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新世界日本国  作者: あずき
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2023年8月、日本全国で地震を観測。震源地は不明。

同年8月2日、護衛航空母艦CVN-712「あきつしま」完成。

同年8月4日、太平洋上で光が発生。原因は不明。民間人には海洋生物の発光と説明。

同年2月9日、第2世代S,W一体の消失。他国軍に持ち去られた可能性があるため、自爆システムの起動により重要機関を破壊。

***

2035年8月9日 「あきつしま」艦橋にて

「あきつしま」が旗艦を務める第八空母機動群の群司令、木村桜海将補は「あきつしま」艦長である太田一佐と話していた。

「暇ね……」

「暇ですね……まあ、我々が暇なのは平和ってことですよ」

「そうだけどさぁ~なんかこう……刺激が欲しいわよね……」

「米海軍に実弾を撃とうとした人がそんなこと言わないでください」

「あれは事故よ!それにもう時効だからいいじゃない!」

「そういう問題じゃありません。もし、あの時、実弾発射してたら今頃、あなたはここにいませんからね?」

「はいはい……でもあれは砲雷長も悪くない?」

「それは認めますけど、そもそも実弾を撃つ必要はなかったんですよ?何ですか、米海軍なら大丈夫って」

「まあ……米海軍なら大丈夫でしょ」

「はぁ」

上官2人のこんな会話は艦橋を和やかな雰囲気にしていた。

「それにしてもいい天気ね」

「そうですね」

「艦長!大変です!」

「どうした!?」

「防水扉のネジが一つなくなりました!」

「「……」」

2人は黙り込んだ。そして次の瞬間、太田一佐は怒鳴った。

「お前らああ!!何をやってるんだ!!」

その声を聞いた艦内にいたクルーたちはビクッとなった。しかし、1人だけ違った。

「なに?それくらい」

木村海将補だった。

「それくらいじゃないですよ!防水扉ですよ防水扉!」

「浸水しなければヨシ!」

「ヨシ!じゃねぇえええ!!」

太田一佐の怒号が響く中、艦橋の外には日光が降り注いでいた。

(この人……ほんとダメだ)

太田一佐はこの上なく呆れ果てた。

「まあ真面目に言うなら予備のネジを使えばいいでしょ」

「そうか!それでいこう!」

そういうと隊員は走って行った。

「あ~今日のご飯ってなんだっけ」

木村海将補が急に言った。

「え?今日は金曜ですからカレーですね」

「まじ?やったー!」

「よかったですね」

「うん!私、カレー好きなんだよねぇ~」

「そうなんですか」

その時、海が荒れ始め、艦橋のモニターに砂嵐が巻き起こった。

「システムがおかしくなってます!故障ではありません!」

「どういう事!?」

「わかりません!」

しばらくするとすべてが収まり、海も穏やかになった。

「いったい何だったの?」

「さあ」

「群司令!艦長!潜水艦『ひりゅう』より通信です」

「なに?内容は」

「どうやら海底の地形が変わっているとか……」

「は?」

「先程の電波障害の後、周辺の地形が海底地図と違う地形になっていて、着底したそうです。救援を求めています」

「とりあえず救援は出しといて。しかし地図と違う地形?」

「いったいどういう事でしょう」

「さあ。とりあえず横須賀に報告しておいて。全艦停止!」

「了解!」

こうして、第八空母機動群は動きを止めた。

***

2035年8月9日 首相官邸

日本の内閣総理大臣、川田太郎は仕事中に揺れを感じた。

「地震か?」

その時、官房長官が駆け込んできた。

「総理!大変です!」

「どうした」

「先程の地震から、世界各国との連絡が途絶えました!」

「……は?」

「アメリカをはじめ各国に連絡を取ろうとしましたが、繋がらないのです」

「……原因はわからないのか」

「現在、調査中とのことです」

「わかった。すぐに自衛隊にも連絡しろ」

「わかりました」

官房長官が部屋から出ると、電話が鳴り響いた。

「川田だが」

『総理!緊急です!』

「おちつけ、美川防衛大臣」

『は、はい』

「とにかく落ち着け」

『すみません』

「それで、どうした」

『実は、真珠湾沖に向かっていた第八空母機動群から海底の地形が変わっていると連絡がありまして』

「は?ちょっと待て。今、なんと言った」

『えっと……太平洋沖ですが、海底の地形が変わったらしく、潜水艦『ひりゅう』が着底しているそうです』

「待て待て、海底の地形が変わるなんてことあるか?」

『ありえないですが、実際問題地形が変わってますし』

「どこの海底が変わってるんだ?」

『ちょうど日本の国境から外の地形が変わっていたそうです』

「そうか。とにかく後で緊急閣議をする」

『わかりました。それでは』

電話が切れた。

「いったいどういう事だ……」

その後、川田は各省庁に確認し、海外への通信障害は機械の故障ではないということが確定した。

「機械の故障ではない……か」

その時、秘書官が乱暴なノックで入ってきた。

「総理!緊急です!JAXAからの報告で、地球外の施設及び海外の施設と連絡が取れないとのことです!」

「何!?官房長官にも言ったが、航空自衛隊を動かせ!外国がどうなっているかの調査だ!」

「わかりました。すぐ取り掛かります」

「頼むぞ」

***

数時間後、航空自衛隊から送られてきた情報をもとに記者会見が行われていた。

「では、航空自衛隊から送られてきたこの写真をご覧ください」

川田が言うと、プロジェクターに写真が写った。

その写真はどこかの港町であり、マスコミは領空侵犯を咎めようとしたが、その写真の違和感に気づいた。

その港町に泊まる船はすべて木造の帆船だったのだ。コンクリートやコンテナ、巨大クレーンは面影もない。

「この写真は朝鮮半島があるはずの場所の写真です。朝鮮半島はなく、さながら中世ヨーロッパの港町が広がっています」

記者たちは騒然となった。それはそうだ。いきなり異世界のような場所に飛ばされれば誰だってそうなるだろう。しかし、総理大臣は冷静に続けた。

「私はここに来て確信しました。我々の世界とは違う世界に来てしまったと」

この言葉を聞いた瞬間、会場のすべての人間が固まった。

誤字脱字等あったらご指摘お願いします。

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