立派な図書館があるの
先週の金曜、二学期の期末テストが終わった。
今日は月曜。四時間目に返された英語の答案用紙、結果は九十八点だった。
中等部で二度目になる満点ゲットだと思っていた。逃しちゃった、その二点が凄く悔しいわ。ケアレスミスなんだもの。他の科目の点数は重要機密事項ね。
それはそうと、同じクラスに在籍している明智光男くんは、英・数・理・社の四科目と保健体育、技術家庭が百点満点。国語九十八点、音楽九十七点、美術九十六点、平均九十九点という驚異的で、断然トップという大変素晴らし過ぎる結果を出したの。その偉大なる功績を知った、彼の彼女が、自分のことのように嬉しく思ったことは、火を見るより明らかだった。
だって、明智くんの彼女というのは、あたしのことだからね。えへへ。
季節は読書の冬になっているわ。
世間では、読書というのは秋だと言われているけど、あたしは断然、寒い冬がいいと思う。頭が冴えていて、推理小説を読むには打ってつけだもの。
昼間の時間も短くなっていて、夜の風は冷たく、月なんかは凄く綺麗。
今日はあいにくの雨だけどね。だから滅法肌寒いわ。くちゅん!
部活に入っていないあたしは、毎日のように放課後、北琵琶学園付属図書館に通っている。厳選した一冊を借りて帰り、夜長を楽しんでいる。それは翌日か翌々日に返して、また別の本を慎重に選ぶの。だから、たいていハズレはなく、毎晩面白さを感じていられる。
北琵琶学園は初等部から、中等部、高等部まで一貫した私立共学校で、中等部と高等部の間に、立派な図書館があるの。もちろんどの生徒も利用可能だよ。
初等部からは少し遠いのだけど、あっちには図書室があって、そこには当然のことながら、小学生向けの本が充実していた。あたしたち中等部生にとっては、ちょっとだけ懐かしい場所なのよね。
付属図書館に辿り着いた。トシヨンと一緒にくることも多いけど、今日のあの子は保健委員会があるから、別行動なのよ。
建物の中へ入り、中央の受付まで行く。
まずは、一昨日に借りて、昨夜読み終えた『孤島の鬼』を返すためにね。それはちょっとオゾマシイお話だったわ。それを承知で読もうと思ったのだけどね。
次は、心が温まるような物語を借りようかと思ってるの。それでいて、あたしの趣味としては、なにか事件が起こるような作品が望ましいわ。
前から気になっていて、まだ読んでない物語も沢山あるけど、そのうちの一つとして、『はてしない物語』というファンタジー小説があるのよ。実写映画化もされているドイツの作品で、本の世界に入り込むという、それなりの事件が発生するようなストーリーらしいの。
あたしは、『孤島の鬼』の返却を済ませ、それから、『はてしない物語』が置いてありそうな場所へと向かった。
するとそのエリアに、図書館には似つかわしくない男子の姿があった。
しかも、左手に三十センチ定規を握ってウロウロしている。なにかイタズラでもしようと企んでいるのか?