オチャコ初捜査の結末
席に戻って座り、中途になっている「冷やし海老天うどん」を食べ終える。
あたしは全神経を研ぎ澄まして、バッチリ推理できたわ。
まさにフルパワー全開モードでね。それで捜査方針を導き出したの。
「この近所にある安売りのスーパーは?」
「マンマルヤがある。それとエクスプライスもな」
「どっちが近いの?」
「距離的には、マンマルヤが少しだけ近いな。まずは、そこへ行くか?」
「うん、そこだと思うわ」
それであたしは、金田一お兄さんが運転する車で、一キロメートルくらいの距離にあるスーパー「マンマルヤ」に向かった。
そこの店内へと入り、うどんなどが置いてある冷蔵の商品陳列棚まで行く。
丁度その時、一袋十七円の「ゆでうどん」を三袋まとめて手に取り、お買い物カゴに入れようとしている、三十歳くらいの男性を見つけた。
あたしは、その者の正面に立ちはだかり、毅然とした口調で言ってやる。
「本日あなたは、《讃岐うどん本舗 麦斗屋》さんのお店で、天かす、刻みネギ、汁の窃盗を働きましたね?」
「えっ!?」
その男は怯んだよ。
「面が割れてるんだ。さあ観念しろ!」
金田一お兄さんが厳しい口調で言って、プリントアウトして持ってきている写真を掲げた。
「済みません、済みません……ぼく、失業しちゃって、お金がなくて……」
男はしゃがみ込んで、ポロポロと涙を流すのだった。
あたしは、声を少し穏やかにして言う。
「麦斗屋さんに、ちゃんと謝って下さい」
「は、はい……」
あたしと金田一お兄さんは犯人を引き連れ、浪江さん、お母さんたちが待っているお店に戻った。
浪江さんは怒らないで、「お金ができたら、食べにきてね」と言って、犯人の男を一切咎めなかった。男は頭を深々と下げ、お詫びの言葉を繰り返し、そして帰っていった。
発生から、僅か一時間で事件解決となった。
この話の顛末を、さも得意げに、お婆ちゃんに話したわ。
あたしが、「あたしって、プチ・シャーロック・ホームズだね!」なんて言ったら、お婆ちゃんが「オチャコはホームズというより、むしろアガサ・クリスティかしらねえ」と言って、とっても楽しそうに笑ってくれたの。
だからあたし、凄く嬉しくなったんだよ。アガサは探偵じゃないけど、そんなのはどっちでもいい。
こうして当初の予定通り、午後三時、帰宅の途に就くことになったわ。