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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第四章 黒い鴉に尽くしていた白い鳥

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13.


 今回の作戦の関係で、透は一人だけ基頼の部屋の隣に住んでいる今野の部屋にお邪魔し、例の場所から奏たちの様子を伺っていた。


(それにしても、本当に冷えるな……)


 透がそう思い、体を少し震わせる。


 そして、時が来るのをじっと待った。




「それ……、確か……」


 基頼が持ってきたバットを見て奏がそう呟く。


「確か、怪しい人が来た時に追い返すために買ったバットだよね?まだ、残っていたんだね」


 奏がそう言葉を綴る。


「うん。まぁ、あまりそういう機会が無いからたまに素振りに使っているけどね」


 基頼がそう言いながら素振りを見せる。


「野球、好きだって言ってたもんね。子供の頃やっていたって……」


「そうだね。僕は投げる人よりは打つ人の方がなんかカッコよく見えるから打つシーンとかは大好きだったよ。なんか、上手く球が当たったらスカッとしそうだよね!」


 基頼がそう言って何度も素振りをして見せる。


「良かったら奏ちゃんもやってみる?」


 そう言って基頼が奏にバットを渡そうとする。


「私はそういうのはしないから……」


 そう言って奏がやんわりと断る。


「そんなこと言わずにやってみなよ。仕事で重いもの運ぶ時もあるんでしょ?力付けなきゃだめだよ?」


 基頼がそう言ってしつこいくらいに奏に素振りを進める。


「やり方は教えてあげるからさ!」


 基頼がそう言葉を綴りながら奏に素振りをするように求める。


「少しだけだよ……?」


 基頼があまりに進めるので奏は観念してバットを受け取った。




「……透?そっちはどうだ?」


 紅蓮が外から無線を使って透に動きがあるかどうかを確かめる。


『今のところ、特に無いな』


「そうか。こっちは絵美ちゃんって子と合流したよ。今から孝君って子と例の奏ちゃんの彼氏も来るみたいだよ」


『了解』


 無線が終わり、そのまま張り込みを続ける。


 その時だった。


「絵美さん!!」


 声がして絵美が振り返ると、そこに駆け足で孝と広斗がやってくる。


「奏は?!」


 広斗が近くまで来ると堰を切ったようにそう声を出す。


「まだ部屋の中だ」


 槙がそう答える。


「奏!!」


「ダメだ!!」


 広斗がその部屋に行きそうになったので、紅蓮が広斗の肩を掴んで制止する。


「今ここで行ったら全部おじゃんになる!」


「でも……奏が……」


 紅蓮の言葉に広斗が悲痛な声で言う。


「気持ちは分からなくはないが、今は奏を信じるしかない。辛いかもしれないが、ここで待機してくれ」


 槙の言葉に広斗が顔を苦しませながら頷く。



『今は奏の無事を信じるしかない』



 そう感じて、広斗は奏が無事でいることを祈りながら紅蓮たちと共にその場で待機することにした。


「そういえばさ、ちょっと聞きたいんだけど……」


 紅蓮がそう口を開き、広斗に先程絵美から聞いた話をする。


「……確かに奏はそういうところはあります。人にすごく親切ですが、気を使い過ぎていると言われればそうかも知れません……」


 広斗が話を聞いてそう答える。


「あんたに対してもそういう感じみたいだけど、それに関してはどうなんだ?」


 紅蓮の言葉に広斗が少し苦しそうな表情をする。


「そうですね……。出来るのであれば僕は――――」


 広斗がそう言って心の内を話し始めた。




「そうそう、そんな感じだよ!」


 基頼が奏の素振りを見てそう声を上げる。


「なかなか筋がいいね!割と上手な方だよ!」


 そう言って奏を褒め称える。


「そうかな……?でも……結構……バットって……重いんだね……」


 奏が息を切らしながらそう言葉を綴る。


「何度もしていたら筋力も付くからもう少しやってごらん」


 基頼がそう言って更に奏に素振りを勧める。


 奏は基頼の気が済むまで付き合うことにして、素振りを続ける。


「あっ!どうせなら的があった方がいいね!ちょっと持ってくるよ!」


 基頼がそう言って部屋を出て行く。


「……ふう、筋肉痛になりそう……」


 奏がそう呟く。


 しばらくすると、基頼が大きなものを抱えて戻ってくる。


「じゃあ、奏ちゃん、構えて」


 基頼がそう言って奏にバットを持って構えるように言う。


「じゃあ、的を準部するから目を閉じてくれる?」


 基頼の言葉に奏が目を閉じる。


 すると……。


「ほれ!的だ!!」



 ――――バシーーーーンっ!!!!!



「きゃっ!!!」



 基頼が奏に向って何かを投げつける。


 そして、部屋を飛び出し、玄関を出て外に飛び出すと大声で叫んだ。




「誰か!!!誰か助けてくれ!!!」


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