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ホラー

妖怪26時

作者: 白酒軍曹

 どうもこんばんは。私の名前はご存知ですか?


 はい、結構です。依頼主の方ですね。では、軽く説明から。


 何かしら噂では知っていると思いますが、26時には、真の丑三つ刻の別名がありまして、その名の通りに、本物の妖気に満ちた時刻です。今の現し世は24時を0時として、新しい時を刻み始めてしまいます。なので私達が普段生活して居るのは、ただの午前2時です。


 しかし古の時代には、当たり前の様に丑三つ刻が有りました。それは私達が正確に時を刻む様になって、触れる事ができなくなってしまった時刻です。


 丑の刻参りは今回が初めてですか?


 ええ、そうなんです。効果はイマイチなんですよ。それは私達の生きる現し世の時間に、最も妖気の強くなる丑三つ刻が存在していないからなんですよ。

 なので丑の刻参りを成功させたいのなら、真の丑三つ刻、26時に行かなければなりません。



 それでは時間もありませんので、早速やりましょう。

 先ず時計が二つ必要です。あなたはお洒落な腕時計をしていらっしゃるので、一つはそれを使います。もう一つは、私がホームセンターで買って来た安物の時計を使って下さい。

 貸した時計は正確な時刻に。あなたが身に着けている時計は、2時間早めて時刻を設定して下さい。


 次は形代(かたしろ)を作ります。この和紙を半分に折って、線対称の切り絵を作る様に人の形に切り抜いて……出来ましたら、あなたは髪が長い方なので、髪の毛を形代に襷掛けに結んで下さい。


 次に正確な方の時計を形代に着けさせます。乗せても良いですし、テープで貼っても良いです。お好きな様にくっつけて下さい。 

 そして、時刻が24時になったと同時に、あなたが身に着けている方の時計を止めて下さい。


 この時点で形代があなたの代わりに0時から現し世の時間を進み、あなたは24時から26時に向けての時間を進み始めました。


 そうです。後は根気良く待つだけです。そうして形代の時計が2時になった時に、あなたの時計を再び動かします。そうすればあなたは、晴れて26時に到達する事ができるのです。


 まだ暫く時間がありますから、話をお聞かせ下さい。あなたが何故私のところへ来たのか。その怨みつらみをお聞かせ下さい。

 ご安心ください。私は多くの、あなたの様な方のお話しを聞いてきました。私の事は人間だと思わず、相槌を打つ人形だと思ってください。最後までお付き合い致しますよ───



 ───おや、そろそろ時間ですね……。それでは行ってらっしゃいませ。良い人生を。


・・・・・・


 ここは何処かのオフィス。今はお昼時。テレビでお昼のニュース番組を見ながら、従業員達が弁当を食べている。

 ニュースでは、人身事故を起こすも不起訴処分に終わっていた男が、「自動車で単独事故を起こして死亡した」と報じられていた。


「あ! あの上級のクズ死んだんだ。事故死なんてダッサイ死に方ね。どうせ調子コイて運転してたんでしょ」

 一人の女がニュースに対して大きな独り言を言った。その男の余罪の噂は絶えず、多くの不満を集めていた。


「誰かに呪われたのよ」

 その独り言に、長髪の女が口角を上げて応えた。

 

「…なにニヤニヤしてるの? あれ、貴女時計変えた? 言っちゃ悪いけど、すごく安っぽいてダサイ。前の方が良かったと思うけど?」


 独り言を言った女が、長髪の女の方に顔を向け、見たままの感想を遠慮無く言うと、長髪の女はテレビから腕時計に視線を移し、嬉しそうに言った。

 

「前のは何処かに行っちゃった。それに、この時計はダサイけど、大切な誕生日プレゼントなのよ」

噂の結末が語られない理由

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