表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/188

第84話 何をやってるんだ ローガンside

「何を言ってるんだ、俺は…………」


 アメリアがもう何度目かわからない淑女宣言をしている一方。

自室のベッドに腰掛け、ローガンは顔を覆い呟いた。


先ほどから何度も何度もため息が漏れている。

時折自省を表す声には後悔と羞恥が含まれていた。


──もっとわがままを言っても、いいんだぞ?


思い出したら羞恥の方が膨らんだ。

暗くて、辺りに誰もいない中、愛する者が隣に座っている。


それもアメリアは、クロードとの会合で少々気疲れをしたところをそっと寄り添ってくれた。

それで、アメリアに対する愛おしさを抑えろというのも無理な話だった。

 

 今すぐアメリアを抱き締めたい、その花びらのような唇にそっと口づけをしたい。

 そんな、怒涛の如く流れ出てきた欲求の末、口にした言葉だった。


 口にした結果、アメリアは目に分かるほど動揺していた。

 幼さを残した端正な顔立ちに戸惑いと羞恥を含ませ、アメリアはじっとこちらを見つめてきた。


(正直、危なかった……)

 

 潤んだ瞳、月明かりに照らされて赤らんだ頬。

 間近で恥じらうアメリアを前にして、理性を崩れそうになったのは言うまでもない。


 ──私、は……ローガン様と……。


 あのまま何も言わなければ、アメリアはどんな言葉を口にしたのだろうか。

 言い終わる前に無理やり話を終わらせたのは、ローガン自身、その先の言葉を聞くことに怖気付いたからだ。


 聞いてしまうと、引き返す自信がなかったから。要するに日和った。

 自分から仕掛けたくせにと言われたら、何も言い訳はできない。


 ローガン自身、そのずば抜けた容貌と高い位から、たくさんの女性からアプローチを受けてきている。

 しかし彼女たちの打算的でどこか底の浅い部分に辟易して、誰一人として心を奪われることはなかった。


 故に女性慣れしていると思いきや、そうでも無かったりする。

 今までの人生において、本気で愛した初めての女性がアメリアだった。

 

 本気で愛しているからこそ、一歩踏み込む事ができない。

 本心では踏み込みたいと思っているのに。

 

 そんなジレンマを抱えていた。


「しっかりするんだ……俺らしくない」

 

 言い聞かせるも、乱れ切った感情が平静に戻る気配はない。

 先ほどからずっと、アメリアのことが頭の中に浮かんで離れなかった。


 理性的で、よほどの事がないと動じないという自認があったローガンにとって、なかなかに珍しい状態だ。

 それほどまでに、アメリアという少女を愛しているのだと改めて思う。

 

 もっとアメリアのことを知りたい。

 もっとアメリアの色々な表情を見たい。

 もっとアメリアの助けになりたい。

 もっとアメリアを守れるような男に……。


 ──なんだこの細腕は。これじゃ、あのひ弱な婚約者一人守れんぞ。

 

 不意に、今日クロードに言われたことを思い出し、ローガンはムッと顔を顰める。


「…………」

 

 確かに自分の腕を見ると、昔と比べて随分と細くなったものだと思う。

 クロードに認められたいという一心で祖母シャロルに従事し剣を振り、拳を突き出していた日々も今は昔。

 

 最近は椅子に座る時間が長くて、身体もすっかり衰えてしまっている。


「久しぶりに、身体を動かすか……」


 ぽつりと、ローガンは呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓タイトルをクリックすると新作漫画のページに飛べます。

【漫画原作】花紡ぎの聖女は初恋の皇太子に溺愛される【1話無料】



― 新着の感想 ―
[良い点] 行け行けGO GO若旦那様!! どうせ両思いなんだから据え膳食わぬは男の恥ですぞ!! 読者は婚前交渉バッチ来いですよwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