表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/72

金田一お兄さん

 突如、アルバイトのお兄さんが、あたしをフォローしてくれる。


「おうそうだ! 俺も、その犯人を絶対に捕まえてやる! キミの名は?」

「あたしの名前は浅井茶子だよ。仲のいい友だちからは、《オチャコ》って呼ばれているの」

「そうか、オチャコっていうのか」

「うん。それで、お兄さんは?」

「俺の名は金田一大作きんだいちたいさく。オチャコ、俺と一緒に犯人を見つけようぜ!」

「うんっ!!」


 あたしは、十二年の人生で一番に激しく奮い立ったわ。

 こういうシチュエーションは初めてのことだけど、これこそ、あたしの推理脳すいりのうをフルパワー全開モードで活かす、絶好の好機チャンスなのだもの。

 それで、あたしは問い掛ける。


「防犯用の監視カメラは?」

「おう、それは店の出入り口に一つある」


 金田一お兄さんがそう言った。

 犯人は、それに映っているはず。だから、捕まるのも時間の問題よ。あたしは、既に勝った気でいた。

 突如、お母さんが怖い顔をして言ってくる。


「オチャコ! ちゃんと最後まで食べなきゃダメでしょ!」


 あたしは、まだ食べ掛けているままの「冷やし海老天うどん」を、取りあえず済ませることにした。凄くおいしい逸品なのだから、残そうだなんて気は、サラサラないのだもの。

 そうしている間に、目撃者のお客さん二人と金田一お兄さんが、監視カメラに映っている犯人を特定して、その者が写った姿をプリントアウトしてくれていた。

 あたしはお父さんにお願いすることにした。


「犯人を逮捕するまでは、ここにいさせて。あたしだったら、もう一人で列車に乗ってちゃんと帰れるわ。だからお父さんたちは先に出発してくれていいから」


 ここにお母さんが割り込んでくる。


「そんなのダメよ。三時になったらお婆ちゃんを出るのだから、それまでには、オチャコもさっさと帰り仕度をしておきなさい。分かった?」

「だってお母さん、事件なんだよ!」

「事件も糸瓜へちまもありません!!」

「そんなあ……」


 ここへお父さんが割り込んで、あたしをフォローしてくれる。


「まあそんなにガミガミと言うなよ」

「はっ? 誰が、ガミガミ言うですって!?」

「お前だよ」

「私は……私はただ、オチャコが心配で、だから言っているのよ」

「オチャコだって、いつまでも子供じゃないんだ。それに、可愛い子には旅をさせよ、とかってよく言うだろ?」

「それは、そうですけど……」


 お母さんは勢いをなくしているようだった。

 だから、あたしは立ち上がり、心を込めて訴え掛ける。


「お母さん、心配してくれてありがと。でもね、お父さんが言ってくれたように、あたしはもうすぐ大人になるのだから」

「オチャコ……」

「お母さん……」


 お母さんが、あたしをギュッと抱き締めてくれたの。

 お化粧品の匂いが、「ちょっときついわ」と思うあたしだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