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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第五章 羽を失った鳥は猛獣をエサにする

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18.


「ん?どうしたの?真奈美ちゃん」


 ママが声を掛けた真奈美にそう問いかける。


「店の事なんだけど……」


 真奈美がそこまで言いかけた時だった。



 ――――チリーン……。



 クラブ「フェリチタ」のドアベルが鳴り、ママが顔を出す。


「すみません、まだ開店前でして……え?」


 やってきた男二人組にママが驚きながらそう言葉を発する。


「警察署の本山です」

「同じく杉原です」


 本山と杉原がそう言って手帳を見せる。


「あの……何か……?麗美ちゃんでしたら捕まったのでしょう……?」


 ママが再び警察が来たことに驚きを隠せない。


「今回は別件で伺いました」


「別件って……」


 本山の言葉にママの顔がみるみると青くなっていく。


「うちの子が……また……誰かを殺したというのですか……?」


 ママが震える声でそう言葉を綴る。


「……保坂ほさか 真奈美まなみさんはいらっしゃいますか?」


 ママの問いかけには答えずに本山がそう言葉を発する。


「真奈美……ちゃん?」


 本山の口から出てきた名前にママの顔が更に青くなっていく。


「嘘……真奈美ちゃんが何かしたって言うの……?」


 ママがカタカタと震えながら「信じられない」とでも言うようにそう言葉を綴る。


「……いらっしゃいますか?」


 本山が再度そう問いかける。



「……私です」



 真奈美がやって来てそう言葉を発する。


「……お聞きしたことがあります。任意で署にご同行願えますか?」


「……分かりました」


 本山の言葉に真奈美は冷静な口調でそう答える。


「真奈美ちゃん……!あなたまで一体何を……?!」


「ごめんなさい……」


 ママの言葉に真奈美が一言だけ言うと、本山と杉原に連れられて行く。


 その様子をママは呆然としながら見ていた。




「……はい、確かに私がそれを仕込みました」


 取調室で真奈美が本山の言葉に素直に罪を認める。


「なぜ、そんな事をしたんだ?」


「……あの日……」


 真奈美はそう言ってその日の事を話しだした。




「……なん……だと……?」


 零士が住むマンションの部屋で真奈美が「子供が出来たの!」と言う話に、零士は顔を歪ませながらそう言葉を綴る。


「うん!だからね……」


 真奈美がそこまで言いかけた時だった。



 ――――ドカッ……!!!



 真奈美のお腹を零士が力いっぱい足で蹴り上げる。


「きゃぁっ!!」


 真奈美が声を上げる。



 ――――ドカッ!ドカッ!ドカッ!!!



 零士が何度もお腹を蹴る。


「や……やめっ……!!」


 真奈美がそう叫ぶが零士は蹴るのを止めない。


「ふざけんな!!結婚なんかするかよ!!父親にもなる気ねぇよ!!てめぇ!!避妊してたんじゃなかったのかよ?!」


 零士がお腹を何度も蹴りながら怒り狂うように叫ぶ。


「……零士……やめっ……!!赤ちゃ……が……」


 真奈美が途切れ途切れにそう言葉を綴る。


 そして、真奈美を部屋の外に叩きだすように放り出す。


「……きゃあっ!!!」


 真奈美が転倒して声を上げる。


「二度とここに来るんじゃねぇ!!」


 零士はそう言うと、乱暴にドアを閉めた。




「……その後でお腹の子は流産しました。だから、あの子を殺した復讐のためにその薬を仕込んだんです……」


 真奈美の話に本山が唖然とする。


「……なんでその男と関係を持ったんだ?」


「ただ、気に入られて何となくですよ……。見目だけは良かったですから……」


 本山の言葉に真奈美がそう答える。


「薬はどうやって仕込んだんだ?」


 本山が聞く。


「簡単です……。あの後、零士の店に行って「ごめんね」って謝ったんです。そして、赤ちゃんは堕ろしたからという事を伝えました。その時に、「お詫びの印に最近血圧が高いって聞いたから、良かったらこれを飲んでみて」と言って、その薬が入ったカプセルを渡したんです……」


「……良く受け取ってくれたな」


 真奈美の話に本山が半分呆れ気味にそう声を漏らす。


「私が健康のために渡していたサプリメントはよく効くって言って、他にもいいサプリメントがないかと言っていましたからね……」


「それであっさり受け取ったというわけか……。全く、赤ちゃんを殺されてその復讐のために殺すとは……」


 本山がため息を吐きながらそう言葉を綴る。


「……零士を殺したのは同じクラブのホストじゃないんですか?」


 真奈美がニュースでそう報道されていたことを話す。


「……確かに同じクラブのホストが突き飛ばしたのは事実だが、致命傷はその薬だという事が分かったんだ」


 本山の言葉に真奈美が驚く。


「……そう……なんですね。その薬が致命傷だったんですね……。おかしいな……藻掻き苦しむくらいの量で調節したはずなんだけど、まさかそれが原因で死んじゃったなんてね……」


 真奈美が悲しみの笑みを浮かべながらそう言葉を綴る。


「……やれやれ、四種類の薬を混ぜるとはな……」



「……え?」




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