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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第二章 沼に足を取られた鳥は愛を知る

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5.


「あの……君は……?」


 徳二が突然声を掛けられたことに驚き戸惑ったような声を出す。


「急に声をおかけしてすみません……。顔色が良くないですが大丈夫ですか?」


 奏が驚かしてしまったことを詫びて、心配そうな表情でそう言葉を綴る。


「え?あぁ……、大丈夫だよ。ちょっと疲れているだけだから……」


「なら良いのですが……」


 奏がそう言葉を綴るが、見かけた時の徳二の表情はどこか追い詰められているような表情をしていた。奏はそれが気になり声を掛けたのだった。


「本当に大丈夫ですか……?」


 奏が再度声を掛ける。


「あぁ。本当に大丈夫だよ。ただ単に疲れて昨日飲み過ぎただけだから……」


 徳二が笑顔を作りながらそう言葉を綴る。しかし、奏の中では「何かあるのでは?」という不安が拭えない。かといって、根掘り葉掘り聞くわけにもいかない。


「……じゃあ、俺はもう行くよ。心配してくれてありがとう」


 徳二はそう言うと、ベンチから立ち上がり、その場を離れていった。その背中を奏が見つめる。


(なんか、とてつもない苦しみを抱えているんじゃないかな……)


 奏が去ってく背中を見つめながら心の中でそう呟く。


「奏!!」

「ひゃあ!!」


 急に背後に現れた透に声を掛けられて、奏が驚きのあまり変な声が出る。


「あの人は……?」


 槙が去っていた男の事を聞く。


「その……なんとなくですが、とてつもない苦しみを抱えているように見えたので大丈夫かなと思い、声を掛けました……。すみません……」


 奏がそう言って頭を下げる。


「ほっとけなかったんでしょ?♪ま、奏ちゃんらしいよね♪」


 紅蓮がそう笑顔で言葉を綴る。


 そして、奏たちは亡くなった女性を知ってそうな人に話を聞くために聞き込みを開始した。




「さて、どんな女を連れてくるかな……?」


 一人の男が葉巻を吸いながら愉快そうに言葉を綴る。


「しかし、例のものを渡してもう数日経っていますよ?」


 傍に灰皿を持ちながら控えている男が何処か心配そうに言葉を綴る。


「あいつは馬鹿ではないからな……。面倒な女は連れてこないだろ……」


 葉巻を吸いながら男が薄気味笑いを浮かべてそう言葉を綴る。


「面倒な女?」


 控えている男が葉巻を吸っている男の言葉を繰り返す。


「あぁ……。恐らく、吟味しているはずだ……。身寄りがなく、頼りになる人もいない、そいつが消えたところで誰も気づかない、そんな女を探しているんだろうな……」


「足が付かない女というわけですね……」


「そういうことだ……」


 葉巻を吸っている男が「ククッ」と笑いながら言葉を綴る。その表情は何処か楽しんでいるようにも見える。


「おい、新形にいがた。ブランデーを持ってこい」


「承知しました……」


 灰皿に葉巻を握り潰しながらそう言葉を綴る。そして、新形と呼ばれた男はブランデーを取りに行くためにその部屋を出た。



 ――――トゥルル……トゥルル……。



 ブランデーを取りに行く途中で新形のスマートフォンが鳴る。通話ボタンを押して電話を掛けてきた相手と会話をする。


「……それしか方法は無い」


 新形は電話の相手にそう伝えると電話を切る。そして、ブランデーを手に取り、葉巻を吸っていた男がいる部屋に戻っていった。




「……おい!何やってんだよ?!」


 政明が声を荒げて言う。


 絵梨佳から電話を受けた政明は急いでこの部屋にやって来たのだろう。走ってきたのか、呼吸が乱れている。


「ど……どうしよう……。リナ……ずっと震えてておかしなことも言いだしたんだよ……」


 絵梨佳がリナを抱き締めながらそう言葉を綴る。リナはガタガタと震えており、「殺される……殺される……」と、ずっと呟いている。


「さっきからずっとこんな様子で……。自分は監視されているとか、盗聴器が仕掛けられているとか、変な事ばかり言っているんだ……」


 絵梨佳がどうしたらいいか分からずにどうにかして欲しくて政明に懇願するように言葉を綴る。


「病院に連れて行った方がいいかな……?ど……どこの病院が良いのかな……?」


 絵梨佳がそう言ってスマートフォンで調べようとする。



 ――――パシッ!!!



 その様子を見た政明が絵梨佳のスマートフォンを弾く。


「バカ野郎!!そんなことにしたらサツに捕まるだろ!!てめぇ、どこで麻薬を手に入れたんだと言われたらどう答える気だよ?!俺から貰ったって言うのか?!」


 政明が怒号をあげながら絵梨佳を怒鳴り散らす。


「で……でも……、このままじゃリナが……」


 絵梨佳が泣きそうな目でそう言葉を綴る。警察に捕まるならそれでもいい……。それでリナが助かるならそれでいい……。そんな思いが駆け巡る。


「どけっ!!」


 政明が力ずくで絵梨佳をリナから引き離す。


 そして、テーブルの上に置いてある、あるものに目を付けた。




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