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恋や事件やオチャコの騒がしい物語  作者: 水色十色
北琵琶学園祭殺人事件
50/72

オチャコたち捜査中

 あたしは廊下へと跳び出た。


「おい浅井、着替えてねえじゃねえか!」

「浅井さん、どうかしたの?」

「明智くん、他の男子も聞いて。事件が発生したの。あたしの衣装だけが消えてるのよ。だから今すぐ、緊急捜査本部を設置するわ」


 すると織田くんがまた吠えてくる。


「おいコラッ、リハーサルはどうする気だ! 今日はお前、別にそのままでいいじゃねえか! さっさと体育館へ行こうぜ」

「そうはいかないわよ。あたしたちに割り当てられているリハーサルの時刻まで、あと三十分くらいあるんだもの。それまでに事件を解決して見せるわ。探偵オチャコの推理で鮮やかにね」


 今はまだ、竹組がリハーサルをやっている。

 早めに準備しておいて、竹組がどんな劇をやるのか少しでも視察しようと言ったのは、他でもなく、このあたし自身なのだけどね。


「そうかよ。それなら勝手にやってろ! 俺は先に体育館へ行くぞ」

「ダメよ、あんた逃げる気?」

「なんだと!」


 ここに明智くんが割って入る。


「まあまあ、今は浅井さんの方針に従おうよ」

「ポンカンは黙れ!」

「黙るのは織田くんの方よ。皆いったん教室に入ってよ。ね、お願いだから」

「チッ、仕方ねえなあ。だが長くても十五分以内だぞ!」

「ええ、それでいいわよ」


 こうして劇に出演する全メンバーが、再び二年梅組の教室に戻った。

 突如、松平くんが言う。


「実はさっき、俺たちの衣装箱の中に、こんなものがあったんだ」


 松平くんがズボンのポケットから取り出したのは、白い封筒。

 住所も名前も書いていないけど、裏返すと、驚いたことに、梅の花を模したような、五角形の形の紋所が描かれている。

 それを見たトシヨンが声を出す。


「あ、それは!」

「うん。前田家の紋所、加賀梅鉢かがうめばちだね」


 トシヨンだけでなく、明智くんも知っているみたい。余所のおいえの紋所まで知っているなんて、やっぱりさすがだね。


「中身は見てないぜ。なあ前田、確認したらどうだ?」

「え、わたし!?」

「いいわトシヨン、ここはあたしに任せて」


 松平くんから受け取った封筒には、紙切れが一枚入っていた。

 印刷した文字で短く三行。これは犯行声明だね。


  オチャコの衣装を誘拐した。

  トシヨンに伝えろ。

  これからはもっと真田としゃべれって。


 これを読んだあたしは、誰が犯人なのかすぐに分かった。


「この手紙、十吉でしょ!」

「ううおー、おれっちじゃないぴょん! なんで疑うぴよ!」

「この文面のここよ。《衣装を誘拐・・した》なんて、おバカな表現するのは、あんたくらいしかいないもの」

「おれっち、衣装を誘拐なんてしてないぴょん!」


 ここに松平くんが割り込んでくる。


「なあ浅井、またいつもの早合点じゃないのか?」

「へ、どういうこと!?」

「真犯人は、おバカを装って、わざと《衣装を誘拐(・・)した》なんて書いた可能性を忘れてないかってことさ」

「あっ、そ、そうよ。分かってるわ、あたし。ちょっと十吉に誘導尋問してみただけなの。そうやって、別にいる真犯人の心理を揺さぶったの。どうよ?」

「はははは」

「な、なに笑ってんのよ!」

「いや、別になにも。ははは」


 松平くんの乾いた笑い声が、あたしを腹立たせる。

 ここに明智くんが割り込んでくる。


「松平くん、イタズラが過ぎるよ。キミが企画した劇のリハーサルがこれから始まるというのに」

「お、明智、《イタズラが過ぎる》とは、どういう意味だ?」

「封筒が衣装箱に入っていたというのは真っ赤なウソで、キミがずっと、ズボンのポケットに入れていたんだ。そうでなければ、上質の紙で作られた封筒が、ここまでくたびれたりしないよ」


 ええっ、明智くんってば、封筒の状態まで観察したの!?


「さすが明智だ。イタズラが過ぎたよ」

「ええっ、それじゃあ松平くんが真犯人ってこと!? あんた、あたしの衣装、どこに隠したのよ!」

「ああ、それは俺ではないぜ」

「は!?」

「羽柴くんだよね?」


 明智くんが十吉の前に立った。


「ごめんよオチャコ、おれっちが考えたサプライズだぴょ~ん」

「あんたたちグルだったか! さっき聞いた時はしらばっくれて!」

「しらばっくれてないぴょ。おれっち、衣装を誘拐したんじゃなくて、隠したんだぴょん!」

「どこに隠したのよ!」

「オチャコの机の中だよ~ん!」


 すぐ自分の机の中を調べた。あたしの黒いスーツ、あったわ!

 この十吉めぇ、小癪こしゃくなマネをしおってからに!

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