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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第三章 愛を欲しがった悲しみの鳥

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15.


「ご気分はどうですか?」


「特に大丈夫です……」


 医者の言葉に美玖がそう言葉を綴る。


 あの後、祐樹が呼びに行った医者が病室にやって来て、記憶が混濁していないかを確認するために、医者が美玖にいろいろな質問をした。そして、特に記憶に異常はないということが分かり、数日後には退院できるということを医者が伝えると、その病室を出て行った。


「良かったね……。安心したよ……」


 祐樹が安堵の表情をしながら言葉を綴る。


「茉理は……どうなったの……?」


 美玖の言葉に祐樹がどう説明するべきかを悩む。


「もう少し落ち着いたら話すよ……。今は、ゆっくり傷を癒すことが先決だよ……」


 祐樹は微笑みながら優しくそう言葉を綴った。




「淳子は落ち着いてきているから、今なら話を聞けるだろう……。俺たちも同席する」


 本山から淳子の容態を聞いて、話ができないかを聞いたところ、今なら話ができるということだった。



 そして、本山と杉原に淳子の元に案内してもらう運びになった。




「……茉理!!」


 突然名前を呼ばれて茉理が体をびくつかせる。


 そして、声が聞こえた方向に顔を向けると敦成が走ってこちらに向かってくるのが見える。


「あ……敦成?!」


 茉理が驚いて、急いでその場を離れようとして席を立ち、反対方向に駆け出す。


「待てよ!茉理!!」


 敦成が声を上げて茉理を制止させようとするが、茉理は止まらずに走っている。


「止まれよ!茉理!頼む!止まってくれ!!!」


 敦成が大きな声で叫ぶ。


 それでも、茉理は止まらない。



「茉理!頼む!俺にはお前が必要なんだ!!!」



 ――――ピタッ……。



 茉理がその言葉でその場に立ち止まる。


「茉理……」


 敦成が茉理の近くまで来ると、呼吸を整え、腕を広げて茉理を抱き締めた。


「茉理……茉理……ごめん……ごめんな……俺があんなこと言ったから……」


 敦成が涙を流しながら茉理にそう言葉を綴る。


「帰ろう……茉理……」


 敦成が優しい声でそう言葉を綴る。


「敦成……うん……敦成と帰……」



 ――――ドンッ!!!



 茉理がそこまで言いかけて敦成を突き飛ばす。


「ま……茉理……?」


 突然突き飛ばされて、敦成は呆然としていた。


「帰れない……帰れないよ……。だって……だって私は……」


 茉理が涙を溜めて嗚咽を漏らしながらそう言葉を綴る。茉理が何を言おうか分かった敦成は堰を切って話始める。


「あの母親の事だろう?!それなら大丈夫だ!今回の事は事件にはしないって言ってたから茉理が捕まる事はない!だから……だから俺と帰ろう!!」


 敦成が茉理の肩を揺すりながら必死で説明する。


「違うの……。私……私は……」


 茉理が震えながら言葉を綴る。




「人を……美玖を……撲殺しちゃったの……」




「……え?」




「美玖?撲殺?茉理……何言って……」


 茉理の言葉がよく分からなくて、敦成が聞き返す。いや、分からないわけじゃない。




 茉理がそんなことをしたということを信じたくない……。




「茉理……悪い冗談は……」


 敦成がそう言葉を綴る。その顔は真っ青になっていた。


「本当の事だよ……。私、美玖の頭を石で殴った……」


 茉理の表情で嘘ではないということは分かる。



 でも……。



 でも……。



 敦成の中でぐるぐると感情が蠢く。



 信じたくない……。



 嘘だと思いたい……。



 冗談だと言ってくれ…………。



 いろんな言葉が敦成の頭の中を駆け巡る。




「茉理……一緒に逃げよう……」



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