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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
十四歳のつらい冬
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事件発生!

 頼んだ品がくるのを待つ間、あたしは両親を問い質すことにする。


「ねえそれでお母さん、お父さん、事件ってなによ?」

「あのねオチャコ、お父さんが東京の本社勤務になるのよ」

「え、それじゃお父さん、いわゆる《単身赴任》とかになるってこと?」

「違うわ。浅井家の三人が揃って、東京へ引っ越すのよ」

「ええっ、ちょっと待ってよ!! あたしイヤだよう」


 そんなことになれば、トシヨンとも明智くんとも離れ離れになるじゃん!


「無理を言わないの。お父さんにとっては栄転になるのよ。オチャコに分かるかしら、栄転って」

「それくらい知ってるってば! そんなことより、あたし一人暮らしするわ。だから今のまま北琵琶学園に通って、大学は東京にすればいいのよ」

「ダメです! あなたが一人で生活できる訳ないでしょ」

「そんなあ……」


 ああ、北琵琶学園が全寮制の学校だったらよかったのに。

 こんなこと、今さら願っても遅いけど、そう思わずにはいられなかった。


 あたしは、自分でアルバイトして自活するだとか、色々言ってはみたけど、どんな案を出そうとも、ことごとくお母さんが却下するのよ。

 今回ばかりは、お父さんも、あたしの味方にはなってくれなかった。


「済まないなオチャコ。お父さんの都合で、お前につらい思いをさせてしまうことは、お父さんにとっても結構つらいんだ。ここは一つ、どうか聞き分けて貰えないかなあ?」

「うーん、お父さんから、そこまで言われちゃあねえ……」


 既に万事休す、といったところだわ。

 こうなったらなったで、先のことを考えるしかない!


「ねえ、そうしたら、あたしは東京で、どこの学校へ行くのよ?」

せいアガサ女学院という名門校があるのだけど、そこと北琵琶学園とが横の繋がりを持っていて、互いに無試験で生徒を受け入れる体勢ができているの。今回のように急な転勤とかあった場合に備えてね」

「聖アガサって、聞いたことあるわ。そっか! そうなのよ、玉紗さんが、そこから転校してきたのだった!」

「細川さんという、お嬢さんのことね?」

「うん。二学期の初日、北琵琶学園にやってきたのよ。それで今度はあたしが、あちらへ行くことになるのかあ……」


 それが少し奇妙で、不思議に感じるあたしだった。


「ねえオチャコ、冬休みのうちにもう東京へ行っちゃう? それとも、三学期の始業式に出て、クラスの皆にお別れしてからにする?」

「そうね、あたしは黙って二年梅組を去るなんてイヤだから、始業式には出ることにするよ」

「分かったわ。そうしなさい」

「うん」


 オチャコ十四歳の、つらい冬が始まったのだわ……。

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