抹茶に立つ茶柱
私が大学生に入ってから早くも4か月が経過したし、大人に近しくなった生徒たちの中に紛れた11歳の少女が比肩して共に授業を受けているという滅多に見ない少し異質な雰囲気にもいい加減慣れてきた昨今、私には一人の同級生の友達がいた。年こそ、学科こそかけ離れてはいるけれどそれ以外の交流は意外と頻繁にある。
そんな仲の私の友達である彼女、邂徊救は生物を専攻している。
彼女の授業態度を直接見たことはないけれど、彼女、彼らの指導をしている教授の話によると、救の生物の成績は中の上。過半数よりはできる程らしく、研究レポートに描かれている材料を成した被検体の生物の絵はすごく上手らしい。
しっかりと特徴を捉えることができていて、その上、論文も比較的分かりやすく記されているらしい。
私は生物専門でも絵が達者な訳ではないから、彼女のレポートを覗き見たところで何かを言葉と紡ぐことはとてもできたものではない。ただ言えるのは、絵は上手かったということだ。
もう4か月も前のことではあるけれど、私にとっては初めての友達と呼べる存在だったから、彼女との出会いは一秒たりとも途切れることもなく常に覚えている。
彼女との出会いは私が入学してからすぐ。本当にすぐ。
この大学へは推薦で入ったため自分の低い身長に合わせて学校側から仕立ててもらったレディーススーツを着用しての入学だった。小・中・高のものよりもこれまた大層に大きい体育館での入学式は校長先生のお話に続いて在学生、我らよりも年上の先輩たちのパフォーマンスと学科の紹介の内容になっていて見るの全く退屈しないものだったと、周りの同級生の反応を見る限りそう思う。まともに入学式や卒業式を受けていない私からすればそれはそれは新鮮なもので、これを見て、更にこの学び舎に入ったことを後悔させぬよう工夫されているように感じ取れた。それは後に、救から見せてもらった救が受けた卒業式の淡々とした流れに驚いたほどだ。
ちなみにこの体育館ではまだ救の存在は認識できてはいない。
入学式を終えて、犇めく気流に疲れてしまった私は挙って出ようとする生徒たちの群れから少し離れた成人式でふざけた人が昇ってはしゃぎそうな銅像の境内に腰掛けて眼前で群がるこれから一緒に学んでいくであろう生徒たちの姿を遠目から観察していた。
「みんな元気だな・・・、もう友達まで作っちゃって・・・」
漠然ながら皆に置いていかれているような気がするけれど、今まで私は置いて行かれてばかりだったことはしかと胸に刻んでいたために特になんだ変化の無い刹那と思うことも半々。
私は仕立ててもらったレディーススーツの皺を伸ばしながら、一人一人の顔を伺っていく。
当然ながら、皆さん大きい。平均身長が160㎝なのは軽く余裕だろう。
私から見て巨神兵の地均しは主に、これから始まる学校の説明会へ行く列と、それを後日に回してさっさと帰る列の二手に分かれていて、断然後者の列の人数が多い。
この大学は、入学式の後に説明会があり、それにその後はしばらく休みがあるため休み明けまでに今日を含めて3回説明会がある。
私は今日のを行く。
こうやって座っているのは、人混みに慣れてなさ過ぎて精神的にしんどいからと思ってもらって大丈夫です。
私は妙に大きい裏ポケットから最小サイズのペットボトルに入ったお水を目を瞑って一口飲む。
何かを口に運ぶときに目を閉じてしまうのは癖。
飲料水を喉の奥へと追いやって、目を開けるとそこには見知らぬ少女がいた。
「わぁ!!?」
「ひゃぁ!!?」
彼女は私と視線を合わせるようにしながら前のめりになって、私の顔をじっと見ていた。距離感覚が過ぎていたらしく、驚きで発した声が彼女もまた驚かせた。
一体、誰だろう。
まず、そんな思惑が脳内を駆け巡るがまず最初に勢い余って投げ飛ばしてしまった蓋のしていないペットボトルをどうにかするべき。
こうやって、見つめ合っている瞬間も飲み水は流出し続けている。
「わ、わ、わ、ごめんなさい」
「び、び、び、びっくりした」
胸を押さえて肩で呼吸している彼女を横目に前方不注意の謝罪を言って、私はペットボトルを拾い上げる。残り少なかった中身はもう全くなく、近くにある噴水に流れて行ってしまって、見やったそばから水が噴き出した。
つい、見とれてしまうのは何故だろう。
「わー・・・」
「ご、ご、ご、ごめん!私がもしかしてあの子、末永定ちゃんじゃないかって近寄ったばっかりに!」
見とれていられたのも一瞬だった。すぐさま彼女は大きく頭を上下に振って謝罪をしてきた。
それにしても彼女、私のことを知っている。
「だ、大丈夫ですよ。それにしても、驚いきましたよ。私を知ってるだなんて」
いっそ、隠してもよかったのだけれどこの容姿で確認されてる以上到底隠せるものではない。
それに、この人は本当に距離感覚が過ぎているらしくペットボトルの蓋を閉めた途端に両二の腕をがしり捕まれていて迚もかくても逃げれたものでもなかった。この時、私の思考はー
一体誰だろう
から
一体何を!?
