぼんやり考えながら玄関を開けた。
玄関先には見覚えのない青年が立っていた。
ハットを深く被り季節外れのロングコートに身を包んだ青年が口を開いた。
「あなた人生に絶望していますね…良い話があるから中に入れて下さい。」配信終わりの上に明日生きていく為にバイトを探さないといけない立場にも関わらずその美しい声を聞いた瞬間に彼を追い返してはならないと田代は強く思った。
「…汚い部屋ですがどうぞ中へ…」




