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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第三章 愛を欲しがった悲しみの鳥

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4.


 ――――ガタンガタン……ガタンガタン……。



 電車に揺られながら、茉理は車窓から見える風景を眺めていた。当てもなく電車に乗り、行先は特に決めずに、気になった駅で降りようと思いながら電車の揺れに身を預ける。


 しばらくして、ある駅に到着して、何気なくそこで降りる。ローカル線なので、かなり遠くまで来たわけじゃないが、自分が住んでいたところよりはある程度距離が離れているので、気持ち的には遠くまで来た感覚になる。


「……どうしようかな?」


 昔からある駅のせいか、降りた駅は人が居なくて寂しい雰囲気が漂っていた。切符も設置されている切符入れに入れるだけで、改札も何かで閉じられているわけではない。


 茉理は当てもなく、道を歩く。中心街からは離れているからか、人通りはほとんどなく、店のようなものも無い。あるのは自然だけで、家がポツンポツンと見えるだけだった。


「……この匂い」


 茉理が何かの匂いを感じ取る。


「……潮の匂いだ」


 近くに海があるのだろうか?微かな潮の匂いが茉理の鼻をくすぐる。その匂いのする方向へ足を向けて歩きだした。




「……あれ?このマンションって……」


 あるアパートの一室で一人の女性がネットに投降されているニュース記事を見て声を出す。


「どうしたんだい?美玖みく


 美玖と呼ばれた女性の隣にいる一人の男性が尋ねる。


「このマンション、昔の友達が住んでいるマンションなのよ。なんか、そこで事件があったみたい……」


 美玖が男性にネットに投降されている記事を見せる。そのサイトは誰でも投稿できるサイトでそのマンションの事件も一般人が投稿した記事だった。


「なになに?『マンションに住む女性が包丁で刺されて救急車で運ばれた。事件だ事件だ!』……って、なんか投稿した人は楽しんでいるように見えるね。「事件だ事件だ!」の後にニッコリマーク入っているし……」


 男性がその記事を見て呆れたように言葉を綴る。


「そうだね。人が一人刺されたのにこの絵文字は無いわよね……。あっ!そろそろお昼ご飯作るね。祐樹ゆうきは何が食べたい?」


 祐樹と呼ばれた男性が何を食べようか考える。


「簡単なものでいいよ。せっかくの休みだから二人でゆっくりしたいし……。あっ!お昼食べたらまたいつものところに行こうよ!」


「うん!いいよ!じゃあ、急いでお昼作るね!」


 美玖がそう言って急いで昼食の準備に取り掛かる。そして、二人でお昼ご飯を食べ終わると、いつもの場所に出掛けて行った。




「聞き込みが出来ないとなると、スマートフォンのGPSを辿るしかないのかな?」


 冴子と奏が特殊捜査室に戻って来て、今回の事件の事を話す。しかし、極秘捜査なので聞き込みは基本タブーとなっているので、どう捜査していくか話し合っていると、透がそう言葉を発した。


「そうだな。問題はその茉理って女がスマートフォンを持ち歩いているかどうかだが……」


 槙がそう言葉を綴る。


「とりあえず、茉理さんの旦那さんに話を聞きに行ってみるのが良いかもしれないわね」


 冴子がそう提案したので、奏たちはそのマンションに足を運ぶことにした。




「茉理……どこ行ったんだよ……」


 敦成が部屋の隅っこで体を丸めながら呻くように声を出す。茉理のスマートフォンには何度も電話を掛けているが一向に繋がらない。


「一人にしないでくれよ……。俺を見捨てないでくれ……」


 顔を伏せながら目に涙を溜めてそう小さく言葉を綴る。



 ――――ピンポーン……。



 そこへ、玄関のインターフォンが鳴り響く。


「茉理!帰ってきてくれたのか?!……え?」


 てっきり茉理が帰ってきたのだと思い玄関の扉を開けると、そこにいたのは茉理ではなく、奏たちだった。




「海だ~……」


 茉理が海を眺めながら浜辺に座り込む。海を見ながらこれからどうしていくか考えるが、考えても人を一人刺している自分は幸せになれる訳なんかないと考える。


「もう……疲れたな……」


 ぽつりと呟く。そして、おもむろに立ち上がり、海に向って歩きだす。


「もう……終わりにしよう……」


 ふらつきながら海に向かう。



 ――――ザブッ……ザブッ……ザブッ……。



 海に足を突っ込み、そのまま歩きだす。次第に体が徐々に海の中に入っていく。



 ――――ザブッ……ザブッ……ザブッ……ザブンっ……!!



 体が全て海に飲み込まれる。



 ――――ザバンッ!!!



「ちょっと!何しているのよ!!」




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