に切り替わった。内心、穏やかでない。
「いや、いやぁ、結構知名度あるってこと、ちゃんと分かってますか?私、あなたのこと、あなたがここにいることは最初から分かってましたからね」
「えぇ・・・、いつからですか?」
多少の知名度があるのは知っている。たまに載るニュースの内容が私に関する記事だったものがトップ10に入っていることは何回かは知っているし、トレンド入りしていることも見たことはある。
しかし、そこまで大きな知名度ではないと思っていて内心胸を撫で下ろしていた自分がいたけれど今の彼女の話を聞く限り、大きい小さいは別にしても満更でもない感じがするのはそう感じるだけなのかな。
それか、小さな知名度の中の知名人がたまたま彼女だっただけの話なのか。
「途中から。そう・・・、入学式の途中からですかね。私、定ちゃんの斜め後ろの席だったのですよ」
どうして気が付いたのかは、この際聞かない。小・中・高と何度か飛び級した名目の下取材を受けた際に私は写真を撮ってそれの使用を許可したのだからそれは見れば一撃で分かる。それに、写真と動揺に今日もまたマスクを着けているから知る人ぞ知れるのでしょう。
知ってもらえる分には全然構わない。
「そうだったのですか。それはそれは・・・。あの、私と言う存在はあまり口外しないでくださいね。それは少なくとも大学では望んでいませんから」
ただ、私は間違っても知名度を第一に考えているわけではない。逆にあまり知名度を挙げたくはないとも考えている。それは単純に、知名度は少なくとも今は程々で良いということと、ストーカーや拉致が怖いから。それと、知名度を上げたいのならばわざわざ何も成果を成しえていない今では少なくともないと考えているからでもある。
「そうですか・・・。私なら、即座にでも知名度を上げたいと考えますけれど・・・。やっぱり天才の考えることって違いますね!」
「天才・・・?」
「はい!天才。あなたは天才なのですよ。ていうか、その年で大学生とか天才以外の何者でもないじゃないですか」
「天才」と言われる毎度思うけど何だろう、この気持ち。嬉しいような、そうでないような。
この気持ちを理論的に話すのはとても難しい。それ以前に、もしかすると具体例ですらこの不可解な気持ちの前ではその意味をなさないのかもしれない。
これが複雑な気持ち・・・。
私は微笑む。お互い様だ。
「ありがとうございます。でも、あなたも天才ですよ」
彼女は目を見開き、私の二の腕を掴んでいた手を離して挙げる。そして大袈裟に痙攣するのだ。
「な・・・、え・・・、そんなそんなそぉんなお世辞ッ!?私なんて、定ちゃんの足元にも及ばないよ!
