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花と散る

作者: だふにあ

恋愛には様々な段階がある。片想い、告白、契約、待機、成功、失敗、破局、結婚、などが挙げられよう。

今の私は上記でいうところの3番目、待機の段階にある。例えば片想いや告白といった段階のものは一言で表すなら激情。燃え上がる様な感情を無防備な相手にぶつける無責任な行為である。つまり私は彼女に対してそういった傷害をはたらいたということである。その上で後ろにある暗黒から一秒でも長く逃れるために契約の段階を踏んでいないために頓狂な状態にある。

一般的な告白はというと契約とセットにして考えられることが多いように感じられる。

「好きです。」までは告白であるが、「付き合ってください。」は契約であり、告白とは呼ばないのではないかというのが私の持論であり、怯える私は契約を取り付けなかったのである。ここで契約の話を持ち出していれば苦しむことも無く即死であったろうにそうしなかったが為に長い時間をかけ緩やかに死へと向かっているのだから笑えない。そのような状態を私は題目でも挙げているように「花と散る」と表現することとした。元はと言えばこの言葉は死ぬことを婉曲に表現したものであるが、花というものは一瞬で散りはしない。緩やかに散っていくものである。そんな緩やかな死をこう呼ばせてもらうことでせめて自分の見るに堪えない恋愛の全てと私の終わりを美しく表現させて頂きたいのである。

さて、契約というものは厄介である。実行者はといえば時間をかけて準備をし、心を整えた後にやってくるのに対し、その相手にとっては青天の霹靂。断ることすら困難な代物に見えるはずである。そのため実行者の心の準備と同じほどの時間をかけて円満に断る道と言葉を探すのである。相手からしてみれば迷惑な話である。そんな迷惑を突然彼女に押し付けているという罪悪感もまた、私を緩やかに殺しているのだ。そして、恋愛の厄介なところといえば自分では死にきれないことにこそあるのであろう。私が彼女の返事を待つ永遠に感じられるこの残酷な時の進みに幾らその身を妬かれても、彼女の顔を、声を、その全てを頭の中で駆け巡らせ心の臓を痛めつけても、罪悪感に押し潰されても私は死なない、基、死ねないのである。最後の止めは彼女にしかさせないのである。悶え、苦しみ、悩み、痛み、疲れ、どんなに打ちひしがれようと眠ることは許されないのである。なんと残酷な行為であろうか。それ故に、その先に待つかもしれない希望があまりにも眩しく感じられるので、人はおろか全生物が恋を止められないのであろう。しかし、私にとってこの光は眩しすぎた。直視することも叶わずその光に背を向け、契約を見ないふりをした原因の闇に甘美な誘いを感じるのである。滑稽。

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