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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第三章 愛を欲しがった悲しみの鳥

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13.


 ――――ガツンっ!!!



「っ……!!!」


 茉理に頭を石で叩かれて美玖が声にならない声を上げる。



 ――――ドサッ……。



「ぅ……ぅ……」


 その場に倒れ込み、呻き声を上げる。


 茉理は美玖から車の鍵を奪うと、その車に乗り込み走り去っていった……。



「……?」


 祐樹が部屋の中で車が走って行った音に違和感を持つ。美玖の車の排気音ではあるが、美玖の運転にしては荒々しい気がした。いくら怒りに満ちているからとはいえ、あんな運転はしないはずだと思い、気になって外へ出る。


「み……美玖っ?!」


 すると、駐車場に美玖が頭から血が流しているのを見つけて急いで駆け寄る。


「ま……茉理が……」


 美玖が何があったのかを伝えようとする。


「喋らなくていい!!救急車を……!!」


 祐樹はそう言って急いで救急車に電話を掛けた。しばらくして救急車が到着すると、美玖は病院に運ばれていった。それと同時に何があったのかを祐樹が説明すると警察も呼ぶことになり、事情を説明することになった。




「みんな!大変よ!!」


 朝、職場で奏たちが再度青い車を探しに行こうとして準備をしていると、冴子のディスクに置いてある電話に本山から連絡があり、話を聞いた冴子が声を上げた。


「茉理が殺人未遂事件を起こしたわ!!」


「「「えっ?!」」」


 冴子の言葉に奏たちが声を上げる。


「母親とは別に……てことですか?」


 紅蓮がそう言葉を発する。


「えぇ。石のようなもので女性の頭部を殴打して、車を奪い、走り去っていた……ということみたいよ。とりあえず、今から本山さんたちがこちらに来るからみんなはそのままここで待機して!」


 冴子の言葉に奏たちが頷く。


「……その頭を殴打された女性は茉理さんとは顔見知り何でしょうか?」


 奏が悲痛な表情で冴子にそう尋ねる。


「今の段階では分からないわ……」


 冴子がそう言った時だった。



 ――――ガチャ……。



 特殊捜査室の扉が開いて本山と杉原が部屋に入ってくる。


「……ややこしいことになったぞ……」


 本山が苦虫を嚙み潰したような顔をしながら部屋に入るなり、そう声を発する。


「本山さん、詳しいことを教えてくれない?」


 冴子が本山にそう問う。


「あぁ……。通報をしたのはその殴打された女性、高屋たかや 美玖みくの婚約者である松村まつむら 祐樹ゆうきだ。走り去っていく車の音に違和感を覚えて外に出たら駐車場で美玖が倒れているのを発見して救急車を呼んだらしい。その時に、美玖が「茉理が……」と言っていたので、茉理が美玖を殴打し、車を奪って逃げたことは間違いないだろう……」


 本山がそう説明する。


「でも、なんで茉理はそんなことを?その美玖と言う人とはどういう関係なの?」


 冴子がそう本山に問いかける。


「高校時代の親友らしい……。ただ、祐樹の話では、奇妙な巡り会わせと言うか……どうやら茉理が海で入水自殺を図ろうとしたところを美玖と祐樹が偶然その場に居合わせて茉理を海から引き上げたそうだ。そして、息をしていたので気絶だけしているということが分かり、アパートに連れて帰った。その後、茉理が目を覚まして美玖が事情を聞こうとしたが、茉理は何があったか話さなかったそうだ。そして、昨日の夜に事件が起こった。茉理が美玖に食べたいチョコレートを買いに行かせている間に、茉理の方から祐樹を誘惑しようとし、それに激怒した祐樹が帰ってきた美玖にその事を話し、話を聞いた美玖が茉理を最寄りの駅まで送ろうとして二人で駐車場に行った時に事件が起きた……ということだそうだ……」


 本山の話に奏たちが言葉を失う。奇妙な巡り会わせでもあるが、親友の婚約者を誘惑したという茉理の行動が奏たちには信じられなかった。


「親友の恋人を誘惑なんて……」


 奏が悲痛の想いで言葉を綴る。


「本当に茉理と美玖は親友だったのか引っ掛かるな……」


 槙が神妙な顔でそう言葉を綴る。


「……もしかしたら、何かあるかもしれないわね……」


 冴子がそう言葉を綴る。


「よし。俺たちは茉理を追う。お前らは茉理と美玖の事を調べてみてくれ。何か分かったら連絡しろ」


 本山の言葉に奏たちが頷く。そして、奏たちは茉理と美玖の過去を調べてみることになった。




「……うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


 叫び声をあげながら敦成がベッドから飛び起きる。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 怖い夢を見たからか、呼吸を整えようとする。


「なんで……あの時のことが……」


 敦成が乱れた息を整えながら悲痛の表情で小さく呟く。


 それは敦成の過去に起こった出来事の夢だった。



 まだ、茉理と出会う前に敦成は一度結婚をしていた。そして、妻になった女性のために必死で働き、お金を貯めて、念願のマイホームを購入した。家が完成して、これから生まれてくる子供も含めてこの家で幸せな日々が始まるのだと期待に胸を膨らませていた。今以上に頑張って働いて、家族を養っていく……。そう考えていた矢先だった。


「お前は出て行け」


 家が出来て、新しい生活がスタートしようとした時、義父の口からそう言われた。敦成が建てた新しい家には嫁と生まれてくる子供と義父と義母が暮らすため、敦成は出て行くように言われたのだ。敦成は当然反発した。しかし、妻である京香きょうかが敦成から暴力を振るわれているという嘘の言葉を吐き、それを信じた義父と義母が敦成を追い出したのだった。敦成は勿論「そんな事はしていない!」と言ったが、全く聞き入れてもらえず、家を追い出され、途方に暮れた敦成はふらついた足取りで街を彷徨っていた。



「茉理……居なくならないでくれ……」


 敦成がベッドの上で蹲りながら呟く。


 そして、このまま家にいると気が狂いそうだったので、外に出ることにした。




「……ここに来ちゃったんだ……」


 無我夢中で車を走らせて、夜遅いこともあり、途中で眠気に襲われたので、一度どこかの駐車場に車を停めてそのまま眠りについた。そして、朝になり、起き上がるともう一度車を走らせて、辿り着いた場所に茉理は小さく声を上げた。




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