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鳥娘(トリコ)第1章「神の子」

作者: てくろう

序章

 深夜の中、軍装した男性二人が、獣が多く潜む密林の中を狩猟の帰りに彷徨っていた。男性二人は、火縄銃を両手に持ち、警戒態勢を取りながら、一人は前を、一人は後ろを見渡しながら、忍び足でゆっくりと先を進む。

男性A「おい、俺たちこのまま帰れるのかよ?獣が多くて、たくさん狩れるのは良い事だが、この密林なんだかとても広くて、不気味だ。」

男性Aは不満気に言う

男性B「大丈夫だよ、迷子にならないように真っすぐ北の方角へ進んだんだから、このまま南の方角をたどっていけば村へ帰れる。」

男性Bは、少し焦った表情で確信する。

男性A「そうはいったって、かれこれ6時間もたってるぞ?行くときはそこまで時間かからなかったろう?」

男性Aは、身にまとっていた木時計を確認し、言う。

男性B「大丈夫大丈夫、なんとかなるさ」

男性Bは、焦った表情だが、自信あり気に言う。


その時だった。男性Bの目の前に現れた黒影がハヤブサのように猛スピードで男性Bに近づいてくる。ものすごい勢いで風が吹き、前を見渡していた男性Aが、追い風を感知し、後ろを振り返る。

そこには、黒影は写っていなく、男性Bの姿も消えていた。


男性A「おい、どこに行ったんだよアイツは?なんだ?脅かしてんのか?返事しろよ」

男性は、冷や汗を流し、動揺しながら言う。


しかし、男性の返事はなかった。なんの冷やかしでもなく、男性の姿や気配はなくなっていた。


そして、振り返った男性Aの後ろから黒影が現れ、二足歩行でノコノコと男性Aに近づいてくる。男性Aは、黒影の不気味な気配を察知するが、恐怖のあまりに、腰が抜け、後ろを振り返れなくなる。


黒影は、よだれを垂らし、唸り声を上げながら男性Aに襲ってきた。

男性A「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

男性Aは、そのまま悲鳴を上げ、その日から、二人は姿を消した。


第一章「神の娘」

 狩猟へ出かけた男性二人が姿を消した数カ月後、故郷であるリーサスの村では話題になっていた。

村人達がひそひそと都市伝説や噂話が繰り広げられる。


村人A「なんかさ~、聞いた話によると、その森見た事のない妖怪がすんでるらしいよ~」


村人B「いや~怖い怖い、食料を調達してくれるのは有難いけど、狩人にはなりたくないね。」


村人A「ほんとそうね~、あの森には、一度入ると二度と戻って来れないってよく聴くし、本でも書かれてたみたいよ~」


男性らを襲ったのは、怪人だの化け物だの、生還不可能だのと次々と噂が増えていく。

その一方で、村の村長率いる村民と議員達が、狩人の男性二人が姿を消した”あの森”の事件について、会議を行っていた。


村長「数カ月前に、この町からはるか遠く離れた北にある密林”ボルカナ密林”に狩人二人を派遣したわけだが、未だに帰還しておらぬ、何か心当たりのある奴はいないか?」

村長は、眉を顰め、冷静沈着に話す。


村長の言葉に次、議長がこたえる。

議長「数日前に、調査官をボルカナの方へ派遣しましたが、どこにも彼らの血痕は残っておらず、行方は分からないみたいです。獣の仕業でないことは確かでしょう。人間の仕業である可能性もあります。」

村民たちは、議長の言葉に驚愕する。


そして、村民たちは、複数人で聞き返す。

村民A「どういうこっちゃ!人間がやるとしても、あの密林の中に踏み入れるのは狩人くらいだろ!」

村民B「そうだ!そうだ!あの密林の付近には、村や町がない、ボルカナ密林に近いのは、俺たちの住んでいるリーサス村しかないぞ」

村民C「そもそも付近の森林や密林でも、獣を狩れるのに、何ではるか遠くにあるボルカナ密林に派遣したんだよ!おかしくねえか!?少し前まで付近の森に狩猟させてたろ!」


議長や村長の言葉に、炎上し、村民たちの意見が飛び交う。


副議長「付近の森は、水不足によって生き物が餓死してきているんだ。ボルカナ密林は、高台にあり、雨がよく降る上に、付近に村がないため、多くの生物が生息していおり、狩猟に適した場所なんだ。」


村民たちの全く呑み込めていない発言対し、副議長が丁寧に説明する。


その時、村民の中から一人の男性が挙手する。

挙手した男性に周囲が目を向ける。


村長「ん?そのものよ、見慣れない顔だな、村人かどうかはさておき、どうしたのだ?」


挙手した男性は、スリムな体型をしており、少し焼けた肌で、継ぎ接ぎした民族衣装をまとっている。表情は、希望に満ち溢れたつぶらな瞳で、真っすぐな目をしている。ボロ着とは一変に、銀色の首飾りを身につけている。

