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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
図書館のミステリー
61/72

大事件!!

 十二月二十二日、金曜の朝。

 いつもと同じくらいの時刻、二年梅組の教室に入ってきた。

 トシヨンは先にきている。あたしの姿を見つけ、こちらへやってくる。


「おはよう、オチャコ」

「うん、おはおはぁ~」

「ねえオチャコ、松平くんが行方不明になったこと、知ってる?」

「え、誰がそんなこと言ってるの!?」

「黒田くんよ。ほらあっちで、男子たち集まってるでしょ」


 トシヨンが指差す方向に、小さな黒山の人だかりができている。

 いるのは、黒田くん、十吉、織田くん、竹中くん、佐久間くん、丹羽くん。

 あたしはその現場へ行ってみることにした。黒田くんと十吉が変なウワサを流しているなら、とっちめてやらなきゃだからね。


「ちょっと、黒田くん、十吉、もしかして昨日の図書館でのこと話してるの?」

「おいコラッ浅井、いきなり入ってきて、俺様に挨拶なしかよ!」

「あー、もう煩いわね。織田くん、おはよ」

「おう、最初から筋を通せ。それよりもなあ浅井、大事件だぞ」

「えっ?」

「共康のやつ、昨日の夕方からずっと連絡がつかないんだ。官平と十吉が、あいつの家まで行ってみたらしいが、誰も出てこないんだってよ」

「え、それってホントなの!?」

「当ったりめえだ! この俺様がウソつく訳ねえだろがっ!」


 まあ確かに、織田くんってイタズラはしても、ウソついて人をダマすようなやり方はしないタイプだわ。たぶん彼は、そんなことするのは、いわゆる「セコいやつ」だと思ってるのでしょうよ。

 突如、知的でクールなボイスがあたしの耳に届く。


「皆おはよう、事件が起きたそうだけど――」

「おいコラッ光男、いきなり入ってきて、俺様に挨拶なしかよ!」

「あ、ごめん。織田くん、おはよう」

「おう、最初から筋を通せ。それよりもなあポンカン、大事件だぞ」

「え?」

「共康のやつ、昨日の夕方からずっと連絡がつかないんだ。官平と十吉が、あいつの家まで行ってみたらしいが、誰も出てこないんだってよ」


 織田くん、あたしに話したのと一字一句同じことを明智くんに伝えている。


「ねえねえ、松平くんの家が留守だったとしても、それは、家族でお出掛けしてただけのこと、じゃあないのかしら?」

「あ、なんだと! 俺様が早とちりでもしてるって言いたいのか?」

「そうよ。連絡がつかないだけで行方不明になるなら、携帯電話の電波状況が悪くなったり、電池切れになったりしてる人が皆、そうなるでしょ」

「あのなあ、俺はそんなこと言ってるんじゃねえ。つーか、お前も昨日、図書館で共康の叫び声聞いて、妙な本見つけたんだろ? 官平たちがそう言ってるぞ」

「うん、それは、そうなんだけど……」

「ちょっと待ってよ、茶子さん。それ本当なのかい?」

「うん、ホントよ」


 あたしの返答を聞いて、普段は笑顔の多い明智くんが、表情を曇らせる。

 まるでメガネのレンズまで、曇ってしまったかのようにね。

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