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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第五章 羽を失った鳥は猛獣をエサにする

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20&エピローグ


「……え?」


 その言葉に紅蓮の前に座っている人物がそう声を出す。


 次の日の昼、あるカフェにその人物を呼び出し、紅蓮と透はその人物と対面した。そして、紅蓮が思い切ってその言葉を口にしたのだった。


「……採取したゴミ袋の二つの内、一つの袋に入ってたすり鉢と潰す様の棒が入っていた。そして、カードとすり鉢から採取した指紋を照合したら一致したよ。君が四種類の薬を混ぜてそれを入れたカプセルを渡したんだよね?それに、君はある人から薬剤師の資格を取るために勉強を教えてもらっていると言っていたよね……?」


 紅蓮がそう言葉を綴る。そして一つ息を大きく深呼吸する。




「君が犯人だなんて思いたくなかったよ……。眞子ちゃん……」




 紅蓮の言葉に眞子の目が見開く。そして、飲みかけのミルクティーを置いて眞子は小さくため息を吐いた。


「バレちゃいましたか……」


 眞子が苦笑いしながらそう言葉を綴る。


「ホストから話を聞いてきたよ……」


 透がそう言って聞き込みで聞いたホストの話を始めた。




「……実はこの子、いつだったかな?店にやって来て零士を指名したんですよ。その子が帰った後で零士にどんな子だった?って聞いたら、「ホステスっぽくはないが、面白い子だったよ。なんか、俺のファンなんですって言って体にとても良いんですよって言うサプリをプレゼントしてくれた」って言ってそのサプリの入った袋を嬉しそうに見せていたんですよね」


「どんなサプリメントだったか分かりますか?」


 ホストの言葉に透がそう問いかける。


「白いカプセルでしたよ?」


 そして、透たちはホストにお礼を言うと、その場を後にした。




「……ただ、一つ分からないことがある」


「何ですか?」


 紅蓮の言葉に眞子が冷静に言う。


「動機は?一体動機は何だったんだ?零士を殺そうと思うまでの動機は……」


 紅蓮が切実な表情でそう問いかける。


「……復讐ですよ……」


「復讐?」


 透がその言葉を繰り返す。


「真奈美さんのなりたかった自分を壊したあいつに復讐するためです……」


 眞子の言葉に紅蓮と透は言葉を発せない。


 確かに眞子は真奈美の事を尊敬していたし、慕っていた。だから、その尊敬している真奈美の夢を壊した零士がどうしても許せなかったのだろう……。


「真奈美さんのなりたかった自分って……?」


 眞子の言葉に紅蓮がそう問いかける。


「真奈美さん、お母さんになりたかったんですよ……」


 眞子がそう言葉を綴る。


「……でも、あんな奴と一緒になったら不幸になるだけじゃないのか?」


 透がそう言葉を綴る。


「いえ、真奈美さんは元々一人で育てるつもりでいたんです……」


「「え?」」


 眞子の言葉に紅蓮と透が同時に声を出す。


「真奈美さんは最初からあんな奴と一緒になる気は全くなかったんですよ。だから、子供を身籠った時も認知さえしてくれればいいって言っていました……。なのに……」


 眞子がそこまで話して目に涙を溜める。


「なのに……、お腹に子供がいると分かってあいつは何度も真奈美さんのお腹を蹴った……。そのショックで子供は流産して、真奈美さんは医者から子宮に傷も付いているので、もしかしたら、もう子供を産むのは無理かもしれないと言われたそうです……」


 涙を流しながら眞子がそう言葉を綴る。


「でもさ……、母子家庭ってなると相当大変なんじゃ……」


 紅蓮がそう言葉を発する。


「……真奈美さんは母子家庭で育ったそうです。真奈美さんのお母さんは一人で真奈美さんを立派に育ててくれたと聞いています。真奈美さん、言っていました。「母のように私も一人で立派に子供を育てたい」って……」


 眞子が涙を流しながらそう語る。


「……じゃあ、元々真奈美さんは零士と一緒になるつもりは無かった……。だが、なりたい自分になれなくなったことが分かり、真奈美さんもああいうことをしたというわけか……」


 透がそう言葉を綴る。


 事情聴取をした時、そこまでは記録されていなかった。恐らく真奈美と言う人物は多くを語らない人なのだろう……。


「あ……あの……、真奈美さんもって……どういうことですか……?」


 眞子が透の口から出てきた言葉に違和感を覚え、そう言葉を発する。


「……真奈美さんは今、警察署の中にある留置所にいるよ……」


「……え?」


 透の言葉に眞子がそう声を発する。


「……え?……え?ちょっと待ってくださいよ……。だって、真奈美さんは旅行中だってママが……。え?留置所……?なんで真奈美さんがそんなところにいるんですか……?」


 眞子が混乱気味にそう言葉を綴る。


「回収したごみ袋は二つ……。一つは君のゴミ袋、もう一つは真奈美が出したゴミ袋だよ……。なぜ、二つゴミ袋があったか……。それは、それぞれその道具を使ったのが別の人間だったからだ……」