だってほらぁ、さ、定ちゃんみたいに私ッ、飛び級とかなかったしッ、物理化学無理だしッ、計算どちらかと言えば苦手だしッ、フェルマーの最終定理なんて意味不明だしッ!!」
フェルマーの最終定理に関しては私にも分からない。けど、相対性理論は大方理解はできる。いつかの彼に憑依するように考えればブラックホールの存在を遥か過去から示唆していられた訳もわかる気がする。故に私は天才ではない。
私は静かに首を振る。
「私は天才じゃありません。けど、多分、恐らく、あなたがそう言うということはきっと私は天才なのでしょう。でも、私にとっての天才は、目標を実現させるためにいつ、どんな時でも絶え間ない努力ができる方が天才であると思います。それか、もしくは、本来ならばこれは何の成果も出せないであろうことでも成果結果がしっかりと出せる人がそうであるとも思います。だから、私はあなたを天才とします。この大学は世界でも有数な強豪大学。生半可な努力では入学は許されない場所なのです。今日の講演を見たということはあなたは努力してしっかりと結果を出したということなのです。天才です。紛れもない人としての天才です」
才能は有限 努力は無限。まったくその通り。
私のお話を聞いた彼女は今にも泣きそうな顔をしながらしばらく握った拳を小刻みに振るっていたが何かを思い立ったかのような表情に転換した途端に彼女は動きを止めた。
「ありがとう。天才、・・・天才・・・ね。でも、私はこれから天才といてやっていけるのか心配だよ。
定ちゃんみたいなそういう万能な才能ないし・・・」
私はやり返しも兼ねて彼女の右二の腕を軽く握る。大丈夫。私の握力は2年前時点で19だったから大丈夫。少しは運動した方がいいかもしれない。
「才能も努力の内なんだよ。生まれた時の子供の知能って大体例外なく皆同じなんですよ?平均値どころか絶対値まであるくらいなんですから。そしてこれから育つ環境によって身に付く能力が枝分かれしていくんですよ。ほら、性格にもよるれど男の子なら極端にミニカーとかプラレールとか欲しがる傾向があって、女の子なら可愛いぬいぐるみを欲しがる傾向があるのと同じです。ご両親が音楽をよく嗜むのであればその環境下で育った子供は必然的に音楽の子になる傾向がありますし、工学が達者な環境で育てば必然的に理系の工学の子になる傾向がありますし。それで身に付く能力こそ素質なんです。まだまだ小さい子供は感受性が豊かでどんなものにも興味を示します。そしてまだまだ学が無い分、学習能力が非常に高いんですよ。だから見て、やって、覚えていくんです。自分の興味のあることを。それが後の好きなことで後の素質なのです」
「じゃぁあれですね!定ちゃんは、えー・・・」
「科学です。別に科学の過程で育った訳ではないんですけれど、はい、よく人間を観察する環境で育ちました。両親の職業は生憎、箝口令が敷かれて言えませんけどお二方、観察が必要不可欠な職業ですから。だから、そうして育んだ素質で後々如何に研磨できるか次第でそれが才能になるんです。その努力の結晶たる才能を磨ける人こそ、私は正真正銘の天才だと思っています」
私は熱くなった顔を深呼吸で取り入れた酸素で冷やし、彼女の二の腕から手を離す。
「えー・・・っと、その・・・、あなたの学科は・・・?」
彼女は聞いていたのか聞いていなかったのは判定が付かない唖然とした表情をしていたけれど、すぐに我に返って頭を振る。
「あっ、えぇと、生物です。生物、好きなので」
「じゃぁ、それがあなたの素質にして、才能なのかもしれません。生き物が好きであるという素質、そして好きである生物をより知りたくて勉強を重ねてここに来たのでしょう?更に学ぶために。あなたは天才ですよ。それに、天才は万能でなくていいし、万能に天才はつい物ではありませんから」
彼女は破顔した。私はというと、わからない。自分で、どんな顔をしていて自分論理を語っていたのか分からない。けど恐らくそれは分かったところで理解はできたものではとてもなかったろう。