銀色の首飾りを身につける事が出来るのは、どの村の掟でも、共通して高い業績を得たもののみ認められる。

そして、男性のズボンを掴んだ丸っこい小さな手で、男性の背後に隠れる小さな赤頭巾を身にまとった女の子もいる。


挙手した男性が言う。

男性「この難解な事件、我らも調査官とご同行を願いたい。」


男性の身に着けている銀色の首飾りが目立ち、周囲の目を焼き付ける。

そして、周囲の村民は、銀色の首飾りを見て、ざわつき始める。


村長「そなたよ、村の者ではないな、簡単に許可を得るわけにはいかないが、何か知っておるのか?」

議長「その銀色のネックレス、只者ではないな、何を企んでいる、そしてどうやってこの村に入った?このリーサス村は、この村民の者以外は禁じられている。旅の者でも簡単に入れないはずだが?」


議長の問いに、男性がこたえる。


男性「我は、ここからはるか海を越えた南西にあるトデット城の騎士である。聞いたことはあるだろう?トデット城国王は、我らの国の天下統一を果たした偉人、そして私は王に仕える騎士。天下の城の騎士である以上、どんな場所であろうと、通行許可を得る事が出来る。それを破れば、そなたたちは、城の掟に抗ったとして牢獄行きになる。これが何よりもの証拠だ。」


男性は、ポケットから城の騎士であることがわかる通行証を見せた。

すると、周囲の態度が変わった。


村長「これはこれは、無礼なところをお見せしました。まさか、城の者が、わしらの小さな村に訪れる事は今までになかったものでして、、、」


村長は、男性の正体を知ると、恐る恐る態度を改める。


議長「ですが、トデット城の名高い騎士が、何故我らの事件に構うのですか?有難いのですが、私達の村は独自の文化とノウハウを駆使しながら村民と力を合わせて、外部との交流は一切なく様々な苦境を乗り越えてきました。」


男性が、微笑み議長の質問に答える。

男性「これは、城の命令ではない、私個人の好奇心によるものである。

この村に来たのは、休日の気晴らしで来たつもりだが、村民の噂話を耳にし、村会議に参加することにした。だから、無理に同行させろとは言わない、もちろん武力行使もしない、決めるのは、そなたたちであり、私に権限などない。」


男性は、真剣な表情をして言い続ける。


男性「私の行動は、浅はかに思えるかもしれない。だが、この銀のネックレスを見ての通り、私も城の騎士であり、いくつもの苦境を乗り越えてきた。今までの経験と、実力を踏まえて私の些細な好奇心とわがままにかけてみてはいかがか?そちらの人材も少ないのだろう?この難解事件、必ずや明らかにして見せる。」


村長達は、彼の要求に対し意見が分かれた。

議長「騎士様の願いを呑み、事件の捜査に関わる事を私は認めたい。ただし、村人の身に何かあれば、辞退していただく事にする。そちらに権限はないと申しましたな?」

男性が頷く。


男性「うむ、村人達一人も死なさせぬ、勿論、裏切りはせん」


村長「わしも議長の意見に賛成じゃ」


村長と議長が、男性の同行に賛成派だが、副議長は反対派の立ち位置にいた。


副議長「何故認めるのですか!?どこぞの馬の骨も分からない他所のものを簡単に見送り出していいと思ってるのですか!?何か企みがあるのかもしれないのですよ!?」


副議長は、感情的になり、声が少々荒々しくなる。


村長「わしも、彼を完全に端から信用しておらぬ。しかし、これ以上村の犠牲者も出すわけにもいくまい。彼の目は、わしが見て来た中で、裏切り行為などを行った事がないような目つきをしている。彼とは今さっき話したばかりじゃが、希望の光が薄々と感じるのじゃ、どうじゃ?一度信じてみないか?」


副議長「私は絶対に認めません。こうなったら村民の意見も取り入れ、多数決で決め合った方がいいかと思われます。簡単に信用して足元をすくわれると、今まで村民と積み上げてきた努力が水の泡になるのかもしれないのですぞ!!」


議長「よし、わかった。それなら多数決で決めようではないか。同行の賛成派が多ければ、彼をボルカナ密林への捜査の協力を許可する。逆に、反対派が多ければ、この村を出て行ってもらう。」


