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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第五章 羽を失った鳥は猛獣をエサにする

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1.

~プロローグ~


「絶対……許さない……」


 部屋で一つの人影がそう呟く。


 そして、ある計画を立ててあるものを作っていく。


 その瞳は鈍い光を放っていた……。



「……苦しむといい……」


 その人影が出来上がったものを見て、瞳に闇を孕ませながらほくそ笑んだ……。





「くそっ……!なんであんな奴が人気あるんだよ……!」


 一人の男が部屋でウイスキーを飲みながらそう言葉を吐き捨てる。


「あんな奴……居なくなればいいのに……」


 男はそう言ってグラスに残ったウイスキーを一気に飲み干す。


「やべっ……。そろそろ時間だ……」


 男が時計を見てそう言葉を呟く。男は急いでスーツに着替えて、髪をワックスで固めると部屋を出て行った。




 いろんな人の感情が交差する中、それ故にあんな事件が起きるとはその時、誰も知る由が無かった。




1.


「……後……もうちょっと……」


 紅蓮があるものとにらめっこしながら手に持っているトランプをそーっとあるものの上に置こうとする。その様子を奏も真剣な表情でそれを見守っている。


 その時だった……。



 ――――バラバラバラっ……!!



「あぁぁぁぁぁ!!!」


 上に一枚のトランプカードを置いた瞬間、バランスが崩れたのかトランプで作ったタワーがバラバラと崩れて、紅蓮が悲痛の叫び声をあげる。


「し……新記録が……」


 紅蓮がガックリしながら恨めしそうにそう呟く。


「でも、だいぶ積み上がったじゃないですか!凄いですよ!紅蓮さん!!」


 奏が落ち込んでいる紅蓮にそう声を掛ける。


「か……奏ちゃん……」


 紅蓮がその言葉にウルウルと目を潤ませながら奏に顔を向ける。


「やっぱ奏ちゃんは優しいね……!お礼に今度、夜の相――――」



 ――――パコーンっ!!!



 紅蓮がそこまで言いかけて槙がハリセンで思い切り頭を叩く。


「イッテェェェェ!!!」


 叩かれた紅蓮がよっぽど痛かったのか声を上げる。


「……紅蓮、次はマジで埋めるぞ……」


 槙が低い声でそう唸るように言う。


「おい!槙!えらい痛かったぞ?!それ!!」


 紅蓮が槙の手にあるハリセンを指さしながら叫ぶ。


「そりゃそうだろ。いつものハリセンに強度を加えるためにプラスチックの液体を固めて作った特別仕様だ」


 槙が淡々と説明する。


「てめぇ!俺を殺す気かよ?!」

「これぐらいで死なないのは分かっている。殺すなら金属使用のハリセンで叩く」

「相棒を殺すんじゃねぇよ!!」

「安心しろ。お前が死んだらもっといい相棒を付けてもらう手筈だ」

「なんだとぉ?!」


 いつもの紅蓮と槙の言い争いが続き、奏がその様子をハラハラと見ている。一方の透は興味が無いのか止める訳でもなく、優雅にコーヒーを啜っていた。



 ――――ガチャ!



「はぁい♪新しい書類を貰って来たわよ~♪」


 そこに冴子がやって来て新しく書類整理をするものを机の上に置く。


「……後、この前の事件だけど、夏江さんの遺体はご両親が引き取ったわ。二人とも事情を聞いて驚いていたわ……。まさか、そんな人だとは思わなかったって……。で、基頼は未だに「俺じゃない!!」と言って犯行を認めていないそうよ。まぁ、証拠があるから逮捕は確実なんだけどね……。全く、往生際が悪いというか、なんというか……」


 冴子がこの前の事件をそう話してため息を吐く。


「なんか、やな事件だったな……」


 紅蓮がその時のことを思い出しながらそう言葉を綴る。


「基頼さんがちゃんと躾を受けていたらこんな事にはならなかったと思います……。そういった意味では基頼さんも被害者かも知れません……」


 奏が目を伏せるような仕草でどこか悲しそうにそう言葉を綴る。


「まっ!未だにその事に囚われてちゃだめよ!前を向いて進むことが大切よ、奏ちゃん♪」


「冴子さん……」


 冴子の言葉に奏が申し訳ない顔をする。



『どんなに辛くても前を向いて頑張れば光は見える』



 奏が母親である雫が言ってくれたその言葉を思い出す。


「……そうですね、その事にいつまでも囚われていたら駄目ですよね……」


 奏がそう呟く。


「冴子さん、ありがとうございます!頑張ります!!」


 奏が力強く言葉を綴る。


「その意気よ♪さっ!じゃあ書類整理に取り掛かるわよ!!」


「はい!!」


 冴子の言葉に奏が元気よく返事をする。


 こうして、今日も奏たちは書類整理に取り掛かっていった。




「……ぐっ……!!」


 一人の男が別の男に突き飛ばされて頭を打ち付ける。


「てめぇ……、何しやがる……」


 男が頭を押さえながら突き飛ばした男に恨むような声で言う。


「なんでお前みたいなやつが人気あんだよ?!」


 突き飛ばした男がそう言葉を言い放つ。


「あぁ?だから何だって言う――――」


 その時だった。


 その男がそこまで言いかけて胸を押さえるように呻き声を上げる。


「あ……がっ……」


 そして、体を痙攣させると、苦しみに歪んだ顔で突き飛ばした男に救いを求めて手を伸ばす。


 次の瞬間――――。



 ――――ガクッ…………。



 突き飛ばされた男が目を見開いてこと切れたかのように動かなくなる。


「お……おい……?零士れいじ……?」


 突き飛ばした男が異変に気付き、声を掛けるが何も反応がない。


 そして、零士と呼んだ男の近くに行き、息をしているか確認をする。


「う……嘘だろ……死……」


 男が恐怖のあまり、それ以上言葉を紡げない。


 その時だった。


「おはようございまーす」


 一人のスーツ姿の男がその部屋にやってくる。


「あ、おはようございます、義人よしとさん……って……え?」


 部屋に入ってきた男が義人の傍らにいる目の見開いたまま動かない零士を見て声を出す。


「よ……義人……さん……。まさか……零士さん……を……」


 男がガタガタと震えながら後ずさるように声を絞り出す。


「ち……違う!俺じゃない!!俺じゃないんだ!!」


 義人が慌てて否定する。


「だ……誰か!!誰か来てくれ!!義人さんが零士さんを……!!!」


 男はそう言いながら部屋を飛び出していった。




「……殺人事件?」


 次の日、整理する書類を受け取る前に寄った玄の率いる捜査室で冴子がそう声を出す。


「あぁ。殺されたのはホストの男で殺したのは同じクラブのホストみたいだな。ただ、容疑者として捕らえたそのホストは「俺じゃない」と言って容疑を否認しているそうだ。でも、頭には揉み合いになった時の傷があったからその男が犯人だと睨んでいるそうだよ」


 玄がお茶を啜りながらそう言葉を綴る。


「ねぇ、その事件の担当って……」


「本山さんと杉原さんだよ」


「ありがとう♪」


 冴子がそう言って玄のいる捜査室を出て行く。そして、その足でそのまま本山達のところに向かった。




 一人の女が出勤するための支度をするのに時間が確認しやすい為、テレビをつける。すると、テレビでは昨日の夜に起きたホストクラブでの殺人事件が報道されていた。殺されたのはそこで働いているホストで、報道ではそのクラブに勤めるもう一人のホストと揉み合いになり殺害したとアナウンサーが話していく。



「……こうくるとは予想外だったけど……目的は果たせたわ……」




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