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ファクト ~真実~  作者: 華ノ月
第一章 白い鳥は黒いカラスに誘われる

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13.


「知っているんですか?」


 母親の様子から冴子がそう感じ、言葉を発する。


「……もし、人違いでなければさかい 拓海たくみの事だと思います……」


 母親が声をわなわなと震わせながら憎むような声で言う。


「その人と翼君はどういう関係なんですか?」


 冴子が母親に問う。


「中学の同級生です……。翼はその人から嫌がらせを受けていました……」


「え……?」


 母親の言葉に翼が声を上げる。


「僕がいやがらせを……?」


 翼が何のことか分からないというような顔で不思議そうに言葉を綴る。


「覚えていないの?」


 その言葉に今度は母親が不思議な顔をする。


「もしかしたら、その拓海って人と記憶喪失は何か関係があるかもしれないですね……」


 奏がそう言葉を綴る。


「どういうこと?」


 奏の言葉に冴子が訪ねる。


「もしかしたらという話ですが、記憶喪失になったきっかけが拓海さんに何かをされて、記憶を失った可能性があるという事です……」


 奏がそう説明する。


「だから拓海に関係する記憶を一切失っているという事ね……」


 冴子が奏の話を聞いて神妙な顔でそう言葉を綴る。


「まずは、その記憶を失った時に何があったのかを調べてみましょう……」


 こうして、奏と冴子は翼と共に発見された現場に向かった。




「……大分溜まったな」


 金庫の中にある札束を見て拓海がそう言葉を漏らす。


「そうですね。大分溜まりましたね」


 拓海の言葉に宮部が言葉を綴る。


「拓海さんはこのお金で何をしたいですか?」


 宮部が拓海に尋ねる。


「南の島でのんびり暮らすのもいいかもな……」


「そうですか……。それは良いですね……。きっとのんびりとしていて、毎日が穏やかでしょうね。海で泳ぐのも良いかもしれませんし、キャンプとかもしたら楽しいでしょうね」


 宮部が笑顔を浮かべながらそう言葉を綴る。


「……そうだな」


 拓海が嬉しそうな少し悲しそうな感情が入り混じった笑顔で答える。


 その時だった。



 ――――バターンっ!!!



 部屋の扉が思い切り開いて一人の部下が息を切らせながら入ってきた。


「た……大変です!例の死体が見つかりました!!」


「何だと……?!」


 部下の言葉に拓海が驚きの声を上げる。


 一方で宮部の方はその事を聞いて何かを考えるような仕草をした。




「……ここが発見現場ですね」


 奏が記憶喪失となった現場を訪れるとそう言葉を綴る。


 あの後、母親の方も「私も行きます」と言い出し、四人でその場所に訪れた。事件か事故かは分からないが、あれからだいぶ日が過ぎているので発見場所で何かを見つけるのは難しいだろう。しかし、その場所に翼を連れて行けば何かを思い出すかもしれない。そんな淡い期待があった。


「……翼さん、なにか思い出したことはありませんか?」


 奏が翼にそう問いかける。


「いや……、特には……。ごめん……」


 翼がそう言って項垂れる。自分の身に何が起こったかを調べてくれているのに、何も思い出せないことが申し訳ないと思い、つい謝罪の言葉が出てしまう。


「いえ!気にしないでください!もしかしたら、かなり辛いことがあったのかもしれません。無理に思い出そうとしなくていいですからね」


 奏が翼を気遣うような声掛けをする。


 その時だった。


「おや?あの時の青年かい?」


 一人の釣り竿とクーラーボックスを持った年配の男性が奏たちを見て声を掛けてきた。


「あの……、あなたは……?」


 一人の年配の男を見て、翼が誰だろうと思いと尋ねる。


「目を覚ましたんじゃな。いや~、ほんまに良かったわ。あの時は死体が流されてきたと思ったぞ」


 年配の男がそう語る。


「すみません……。もしかして、この子が発見された時のことを知っているのかしら?」


 冴子がそう男に尋ねる。


「あぁ。わしが発見したんじゃ。いつものように夜釣りに来たらこの青年を見つけたんじゃよ。急いで救急車を呼んでな。あれからどうなったか気になっとったんだが、いや~、無事で良かったわい!」


 男がそう言いながらカラカラと笑う。


「あの……、この子を見たのはその時だけですか?その前にどこかでその子を見かけたという事はないですか?その……、誰かと一緒にいたとか……」


 冴子が男に何かを知っているのではないかと思い、聞いてみる。


「いや……、それは無いかな……?」


「そうですか……」


 男の言葉に冴子たちが肩を落とす。


「……ちなみにですが、この人は見覚えないですか?」


 奏がそう言って、拓海の写真を見せる。


「あれ?こいつは確か……」




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