嬉しそうな顔だ。今、私の言ったことが彼女にとってのアドバイスになったように感じて、こっちまでも嬉しくなった。
嬉しくて、破顔しそうだ。
「ははは、そうか、そうか。私も天才だ!天才ちゃんに天才と認められたッ!!」
微笑ましい。私もかつてはこんな感じだったのかな。彼女は私の手を取る。
「わっ」
「ありがとう定ちゃん!そうだ、そうだよね。努力は怠るな。定ちゃんはそう言いたいんだよね!よく分かった。今までの誰よりも分かりやすい理論だった!ありがとう!」
私の手を握りしめたまま、上下に大きく揺さぶる勢いはまだ身体年齢小学生級である私にとって、とても耐え難いものだ。
「あっ、うん!それは良かったよ、こちらこそありがとう。あの、そろそろ肩甲骨から先が君に持ってかれそうだからストップを」
「あぁ、ごめんごめん」
彼女はゆったりとした動作で私の手を手の内から解放し、そして伽藍堂は同然の手を心臓のある胸に当てて立ち上がる。
「私、徊邂救。定ちゃん。無理は重々承知だけど仲よくしてくれないかな?」
「・・・、この世に理が無いなんてことないよ」
私は手を差し伸べる。
「よろしくね。できる限り、私は君の友達でいるよ」
「ーッ」
正直、私は救と盃を交わさんとする決断は少々容易ではなく、大いに思い悩んだ。
過去にこうして私に手を差し伸べてきた人が何人かいたけれど、私はその全ての人に悉く裏切られては肉汁啜られて終わった。私にとっての人間は、人間以上に信頼すらならない生物はいないだろうと思想が固定化してしまうまでには人間を心底信頼も信用もしていない。結末さへ分かってしまえばこっちは気楽に庵点をつけることはできるんだけれど、残念ながら未来予知や透視能力の類は持ち合わせてはいない。
だから、人間は信頼も信用もできない。だからこそ、迷った。
彼女と手を取るか、肩甲骨から先を取られて喰われるか。結末は二つに一つ。
明瞭な話、私は彼女の頼みを断るに針が傾いていた。今現段階では、彼女のことはよく知らないしこの人が人を裏切ることも厭わない人であるかどうかが分からなかった。だから、私は自分の理論を語ることによってその尺度を図ったつもりだった。
けど、謀をいくら拱いたところでやはり彼女が見せる感情が本物であるかどうかは断定が付かなかった。特に図星を突いたような顔は見せなかったし、こっちもこっちで虚を突くどころか虚無を突いた感覚だった。
この時点で私の万策は尽き、私の通っている大学も知られたくはなかった今は頼み事は靄をかけつつ保留として徐々に彼女を観察していく過程で仲を深めていこうかという考えに到達していた。
で、あるにも関わらず彼女との友情を結んだのには理由がある。
何か気持ちの悪い何かが胸の内を横に駆け抜けたの。そこに理由があっても目的はなかった。
本当にここで彼女と縁を切るに近しいことをしては果たして良いのだろうか。
それは彼女から話しかけてきたのにも関わらず余りにも筋違いなのではなかろうか。
彼女を遠ざけることをして、また私は孤独に呑まれるのか。
人を信用とまではいかなくても、信頼すらできないのかお前は。
そうやってまた、人に拒絶された体験を人を拒絶することの経験としていないか。
その時の体験はあくまでその時の体験でこの時の経験でも理由でもない。
そんな気持ちが脳裏と胸の内を駆け抜けた。
この気持ちを言葉に表すのは1時間猶予が与えられても難しいもので、それ故に、この気持ちを追い払う方法を考えることすら億劫になってしまう。
そして、最終的にこの不可解な感情を祓う方法を探していたはずの思考はいつの間にか電車を乗り換えて、彼女の差し伸べられた手を受け取る形として不可解な感情を呑み込むことに終点を下りてい
た。
いや、言葉足らずだね。
不可解な感情を呑み込んだのではなくて、実際に私はそれを祓うことに成功してのだ。
だって
「定ちゃん!定ちゃん!ねぇ、定ちゃんって呼んで良い?」
「いや、ほぼ最初からそう呼んでたよね。良いよ。好きなように呼べば良いと思うよ。・・・さてと、列も空いたし、行こうか」
