お楽しみランチ・タイム
北琵琶学園の二学期終業式は、例年、十二月二十四日に執り行われるのだけど、今年は日曜になるから、後倒しになって、次の月曜に割り当てられている。
普通の学校なら前倒しにするだろうけど、そうしないところが、この学園にまつわる七不思議の一つ、といったところかしら。
そういう訳で、本日、二学期ラストの授業日となり、お昼も食べ納めよ。
あたし、トシヨン、明智くん、大福くん、玉紗さん、十吉の六人で机を囲み、一緒にお弁当を開く。
これは、北琵琶学園祭の後に始まった、お楽しみランチ・タイムなの。
ホントは四人がよかったんだけど、大福くんがいるから玉紗さんが加わって、彼女に未練を残している十吉まで割り込んでくるのよ。
あたしは、心根の優しい女の子でありたいと常々願っているのだし、二人の望みを壊す訳にもいかない。それで六人チームのランチ・タイムになったのよ。
大福くんと玉紗さんは、「松平共康、行方不明、大事件!!」について、今朝のショート・ホームルームで聞いたこと以外は、なに一つ知らなかった。
だから、鮮やかな推理で見事に真相を暴き出した、名探偵オチャコが皆を代表して、二人に詳しく解説してあげたわ。
「そっか、そんな事件が昨日起っていたとはなあ。しかし松平のやつも、ちょっとイタズラが過ぎるよな。いつものことだけど」
「ええ、そうですわ。大福様のおっしゃる通り。おほほ」
「まあね。だけど、松平くんだけじゃなく、この十吉も、黒田くんと竹組の滝川くんも、グルになって起こした犯行だったの。反省しなさいよ、お猿の十吉!」
「うきゃ!」
ダメね。反省の「は」の字すら感じ取れないわ。
「ねえ玉紗さん、あなたイタズラが過ぎるお猿さんとか、悪いと思うよね」
「ええ、お猿さんは可愛いから好きなのですけれど、イタズラが過ぎるのは、いけませんわ」
「嫌いでしょ?」
「ええ、嫌いです」
「がぁーん!」
あたしの思惑通りになったわ。これも恋愛戦術の一つよ。
玉紗さんに嫌われるくらいなら、十吉だって少しは反省するでしょうよ。