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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
十四歳のつらい冬
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素敵なパーティー

 十二月二十四日の夕方、あたしがトシヨンと一緒に、明智くんのおうちにやってきて、二人同時に驚くのだった。


「うわっ綺麗、なのよこれぇ~、素敵!」

「本当だわ、とってもロマンティック!」


 ここがお寺の境内だとは思えない光景が広がっているから。

 敷地の中央に、五メートルくらいもの高さがある、大きなクリスマス・ツリーが立っていて、その周囲にも、作り物だけど、二メートルくらいのツリーが円を描くようにして、沢山並んでいる。

 それらすべてにイルミネーションが施されていて、白、赤、緑の光が、交互に優しく煌めいているのだもの。とても幻想的よ。


「いらっしゃい。二人が一番乗りだね」

「あ、光男さん。こんばんは」

「明智くん、今日はお招き下さってありがとう」

「どう致しまして」

「ねえ光男さん、この大掛かりな飾りつけ、凄いね!」

「これらはね、毛利もうりさんのお父さんがやっている会社で、今年処分することになっていたみたいなんだよ」

「え、毛利さんって、菊組、テルモっちのこと?」

「そうだよ。毛利さんのいえは、うち檀家だんかさんなんだけど、輝母てるもさんのお父さんは、イベント用品をレンタルする会社をやっているんだ。それらレンタル品は、流行に合わせて数年で入れ替える必要があるから、僕の父が聞いてね、その古い方を譲って貰ったって訳なんだ」


 そっかあ、明智くんと毛利さんがそういう繋がりがあったとは。

 世間は広いようでいて、結構狭かったりもするわね。


「あ、あたしたち、なにか手伝おうか?」

「いや大丈夫だよ。今日は皆、お客さんなんだし」


 突如、いつもの乱暴な大声がする。


「おいコラッ光男、なんだよ、この派手な演出は!?」

「綺麗だっぴ。うきゃきゃきゃ!」

「さすが明智家だな」


 ここに現れたのは、北琵琶学園中等部、二年梅組の、いわゆる「迷惑三傑」という異名を持つトリオ、織田くん、十吉、松平くんだった。


「ちょっと織田くん、パーティーに招待して貰って、そんな言い方って、ないんじゃないかなあ?」

「お浅井、馬子まごにも衣装ってか」

「オチャコ、綺麗だっぴ!」

「ほう、浅井にしては洒落しゃれた格好だぜ」

「あらま、そうなの。おほほ」


 今日のあたしは、赤いパーティ・ドレスを着ているのだからね。

 お父さんが一足早く、クリスマス・プレゼントとして買ってくれたの。


「お世辞だってぇの! つーか気色悪い笑い方やめろ!」

「オチャコ変顔だよ~ん。きゃきゃきゃ!」

「あははは!」


 織田くんに突っ込まれ、十吉、松平くんに笑われるあたしだった。

 それでもめげずに、こちらも突っ込んでやることにする。


「そ・れ・よ・り、お三方さんかたさん、クリスマス・パーティーに体操服でくるって、それこそどうなのよ!」

「焼肉パーティーだろ、汚れてもいいようにな」

「オチャコも体操服に着替えればいいきゃ」

「そうだぜ浅井、合理的な服装だからな」

「合理的でも、着替えないわよ!」

「おい浅井! お前こそ、そんな格好してたら、焼肉のタレとかついちまって、台無しになるんじゃねえか?」

「平気平気、食べる時には、ちゃんとエプロンつけるんだもん」


 この後も順次、招待されているお客さんたちが、大勢やってきた。

 松組から、荒木くんと武田くん。竹組の滝川くん。

 梅組は、先にきたあたしたち五人の他には、大福くん、玉紗さん、柴田さん、大谷さん、小早川さん、蜂須賀さん、竹中くん、黒田くん、丹羽くん、佐久間くん、そして担任の足利先生までやってきた。あと桜組の伊達さん、菊組の毛利さん。

 千客万来とはまさにこのことね。

 粉雪もチラついてきて、いわゆる「ホワイト・クリスマス」になりそう。

 こうして、賑やかで盛大なクリスマス・イブ・バーベキュー・パーティーが始まるのだった。

 でもね、こんなにも楽しく嬉しいことばかりが続くように思えた、オチャコ十四歳の冬が、つらい季節になっちゃうだなんてこと、いくら名探偵でも、この時のあたしは、露ほども予感できやしなかったの。

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