男性は、当然のごとく、頷く。


また、村民たちが、賛成派に回るか、反対派に回るかで、騒がしくなる。

村会議の参加者は、騎士と少女を除いて20人、どちらかが11人を上回れば、決定する。


多数決のルールは、挙手制である。


村長「では、彼の派遣を賛成するものは、挙手せよ。」


すると、なんとも半分以上が彼の派遣に賛成派だった。


副議長は、多数決の結果に納得いかず、さらに感情的になる。


副議長「何故手を挙げるのじゃ!愚か者共が!!わしを裏切る気か!わしは納得いかん!!」


副議長は、思わず手を出してしまいたいぐらい怒りをあらわにするも、こぶしを強く握りしめ、歯を食いしばり、怒りを抑えようとする。


村長「副議長、お気持ちはわかります。でも、多数決できまったことじゃ。裏切ったわけではない。あなただけが村の事を思ってるのではないですぞ。」


議長「そうだ。同じ上のものとしてはしたないぞ」


副議長は、「勝手にしろ」と捨て台詞を吐き、会議を投げ出す。


議長は、やれやれとあきれた表情で、村会議を仕切りなおす。


村民の反対派の人達も、ブツブツと陰口を言う。


議長は、騒がしい村民たちの私語を慎ませ、村会議を仕切りなおす。


議長「先ほどは、お見苦しいとろお見せしました。以上の村民11人以上が賛成派ということで、騎士様の派遣を許可する。」


男性は、頷き、続けて話す。


男性「人は懸命に生きていれば、こういう時だってある。私も他所のもので申し訳ない。ですが、決まった以上、必ずや任務を果たして見せます。」


彼の宣言に対し、村民たちの歓声が沸き上がり、彼を拍手喝采する。


男性は、続けて言う

男性「そして、もう一つ頼みがあるんだが」


村長「はい?なんでしょうか?」


男性「私の娘も一緒に同行してもよろしいか?」


男性がそういうと、男性の背後から顔半分に覗いていた少女が、咄嗟に顔を隠す。


議長「な、なんと!その幼い少女を現地に立たせるのですか!?」


村長らが唖然と男性の顔を見つめる。


男性「この少女も、只の少女ではない。私の娘であり、騎士の血も引き継いでおり優れた嗅覚と視野を持っている。そして何よりこの娘は、神の子として生まれてきた。」


村長が首を傾げて言う。


村長「神の子ですと?」


議長が続けて言う。


議長「この娘がですか?」


男性が続けて答える。


男性「ああ、そうだ。神の子というのは、生まれたときから魔力と知力を秘めており、強大な力をもたらす。この娘は、既に魔法も使えるし、魔導書も読解できる。」


男性は続けて言う。


男性「そして、この娘は、銀の簪で髪の毛をまとめている。」


男性は、銀色のネックレス、女性(女子)は、銀色の簪として、業績を得たものだけが身に着ける事が出来るどの村や町でも共通した掟である。

男性は、体を翻し、背後に隠れていた少女にしゃがみこんで、少女に耳元に手で覆い隠しながら、小声でヒソヒソと話す。

少女は、男性の言葉に納得したかのように、行動に移す。

少女は、先ほどの態度とは一変し、周囲に堂々とかぶっていた赤頭巾を外し、簪を見せつける。

確かに、男性が言うように少女は銀の簪で赤髪をまとめていた。


村長は、少女の髪の毛を見て、唖然とした表情で感想を述べる

村長「なんという、珍しい髪色なのじゃ、とても繊細で感銘を受けました。」


それを見た議長らや村民も、簪よりも、赤髪に目を焼き付ける。

少女が簪を見せると、咄嗟に赤頭巾を被り再び男の後ろへ隠れる。

銀色の簪に首飾りを纏った親子を見て、こんな小さな村に高い地位を得ている者が手を差し伸べるという不可解な事を半信半疑ながらも、少女の派遣に承諾を得た。

例え、少女の身に何かあったとしても、少女の父親と、村の兵が護衛についているので心強い。


村長「こちらにも、村の兵を派遣致します。明日の朝4時に村の出口で待ち合わせとしますぞ。」


村長の言葉を把握し、男性は、相槌を打つ。


そして、男性は用を済ませたので、背を向けその場を立ち去ろうとすると、議長が何か言いたそうな表情で男性を引き止める。


男性は、議長に振り向き、用件を尋ねる。


議長「聞きそびれましたが、騎士様、名は何と言いますか?」


男性は、言い忘れてたかのような表情で答える。


男性「そうだったな、自己紹介がまだだったな。俺の名前は、ラミアだ。そしてこの娘の名前は、、、」


騎士は、下半身の後ろに隠れる少女に振り返り、自己紹介をするよう頭をポンポンと叩き、仕草で意思疎通を図る。


少女は察し、再び前へ自己紹介をする。


少女「ユキっていうの」

ユキはまた咄嗟にラミアの下半身の後ろに隠れる。


村長「ユキ様にラミア様、何故このような経緯に至ったのか理解兼ねませんが、この村の救世主となり心底感謝いたしますぞ。」


騎士は相槌を討ち、答える。

ラミア「ただの暇つぶしのようなものだ。そこまで感謝しなくてもよいぞ。」


議長「暇つぶしとは言え、この村を救ってくださるのですから、今夜の夜にでも宴を開き、祝福いたしますぞ」


ラミアとユキは、焦った表情で断るが、周囲の同調圧力から夜の宴に歓迎されるのであった。


そして、村民が舞踏や演芸を披露し、宴を盛り上げ、美味しいご飯を食べ、ラミアとユキも夜を満喫した。奇想天外な事もあった村会議無事幕を閉じた。
















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[良い点] 割と惹かれる書き出しでしたので、あらすじやキーワードが設定されていればなお良いと思いました。
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