表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
北琵琶学園祭殺人事件
54/72

十四歳オチャコたち神無月の恋

 日曜もよく晴れて、中等部の体育祭が無事に終わった。

 優勝は梅組、つまりあたしたちのチームが勝利の栄冠に輝いたのよ。

 特に、二年生のクラス別対抗リレーは盛り上がったわ。梅組の男子メンバーは、出走順に、十吉、竹中くん、佐久間くん、織田くんで、常にぶっち切りのトップ独走を守り抜き、一位を取れた。女子も、蜂須賀はちすかさん、小早川こばやかわさん、大谷おおたにさん、柴田しばたさんが走って、順調に順位を上げてゆき、一位でゴールできたの。


 閉会式を終え、辺りは暗闇が迫りつつある。

 グラウンドに三か所の焚火たきび、いわゆる「キャンプ・ファイア」の炎が、赤く揺らめき、周囲に熱線を放っている。煙も立っている。これ、風が強いと中止になることもあるのだけど、今年は問題なさそうよ。

 今は旧暦だと「神無月かんなづき」なのよ。神様がいてもいなくても、あたしとトシヨンの恋だって、赤く激情パッション的に燃え上がって、トキメキの熱線ビームを放っているもの。


 フォーク・ダンス、「マイム・マイム」の曲が終わって、次は「オクラホマ・ミキサー」が始まるところ。

 ここで作戦を実行へと移すことにする。

 あたしは男子二人と、あらかじめ約束しておいたのよ。あたしと明智くん、トシヨンと大福くん、それぞれでペアを組んで、フォーク・ダンスの輪に入って欲しいってね。二人は申し出を快く受けてくれたわ。

 それでね、ダンスの輪から少し離れた場所から、ペアで手をつないで走っていくことにしてるの。

 そうすれば、自分たち二人は特別なカップルなのだと、周囲にアピールできるでしょ。もちろん、あたしが考えた恋愛戦術よ。

 心配だったのは、玉紗さんの存在。彼女がいつもの強引さで、大福くんを決して手放さないのじゃないかと、そこそこに懸念していたのよ。

 ところがフタを開けてみると、問題の玉紗さんは、今日の夕方お稽古ごとがあるから後夜祭には不参加なのだって。それで、体育祭の閉会式が終わるとすぐに、お迎え役の執事、松永まつながさんが現れて、彼女は帰っていったわ。

 あたしなら、お稽古ごとなんか放り出してでも、後夜祭に参加するけどね。

 その点で彼女は、さすが良家のお嬢様という感じ。

 兎も角、それであたしの作戦がうまくいきそうだから、結果オーライといったところだわ!


 でも、作戦の目的は、ダンスそのものじゃあないよ。

 同じ輪の別々の場所へ走って、「オクラホマ・ミキサー」に加わり、しばらく踊って、次にあたしと大福くんがペアになったら二人で輪を抜ける。トシヨンと明智くんのペアができた時もそうする。

 二組のペア、四人が元いた場所で合流するの。

 その先になにがあるのか、男子二人には話していない。ふふ。


 あたしと大福くんが先に輪を抜けて待っていると、トシヨンと明智くんが戻ってきた。

 時は今! あたしは明智くんを連れて少し離れる。

 トシヨンは、その場で大福くんと二人だけになる。


「あたし、明智くんのこと好きだよ。あたしとつき合って下さい」

「うん、ありがとう。僕もね、浅井さんのことが好きだ。だから、つき合うという提案は受けたいと思う。今までも級友の一人として、キミとは交流していた訳だけれど、これからは一歩進んで、たまには休みの日なんかに、二人で会うのも、いいかなって思うんだ」

「えっ、それデートってことよね?」

「そうだね。どうかな?」

「うん! 嬉しい!!」


 あたしの告白は大成功!

 明智くんって、誕生日が十二月二十三日だから、実はまだ十三歳なのよね。

 それでも、あたしよりしっかりしてるし、もう大人の一歩前、知的でクールな青少年といっても過言ではない。ちゃんとあたしの気持ちを受け止めてくれたし、十分に紳士だよ。


《あたしの結果はいいとして、大切なのはトシヨンよ!》


 自分の告白成功の喜びに浸っている場合じゃないもの。

 少し離れた場所で、もう一組のペアも告白タイムが進んでいるのだから。


「あ、あのあの、だ、だだ、大福くぅーん!」

「おいおい前田、どうした!?」

「わ、わ、わたし、大福くんが大好き! あっ、あの、だから、こんなわたしだけれど、つき合って下さい!」

「おっ、前田、お前オレのこと、そんな風に思っててくれたのか??」

「うんうん。わ、わたしね、初等部の五年生の春頃から、ずうっと、大福くんのことが好きだったの!」

「おおそうか。それは知らなかったけど、今そう言ってくれて嬉しいよ」

「それじゃ?」

「おう、つき合おうじゃないか。実はオレも近頃な、前田は可愛いし優しいし、奥ゆかしくて女の子らしいと思ってたんだ。だから今は、この世界で一番に好きだと思ってる。前田利代という女の子のことをな。つまり、お前にオンリー、アイ・ラブ・ユーなんてな。ハハハハ!」

「え、えっ! だ、大福くん、やぁーん、わたし恥ずかしいよぉ~」


 こんな風にというか、あたしの誇張も少なからず入ってはいるのだけど、無事におめでたく、トシヨンも告白大成功! これがあたしの用意した、もう一つの誕生日プレゼントだったの。

 兎も角、ダブルでカップル誕生だよ。ホントよかったわ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