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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第五章 羽を失った鳥は猛獣をエサにする

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5.


「あぁ?なんだよ、お前ら?!」


 突然自分たちの前に現れた奏と槙に西田がそう声を上げる。


「警察の者です」


 奏と槙がそう言って警察手帳を見せる。


「先程の会話ですが……」


 奏がそう言葉を発した時だった。


「ちっ……!おい麗美!今日の金は付けといてくれってママに言っとけ!!」


 西田がそう言ってその場を去って行く。


「大丈夫ですか?」


 奏が優しく微笑みながら麗美にそう声を掛ける。


「あ……ありがとうございます」


 麗美が深々とお辞儀をする。


「……店に戻りますね」


 麗美がそう言って店の中に消えていった。



「……あら?西田さんは?」


 麗美が一人で戻ってきたのでママが不思議に思い、麗美にそう声を掛ける。


「あ……、なんか急用を思い出したみたい。今日のは付けておいてって」


「そうなの?珍しいわね。じゃあ、麗美ちゃんは眞子ちゃんのいる席に行ってくれる?」


 ママに言われて麗美が透たちの席に行く。



「初めまして♪麗美です♪」


 麗美が透たちのいる席に来て、笑顔でそう声を掛ける。


「どうも♪」


 紅蓮が麗美にそう声を掛ける。


「……さっき、大丈夫でしたか?」


 透が遠目で先程の麗美と西田の雰囲気が気になったのか、そう声を掛ける。


「え?……あ……はい……」


 麗美が一瞬何のことか分からなかったが、直ぐに先程の西田の事だろうと思いそう声を出す。


「夜の仕事って大変ですよね。そういう人も相手にしなきゃいけないから……」


 透が優しく麗美にそう話しかける。


「そう……ですね……」


 麗美が困った笑顔でそう返事をする。


(この人、凄く優しい……。こんな人が恋人だったらいいのに……)


 麗美が心で透の事をそう考える。


 しばらくは四人で楽しく談笑をした。


 その時、紅蓮がある事を思い付き、思案していた。




「……お疲れさまでした。紅蓮さん、透さん」


 店から出てきた二人に奏がそう声を掛ける。


「あ!ちょっと、忘れ物!!」


 紅蓮がそう言って店に戻っていく。


 しばらくして紅蓮が戻ってきて、「ごめんごめん」と言うようなジェスチャーをする。


「何を忘れたんだ?」


「ちょっとな♪」


 槙の言葉に紅蓮がそう言ってはぐらかす。


「何か収穫はありましたか?」


 奏が透にそう尋ねる。


「今のところ、特には無いかな?まぁ、最初から根掘り葉掘り聞くわけにもいかないしな……」


 透がそう説明する。


「……何か気になる事でもあったんですか?」


「いや……」


 奏が透の表情がどこか浮かないことに気付き、そう声を掛ける。


(あの麗美って人……)


 透が先程の麗美の対応に少し引っ掛かりを感じるのか、心でそう呟く。


 こうして、今日の聞き込みは終了してそれぞれ帰路に着くことになった。




「……やばっ!もうこんな時間!早く行かないと!!」


 麗美が時計を見てそう声を上げる。


 次の日。麗美は店に出勤する前にある人と会うことになっていて、急いで出掛ける支度をしていた。


(昨日の透さんって人……素敵だったな……)


 麗美が心の中でそう呟く。


(優しくて、相手のことも思いやることが出来て、その上背が高くて見目もカッコイイし……。ああいう店に来るってことは彼女はいないってことよね?)


 麗美がそう心で呟く。


「いけないいけない……。今から下井しもいさんに会うんだから……」


 そう小さく呟いて、急いで準備に取り掛かる。


 しかし、心の中では透に対する恋心が麗美の心の中を少しずつ膨らませていた。




「……じゃあ、その店にしばらくは客を装って調査ってわけね」


 冴子が昨日の事の報告を聞いてそう言葉を綴る。


「まぁ、それまで時間はありますから例の怒鳴り込んできたって言う女の事を調べましょう」


 槙の提案でその女を調べることになり、奏たちは義人に話を聞きに行くことにした。



「……あぁ、その人なら確か『キャリアトップ』っていう会社を経営している人ですよ」


「ちなみにその人の名前は分かりますか?」


 奏がそう問う。


「えーと……。確か、金森かなもりさんって名前じゃなかったかな?」


 義人からその人の名前と会社名を聞いて奏たちはその場所に赴くことになった。


「……俺はちょっと別行動するよ♪」


 いざ、その会社に行こうとした時に、紅蓮がそう言葉を発する。


「何処に行くんだ?」


 槙がそう問いかける。


「ちょっとな♪じゃあ、また後で合流な♪」


 紅蓮がそう言ってその場を去って行く。


 その後姿を見ながら透は何かを考えていた。




「……誰か気になる男でもいるの?」


 下井が麗美の作ったロックを飲みながらそう尋ねる。


「いえ……、そういうわけでは……」


 麗美がたどたどしそうにそう言葉を綴る。


「さっき、そういう事の最中だったのに上の空だったよね?」


「ごめんなさい……」


 下井の言葉に麗美が申し訳なさそうに言葉を綴る。


「約束、分かっているよね?」


「えぇ……」


「麗美は俺のものだから他の男にフラフラしちゃだめだよ?」


「えぇ……」


 そう言って、下井が麗美に口づけをする。


 麗美はそれを嫌がらずに受け入れるが、心の中では黒い感情が生まれる。



 なんで、自分の男がこんな男なのか……。


 たいしてカッコよくも無い男……。


 お腹が少し出ている見た目も良くない冴えない男……。



(昨日の人、素敵だったな……)


 下井の口づけを受け入れながら透の事を考える。


「……じゃあ、もう一回しようか……」


 下井がそう言って麗美をベッドに誘う。


 拒否できないと分かっているので麗美はそれを大人しく受け入れた。




「……えぇ、確かに腹立って怒鳴り込んだわ」


 会社の近くの喫茶店で奏と透、それに槙も加わって金森に話を聞いていた。


 女は少し年配の女性だった。しかし、格好から見て分かるように派手な感じもある。メイクを濃くして、少しでも若く見えるようにという感じが伝わってくる。


「……全く、あんなに貢いだのに、私の専属にならないかと言ったら手酷く振られたのよ。それで、「ならあんたに使ったお金を返せ!」って言って怒鳴り込んだのよ」


 金森は話をしながら怒りを露わにしていた。金森のプライド的に断られたのが許せなかったのだろう。


「でも、なんでそんな事を聞きに来るの?零士が死んだのは知っているけど、犯人は同じクラブの人なんでしょう?」


 金森がそう言葉を綴る。


「念のため、関係者には話を聞いているんですよ。ちなみに、そんな事をされて殺してやりたいと思ったことはありますか?」


 透がそう金森に尋ねる。


「まぁ、確かに許せなくて殺してやりたいとは思ったことはあるけど、だからといってあんな奴のために人生を棒に振る気はないわよ。これでも、社長ですからね」


 金森が凛とした口調でそう言葉を綴る。


 その様子から確かにそれで殺すことはしないだろうというのが分かる。


「後、参考までに聞きたいのですが、零士さんの事を憎んでいそうな人って他にご存じありますか?」


 透の言葉に金森がしばらく考えた。




「……紅蓮さーん!お待たせしました!!」


 一人の女性が紅蓮を見つけて小走りで駆け寄ってきた。




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