家族でファミレスへ
二学期の終業式を終え、あたしはトシヨンと付属図書館へ行った。
冬休み期間は普段より四冊多く借りていいことになっているから、厳正なチョイスで七冊を決めた。トシヨンは三冊だけ借りてたよ。
バスを先に降りてゆくトシヨンと別れ、あたしは一人になった。
正午を三十分近く過ぎた頃、ちょっと重くなってるカバンを背負って、浅井家に帰宅した。こんな状況のあたしだから、もうお腹ペコペコなのさ。
二階のお部屋で着替え、また下に戻ってダイニングルームに入る。
「ねえねえお母さん、お昼なあに?」
「外へ出て食べるわよ。お父さんも、もうすぐしたら帰ってくるから」
「えっ、そうなの!?」
休日でもないのに、こんなことって初めて。
それで、あたしはピンとくる。オチャコ自慢の推理脳にね。
「ねえお母さん、なにかあったの? ねえ、あるんでしょ?」
「そうよ。あなたに話しておくことがあるから、今日はお父さん、お仕事を午前中だけにしているの。そろそろ帰ってくるわ」
「事件?」
「オチャコにとっては、ある意味そうかもね」
「ええっ、どんな事件なの? ねえ教えてよ!」
このタイミングで玄関の開く音がして、お父さんの叫び声もする。
「おーい、準備できてるかーっ!」
「できてるわよー。すぐに行くからっ! オチャコ行きましょ。お話の続きは、お昼を食べながらよ。さあ急いで」
「分かった」
お腹ペコペコだから、早くなにか食べたい気持ちに変わりはないからね。
近くのファミレスに、お母さんが運転する車でやってきた。
時刻は午後一時を過ぎていて、店内のお客さんはそれほど多くない。
ほとんどの学校は、もう冬休みに入っていると思うけど、大人はまだ、もう少しお仕事が続くのだろうからね。
《ここにくるのも久しぶり。なに食べよっかなあ~》
三人で、六人様用テーブルに陣取ることができた。
向かい側にお父さんがいて、あたしとお母さんが並んでいる。
「あたし、ハンバーグ・ランチセットにするわ。お父さんは?」
「父さんは、ロースとんかつ膳にするって、もう決めてたんだ」
「ふうん。お母さんは?」
「私は、サイコロ・ステーキ定食よ。昨日からそうしようと決めてたの」
笑顔のお母さんが呼び鈴を鳴らした。
「ねえ、もしかして昨日から、この予定決めてたの?」
「そうよ。でもお父さんの都合がハッキリしてなかったから、夕食になるかもしれなかったのよ」
「ふうん」
学生アルバイトっぽい感じの若い店員さんが、テーブルまで注文を取りにきて、三人それぞれの選んだメニューを伝えた。