救の手を取った時に、不可解な感情は揺蕩って消えていたのだから。
「うん!」
そう笑顔で頷いた彼女、徊邂救は今、私のことを興味深そうに、そして、不可解そうに見ている。
そして注目の的である私はと言うと、茶筅でお茶を点てている。
零れないように、変に泡が沸かないように慎重に且つ早くお茶を点てている。
救はこの夏の間、病に掛かって闘病生活を私生活と掛けてしていた。死に纏わる不謹慎なものでこそ滅相もないけれど、軽く精神が文字通りゲシュタルト崩壊を起こしてしまう重病を彼女は患った。
今はその病気の応急処置中。
ここは徊邂家の最奥、百花繚乱の花々が咲き誇る庭が風景となれる場所に位置する小さな
茶道室。正しくは、茶道室としての運用ができるように空き部屋を改造した茶道室。
そこに私と救が二人、同じ小宇宙で息をしている。
この宇宙には、月と太陽だけ。故に皆既月食が発生していておまけにプロミネンスまでもが轟いている。
あ、よく見えないね。じゃぁはい、これ。
ー何これー
Words;〽: (ワーズ・セミコロン・イオリ・コロン)
滞りなく読めるようになるよ。
ー・・・ー
準備は良いね。
それじゃ、感じよう。宇宙を、
地球での居心地が悪過ぎて宇宙へ行った一人の少女と、それを追いかけて宇宙へ辿りついた一人の少女の
夏の一季限りの物語を。
====在るとして無かった未来====
どうも、最近5月病を患ってから後4か月程で一年を迎える有機物の轆轤輪転です。
何故治らない。
今章から季節の脇隔てを経て始まった夏編、トップバッターは天才定ちゃんに飾ってもらうこととします。そう言えば数あるオリジナルキャラクターの中で「そして夜が明ける」の執筆にあたって登場人物の№2として生まれてきたのが定ちゃんでしたね。「そして夜が明ける」のプロトタイプの執筆からもうおよそ3年近くの月日が流れましたがその中であまり初期設定時の原形を多く留めたキャラクターの一人です。
そんな定ちゃんは天才にして天才ちゃんです。しかしされどまだ12歳です。
皆さんは12歳の頃の自分を覚えてはいますか?おそらくですが、12歳から年を食っている人は中学受験の忙しさや中学に入学、在学して気分が高揚して等で自分自身に構ってはいられず、もはやかつての情景を思い出せない人も一定数いるのではないのでしょうか。
まさしく私がそれで、高校生として生きている今となっては小学生高学年の頃の記憶なんて途切れ途切れではありますがそのほとんどが言うならば忘却の彼方に咲く一輪の花は同然です。
不思議と鮮明な記憶が始まているのは中学1年生の2学期後半からです。
記憶とは何かしらの衝撃を受けて始まるものらしいのですが、はて、その頃私は何してた?
そんな儚くも尊い記憶が消えようと塗り替えられようとも不思議と今の世界観の原形は当時のままなのですね。でなきゃ、この今の世界観は一体どう説明付ける?って言われてしまいます。
最も、世界観なんてとてもとても説明できたものではありませんが。しかし、記憶が世界を観るための眼たらしめていることは間違いないでしょうと思います。
だから12歳の頃にも、自分なりの世界観があったことは紛れもない事実でしょう。
身体だけでなく精神までもがまだまだ幼い小さな子。その子には一体どんな世界が観えているのでしょうね。すごく、気になるところですね。
さて、今回、末永定ちゃんが主人公を担う「そして夜が明ける ー悪魔の証明ー」がこれより解禁いたしました。興味深くも、頭脳明晰で小さいながらも大人びた性格の彼女はこの夏どんな世界を観て何をすべきと感じて何をするのか。そして読者諸君らの眼には文字のみが羅列を成すこの電波から何を観、見つけ、汲み取るのでしょう。
そんな物語を予定しています。
後書きでこんな洒落にならないことを語るのは初めてで、そしてもう当分ないことでしょう。
今回は「そして夜が明ける ー悪魔の証明ー」の第一話を読んでいただき誠にありがとうございます。
その人間を読むことをどうか止めないでくださいね。
それではまた逢う日まで。