 紅蓮がそう言葉を語る。


「まさか……真奈美さんも……」


「あぁ……、二種類の低血圧の薬を混ぜてそれをカプセルに詰めて零士に渡している……」


「う……そ……」


 透の言葉に眞子が愕然とする。


「……署に来てくれるね……」


 紅蓮がどこか悲痛な表情でそう言葉を発した。




「なんだか、何とも言いようのない事件ですね……」


 真犯人が捕まり、奏が特殊捜査室でそうぽつりと言葉を漏らす。


「そうだな……。一人の男に何人もの女性が殺そうとしていたわけだからな……」


 槙が静かな声で淡々と言葉を綴る。


「ところで……」


 槙がそう言って机の上で魂がフヨフヨ~っと抜けている紅蓮を見て言葉を掛ける。


「お前はまだ落ち込んでいるのか?」


「眞子ちゃんが……俺の愛しのハニーが……」


 紅蓮が魂の抜けている状態で目を半開きにさせながらそうブツブツと呟く。


「……お前、かなりその子に本気だったもんな」


 透がそう言葉を投げかける。


「うぅ……。あんないい子だったのに……」


 紅蓮が泣きながらそう言葉を綴る。


「き……きっと、紅蓮さんにはもっといい人が現れますよ!!ね?!」


 落ち込んでいる紅蓮を慰めようと奏がそう声を掛ける。


「奏ちゃん……。君はなんて優しいんだ……。……よしっ!!」


 紅蓮から抜けていた魂が一気に戻ってきたのか、急に元気な声を出す。


「奏ちゃん!!」


「は……はい?!」


 紅蓮が急に奏に向き直り、奏の手を握り出す。


「やっぱり俺のスィートハニーは奏ちゃんしかいない!!勿論、奏ちゃんと今の彼氏を別れさせるつもりもない!!でも!いつでも奏ちゃんを守れるように俺がセカンドダーリンとなって夜の方もしっかりと……」



 ――――バッコーン!!



「イッデェェェェェェェェ!!!」


「あんたね!いい加減にしなさいよ!!奏ちゃんが困っているじゃないの!!」


 紅蓮を槙特製のハリセンで冴子が思い切り叩き、鬼の顔で後ろに般若を湛えながらそう言葉を綴る。


「冴子さん、こうなったら今夜本当に埋めに行きましょうか?どうせなら苦しむように生き埋めで」


 槙がシャベルをスタンバイしながらそう言葉を綴る。


「本当にそうした方が良いかもしれないわね……」


 冴子が「フシュ~……」と、口から煙を出しながらそう言葉を綴る。


「す……すんません!!ちょっと悪ふざけが過ぎました~!!」


 紅蓮がだらだらと血を頭から流しながら必死に謝る。


 その時だった。



 ――――コンコンコン……ガチャ……。



「やぁ、お疲れ様」


「「「署長!!!」」」


 そこへ署長である門野が特殊捜査室にやってくる。


「事件解決、おめでとう!いや~、今回も活躍したね!」


 門野が笑顔でそう言葉を綴る。


「……ところで、小宮山君。今日、良かったら例の料亭に行かないか?」


「え?」


 突然の門野の言葉に冴子がそう声を出す。


 いつもならこの後は、事件解決を祝ってみんなでいつもの居酒屋で乾杯することになっている。


「じゃあ、今回は俺たちだけで居酒屋に行きますよ」


 透が冴子にそう声を掛ける。


「よろしく頼むよ。小宮山君」


 門野がそう言って捜査室を出て行った。




~エピローグ~


「「「お疲れまでした~!!!」」」


 奏たちがそう言っていつもの居酒屋で乾杯をする。


「へい!鶏のから揚げ、お待たせ!!」


 店主である難波がそう言って、大きな皿に盛られた唐揚げをテーブルの上に乗せる。


「今日は冴子さんがいないんだな!珍しいこともあるもんだ!!」


 難波が「わははっ!」と笑いながらそう言葉を綴る。



 ――――ガラガラガラ……。



「へい!らっしゃい!!」


 そこへ二人組の客が入って来て難波がそう声を掛ける。


「お前たちもやはり来ていたか……」


 奏たちの姿を見つけて本山がそう言葉を綴る。


「あれ?小宮山さんは一緒じゃないの?」


 杉原がその場に冴子がいないことを不思議に思い、そう声を発する。


「あぁ、冴子さんなら署長に呼ばれてどっかの料亭に行きましたよ?」


 紅蓮がそう言葉を綴る。


「……そうか」


 本山がそう答える。


(……てことはあの話を小宮山にするというわけだな……)


 本山が心でそう呟く。


「良かったらご一緒しますか?」


 奏が本山と杉原にそう声を掛ける。


「いや、今日は別でいいよ」


 本山がそう言って誘いを断る。


 そして、奏たちはワイワイとお喋りをしながらその場を楽しんでいた。




「……水無月君の事なんだが……」


 料亭の個室で門野がそう口を開く。


「奏ちゃん?」


 冴子がそう声を発する。


「あぁ……。実はな……」


 門野がある事を冴子に話す。


「……それ、本当なの……?」


 冴子は門野の話が信じられないのか、唖然としながらそう言葉を返す。


「あぁ……、本当の事だ……」


 門野の言葉に冴子は何と言っていいかが分からなかった……。





「……なんでこんな目に遭うのよ……」


 一人の少女が目に涙を溜めながらそう言葉を綴る。


「ずっと……このままなの……?」


 蹲りながらそう言葉を綴る。


「もう嫌……、もう嫌だよ……」


 涙を流しながらそう呟く。



 その様子を一人の人物が見つからないように聞いていた。




(第六章に続く)


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